上 下
46 / 304

「46話」

しおりを挟む
まじかよ……と思っていると、さらに続報が入る。

現場から中継映像が流れ……ハチ公前の広場にでんっと立つ扉の姿が確かにあった。

あるのは扉だけであり、他には何も存在していない。
そして扉は僅かに開いており、本来なら単に後ろの景色が映るはずであるが、そこには映るはずの無い光景が見えている。

間違いなくダンジョンだ。

「わーわー……わー?? え、まじで? まじでここに出したの!?」

あの大きさからして、かなりでかい方のダンジョンだと思う。
全開にしたら車が並んで入れるぐらいはある。

と、なると入った瞬間にゴブリンがこんにちは! するって訳で……あぁ、救急車もきてる。やっぱ中に入った奴が居るんだなこれ。

ネットで探せば現場の詳しい写真やら動画やら上がってそうだ。


てか……これ大丈夫か?
ちょっと不安になったからアマツの所に行ってみるか。



即行でご飯を食べた俺とクロはすぐにアマツの所へと向かう。

休憩所から5階へと続くゲートをくぐり抜け、中にいるであろうアマツへと声を掛けた。



「……アマツさん、いる?」

「やあ、ようこそ。 来ると思っていたおぐっ!?」


椅子に腰掛け足を組み、どや顔でそう言ったアマツの鼻っ面にクロの猫パンチが炸裂した。

俺もぶん殴りたいこのどや顔って思ったけど、クロも同じ気持ちだったらしい。


てか余裕そうだね?
となると、これはアマツが意図して出したって事だよね、やっぱ。



「痛い……」

「あれ、ヤバくないですか? アメリカとイギリスの動画を見た後だと封鎖されかねないですよ。 あと場所が場所なんで後から怒られると思います」

鼻をさすり、涙目になりながら椅子に座り直すアマツに向かい俺はそう話す。


「怒られるのは困るなあ」

いや、絶対怒られるから。
アメリカとイギリスであんだけでかいニュースになった奴が、日本にも現れたんだからね? それも都会のど真ん中も良いところに。

チュートリアル突破されたら説明するんでしょ? しばかれても知らないよ。



「まあ封鎖は無いと思うよ?」

最悪封鎖されて攻略どころの話じゃ無くなるかも知れないし……と俺が心配するが、アマツはパタパタと手を振りそう応える。


「そうなんですか?」

本当かいな。


「何せアメリカもイギリスも、入ってすぐの所にポーション3種共に用意したからね! もちろん日本もだよ?」

「うわあ」

突如現れたダンジョン。
中に入って直ぐにポーションらしき物が……当然持って帰るよね。

そして調べると効果が判明するわけだ。
怪我も病気も治ってさらには若返ると判明したらどうなるだろうか?

まあ、さらに潜るよね。
そしてその内チュートリアルを突破して、アマツが登場しボコられると。


まあ、それは冗談だけど……間違いなくさらに潜るだろう。
権力持っている人って高齢者が多いイメージだし。

えげつないぞアマツっ。

てか俺の時も最初に若返りのポーション置いてくれれば良かったのにさー。


俺がじと目でアマツを見ていると、アマツは大袈裟に肩をすくめると言葉を続ける。

「日本のゲートは確かに不味い位置だったよ。 でもあれ本当にランダムだからね?」

「うっそだー」

「あはははっははっ」

またクロの猫パンチが炸裂した。


まあ、扉については後で移動可能と言うことなので、とりあえずはそのままにするらしい……本当に大丈夫かな。

アマツが大丈夫と言う以上、俺にはどうこうする事も出来ない。
大人しくその日は戻ることにした。




そして扉が現れてから1週間が経った。
扉を囲い込むように突貫工事で建物が建てられ、現在では中がどうなっているのか外から窺うことは出来ない。

周りには野次馬やら、中を見せろとごねるマスコミやらで色々と騒がしい。

そしてそれとは反対に、周辺の住民は一部が都外に避難していて、少し閑散としていたりする。

これはダンジョンからモンスターが溢れ人々を襲う……と言ったデマが広まった為だ。
政府はデマだと言っているが、避難する人が後を絶たないらしい。

「んー……そりゃそうなるよね。 暴動とかにはなってないみたいだけど」

ただまあ暴動になるまでは至っていない。
あちこちに警官が立っているし、巡回もしているのでハチ公前の広場以外は比較的落ち着いている。



「あ、他にも見つかったんか」

それから少しして、アメリカで新たなダンジョンが見つかったとニュースが流れた。
その3日後にはイギリスでも流れた。

アメリカもイギリスも、もしかすると他にもダンジョンがあるのでは?と国民に情報提供を呼び掛けていたのだ。

その内に日本でも同じような流れになるだろう。


「あー……本格的に軍を投入すんのね」

そしてさらに数日後には中にいるモンスターの駆除を名目に、軍を本格的に投入すると報道される。
あ、これアメリカとイギリスのお話ね。

日本はどうだろうね。 自衛隊動かすとなると色々と大変そうだし、しばらく先になりそうな気がする。



と、思ったんだけどね。

「――議会で、自衛隊の投入が決定されました」

1週間もしない内にそんな国内ニュースが流れる。

「思っていたより早いなあ」

何かすごい動きが速い気がする。
この手のってこんなにサクサク決まるものだっけ?
ポーションに釣られたのかな。

「ある程度確保するまでは国民には知らせないのかな?」

その撒き餌のポーションだけど、今のところニュースにはなっていない。
ネットではそう言う話も流れてはいたが、全て根拠のない予想のみである。

まあ、大量に手に入れたとしても直ぐには発表なんて出来ないだろうけど。

何せまだ3カ国以外ではダンジョンが見つかったって報道無いし、この状態でポーションの存在が明らかになったらどうなるか……ろくな事にならんだろうね。

「でも他の国にもこれからダンジョン出来るし、どこかで情報漏れるよね」

発表のタイミング難しそう。
まーその辺は偉い人達が考える事だし、俺が頭を悩ませたってしょうが無いんだけどねー。



さて、そろそろ日課の筋トレでもするかー。

そう思い、椅子から立とうとした所でスマホに着信がきた。

「はい、島津ですー」

「康平か?」

「じいちゃんおひさー」

「おう」

電話はじいちゃんからだった。
内容は以前ばあちゃんに話しておいた件だね、手伝えることあったら言ってねーってやつ。

「おっけー。 金曜の朝ね、前と同じ時間に行くからー」

今回はトウモロコシの苗を定植するのでそのお手伝いだ。
日課の筋トレにより、前よりパワーアップした俺のフィジカルを発揮する時がきたのである。

あ、そろそろお肉も無くなっているだろうし、色々持っていこうかな。

「クロ、ちょっと週末に畑を手伝いに行くね。 お留守番よろしくー」

クロにはお留守番しといて貰おう。
尻尾をぱたんぱたんと振っていたので、良いよーってことだろう。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成
ファンタジー
世界中にランダムで出現するダンジョン 都心のど真ん中で発生したり空き家が変質してダンジョン化したりする。 今までにない鉱石や金属が存在していて、1番低いランクのダンジョンでさえ平均的なサラリーマンの給料以上 レベルを上げればより危険なダンジョンに挑める。 危険な高ランクダンジョンに挑めばそれ相応の見返りが約束されている。 そんな中両親がいない荒鐘真(あらかねしん)は自身初のレベルあげをする事を決意する。 妹の大学まで通えるお金、妹の夢の為に命懸けでダンジョンに挑むが……

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

処理中です...