49 / 156
木の中にいる
「48話」
しおりを挟む「ところでタマさん。出すのってメロンでいい?」
「ニャ! もちろ……他にもあるのかニャ??」
もちろんメロンと言いかけてはたと言葉を止めるタマさん。
他にもあると気が付き、キラキラというかギラギラした目で俺を見つめ詰め寄ってくる。
ちょっと鼻息荒いですよ、タマさんてば。
「色々あるよー」
どうどう、と落ち着かせながら色々あることを伝える。
するとタマさんは飛び上がらんばかりに……というか実際飛び上がって喜びだした。
お腹がたぷたぷ揺れてて眼福です。ぐへへ。
「ニャ-! じゃあ別のにするニャ!……やっぱメロンも欲しいニャ!」
「あいあい、メロンもあとで出すよ」
それぐらいのわがまま、聞いて上げますとも。
だからあとでちょっとお腹をぷにっとですね。
「ニャ! それでお願いニャー」
「ほいほい……じゃあどんなのが良い? 甘さとか、大きさとか。言ってくれればそれにあったのにするよー」
候補いっぱいあるんだよねー。
せっかくだからタマさんの好みの果物にしたいし……と言うことで少しずつどんなのが良いか聞いて、それにあった果物を出すことにした。
「ニャ!? ニャー……悩むニャ」
タマさんむっちゃ悩んでますな。
眉間にしわが寄ってますよ。ちょっとくたびれ感が出ててこれはこれで可愛いです。
「大きさは今度は小っちゃいのがいいニャ。 甘い方が……でも酸味も少しあるといいニャー」
「ほいほい……いくつか候補あるけど、色はどうする?」
大きさは小さめで甘みは強いけど酸味もあると。
ふむふむ、いくつか候補があるけど……とりあえず色も候補にしてみた。
変な色言われない限りこれで絞りきれるでしょ。
「ニャー? 赤がいいニャ」
「あいあい。そんじゃーいっくよー」
なるほど赤か。
そういやタマさんがダンジョンに潜って食べてたのも赤い実だったね。 好きな色なのかな? リンゴも赤いしね。
ま、それはそうと出しますかね。
結構有名な果物だけどタマさん気に入ってくれるだろうか。
「ニャ! いっぱいなったニャ!」
「ふふふ……あ、やべやっぱ吸わないと」
作ったのはサクランボだ。
小さくて甘みが強く、酸味もあって赤い。リクエストにぴったり当てはまる。
一応イメージしたのは高級品で有名な佐〇錦のしかも桐箱につまってるやつだ。
まじ高級品である……なので個数は多いけど重さはそれほどでも無かったのに、一回で作りきることが出来なかった。
やはり高級品は消費が激しいね。
「ふいー」
なんとか一回の補給で作りきることが出来た。よかったよかった。
「綺麗ニャ! 美味しそうニャー」
早速サクランボを手にしたりタマさんだけど、すぐには口に入れず見た目を楽しんでいるようだ。
サクランボにしては大きな実に真っ赤に熟れた色合いが何かもうすごい。月並みだけどまじで宝石のようだ。
タマさんがまず見た目を楽しんだのも分かるというものだ。
……あ、そうだ。
「種あるから気を付けてねー」
種ぐらい平気で食べちゃいそうだけど、一応ね?
「ニャ! ニャニャッ!?」
元気よく返事をしてばくりと一口でいくタマさん。
ちょうど良いサイズだね、これ。
んで、反応はというと……目がまん丸で尻尾が狸のようになっているのはメロンと同じであるが……。
「……美味しいニャ。これもすごい美味しいニャー!」
「おーそりゃよかった……んじゃ、俺もっと」
メロンで耐性出来たのか我を失うことはなかったようだ。
といってもすげえ高速で前足を繰り出してるのは変わりないけど……ここから1個とるだけでも命がけですわ。
なので一粒だけ作って食べるのです。
しっかしサクランボにしてはでっかいなーこれ。
色も間近でみるとやばいぐらい綺麗だし……ぱくっとな。
「うっまー!」
口にした瞬間美味しさが弾けました。
メロンといい美味しすぎだろう……俺、甘党じゃなかったのになあ。これなら毎食食べたい。
……ん、種がけっこうでかい。
実が大きいからかな。
そう思いながらそのへんの地面に穴掘って種を埋める俺。
これ、育ったりしないよね?タマさんが言ってたことが本当なら育たないと思うけど……世界樹が嫉妬ってどういうことなの。
「……タマさんところで種は……」
俺は種は捨てたけど……タマさんまだ捨ててないよね?
ひとすら食うだけで口から種だしてないよね。まさか本当に食べちゃった?
「……プッ」
あ、違った貯め込んでただけだ。
タマさんはしたないですよ……って。
「威力やべえ!?」
タマさんがぷって吐き出した種がさ、木に当たったんだけど……表皮がはじけ飛んだ。自分でも何言ってるのか分からないけどまじではじけ飛んだの。
散弾銃並みの威力あるんじゃない、これ。
とまあそんなトラブル?はあったけどその後は特に何事もなく、ただひたすらサクランボを食いまくった。
オーガが果物につられて現れる何てことも無かった。狩りつくしといてよかったね。
またちょっと周囲が枯れちゃったけど……あまりやり過ぎるとギルドに怒られたりしないかな、これ。
……つ、次は加減して吸うことにしよう。
「あー、食った食った……しばらく横になってよっと」
それで食べ終えた俺とタマさんだけど、お腹一杯になったんでまた地面に横になってたんだよね。
それでふと横を見たときに……。
「……あれ?」
茂みに隠れて見えにくかったんだけど、何やら大きな穴が地面にぽっかり空いていることに気が付いたんだ。
0
お気に入りに追加
1,463
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
レベル“0”ですが、最強です。
勇崎シュー
ファンタジー
突如勇者として転移された鹿羽琢真。
ステータスを確認したところ、何と彼のレベルは1ではなく“0”だった!
それ故戦力外と判断され王国から追放されるが……。
琢真はレベルが一切上がらない代わりに、本来習得出来ない強力な“剣召喚”スキルを手に入れていた!
追放されたのなら好き勝手に生きます。
どんな相手も最強の剣でやりたい放題!
広大な世界を旅するソードファンタジー。
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる