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生を受けた理由

「105話」

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「……とりあえず戻るか」

まあとりあえず戻ろう。
貰って即捨てるってのもないし、一応持って帰ろうと思う。
タマさんならこれが何か分かるかも……分かるかなあ。

少なくとも俺よりは分かるはず……そんな感じでちょっと不安を覚えつつ街へと戻るのでした。


「もう解体始めてるのね」

街へ戻るとにゃんこ達はもう尻尾の解体を始めていた。
てか間近で見ると尻尾のでかさがやばい。

太いところだと直径15mぐらいあるんじゃない?
それをにゃんこ達がよってたかって切りまくってる光景は……なんかすごい。

「料理の準備もしないとだからニャ」

そうだった、これ食べるんだった。
解体するだけでも一苦労だし、その上料理もしないとだから時間も掛かるってもんだ。

「ところでそれ何ニャ?」

「いやー……あのでっかいのに貰ったんだけど、俺もよく分からない……」

本当にわからん。
見た目はー……なんか白っぽい三角錐気味の丸い何か。
あと結構古そうな見た目してる。

「んー……にゃがっ」

「食べ物じゃないと思うんだよなあ」

いつか見た光景ですね。
タマさん、分からないととりあえず齧るのね……。

「見たら何となく分かるニャ。 これ、削れてすっかり丸くなってるけどたぶんあいつの牙ニャ」

「え? そうなんだ?」

牙ってあのでっかいやつか。
でも、これは俺が抱えられるぐらいの大きさだし、たぶんさきっちょが欠けたやつとか?
……牙なんて貰ってどうしろと。

「無茶苦茶堅いニャー。 防具にするか武器の強化に使うといいニャ」

「おぉ……」

おう、ごめん。なんか有能な素材だったぽい?
よくみたたタマさんが齧っても浅い穴しか開いてないし、下手な金属よりずっと堅いっぽいぞこれ。

ありがたく頂いてしまおう。

「それじゃタマも手伝ってくるニャ。 ウッドはその辺で……変なことせずじっとしてるニャ」

「はひ」

やだ、まだタマさんの目が冷たいわ。
おとなしくまってます……本当ダヨ?



大体3時間ぐらい経っただろうか、だんだんいい匂いが漂ってくるようになってまいりました。
俺? ちゃんと大人しくしてましたよ。 キャットタワーと化しているがな!

一歩たりとも動いてないし、というか指先すら動かしてないのでタマさんも怒れまい!


そんな感じでドヤ顔してたら口にお肉つっこまれました。
もちろん生じゃねーです。

「肉うめぇっ」

「やっぱ美味しいニャ」

すっごい脂乗っててすごいなこのお肉。
脂乗ってるけどさらっとしててしつこくない……うむ、こりゃにゃんこ達に狙われるのも分かると言うものだ。

「ニャ。 ウッドはあれニャ」

「んも?」

なんでしょう。
お肉に夢中でちゃんと聞いてなかった。

「せっかくの歓迎会なんだニャ。 何か挨拶するか一発芸でもするニャ」

「そんな飲み会で後輩に絡む先輩みたいな……えぇ、本当にやるのぉ?」

それ何てパワハラ。
お酒はいっている状態ならともかく素面の状態でやるのはちょっと辛いんですが、それは。

「ニャ」

「えー……そ、それじゃあ」

……まあ、歓迎会開いてくれたわけだし、お礼は言わないといけないと思ってたからね。
ちょうど良いタイミングだと思ってやってしまおう。

「本日は、このような会を設けていただきありがとうございます。 私、タマさんと一緒にダンジョンシーカーをやっているウッドと申します。 この街で醤油とお味噌を作っていると聞いていてもたっても――……」


結果から言うと誰も聞いていなかったデス。
そりゃそうよ! お肉と俺のスピーチどっちを優先するって言ったらそりゃお肉ですよねっ!!
泣いちゃうぞ、大の大人が泣いちゃうぞ。

「いつまでいじけてるニャ。 元気だすニャ」

「別にいじけてなんか……あ、手はそのままでお願いします」

タマさんが俺を慰めるように肉球を押し付けてくる。
まったく、肉球押し付ければ良いとかそんなこと思ってないよね? その通りなんだけどさ!

あ、ちなみにですね。
俺たちはもうタマさんの故郷を離れて森の中を歩いているところです。 走ってないのはお腹きついからですね。

結局あの後ひたすら食って飲んでしかしてなかったもんで……おなかいっぱいなったところで、お礼言ってそろそろお暇しまーすと言ってきたんだけど、たぶん大半のにゃんこは気が付いてなさそう。
お肉まっしぐらって感じデス。


んで、帰るときに忘れずに醤油とお味噌をゲットして、ついでに皆のお土産にってことでここ特産のお酒もゲットしておいた。

あとは帰るだけなんだけどー……。


「…………ねえ、タマさん。 気のせいかな、すっごい地面揺れてない?」

「気のせいじゃないニャ」

なんかさっきからグラッグラ地面が揺れてるんすよ。
あとね、ずしんずしんって重そうな音もしてるの。いやな予感しかしないの!気のせいって言ってよタマさん!


ああー、もう嫌な予感しかしない。
これ絶対あれだよ、あのでっかいのが近くにいるよ。ていうか追ってきてませんかねこれ?

……ちらっとな。

「…………うげっ」

俺たちの後方……たぶん1キロ先ぐらいかな。
あのでっかい奴が明らかにこっちに向かって近づいてきていた。
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