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木の中にいる
「3話」
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およそ10分ほど経っただろうか、森の中を駆ける俺の視界に森の切れ目と……轍のある、むき出しの地面がうつる。
走り出してから割とすぐだったね、結構近くまで歩いてたのか……最もずっと歩いていたとしたら数時間は掛かっていたとは思うけど。
「あれは……道だ!」
道を目にした俺はさらに加速し、一気に森を飛び出した。そして道に出ると同時に右半身を踏ん張りブレーキをかける。
結構な勢いで走っていたからだろう、地面からはもくもくと土煙があがり当たりの視界を一時的に奪う。
やがて煙が晴れるとそこには地平線へと続く道が延々と続いていた。
残念ながら町の姿を確認することは出来なかったが、道の続く先には間違いなく町があるはずだ。
ようやく、ようやく森を抜け町へと続く手がかりを得た喜びから俺は自然と叫び、思いっきり拳を空に突き上げていた。
「よっしゃあああぁぁ…………」
10日近くがんばった甲斐があった……それでさ、これで後は道なりに進むだけと思ったんだけどさ。
ふと気になることがあって、俺は自身の体をまじまじと見つめる。
ずっと森の中を着の身着のまま彷徨っていただけあって、服はぼろぼろだし体も結構汚れている。
ていうか右半身まっぱだし、ズボンもそのへんに生えてた草で縛ってなんとかずり落ちないようにしているだけ。そして何より右半身が木だ。
「これ、やばいよね。気味悪がられるならまだしも最悪モンスター扱いで命がやばいんじゃ……」
半身が裸だけならまだ誤魔化せると思う。でもこの木の部分はダメな気がする……。
えぇ……どうしよう。
あれから悩みに悩んだ末に俺はある解決策を思いついた。
いやもうほんと思いついたときは正直俺って天才じゃね? って思ったね。
そしてそのあと無性に泣きたくなった。
まあそれは置いといて。
俺が今何をしているかと言うと、思いついた解決策を実行すべく茂みにじっと身を潜め、道の様子を伺っているのだ。
ああ、ちなみに養分吸いまくってまっちょになったマイボディだけど、時間が経つにつれ徐々にしぼんでいって……いまは左側の倍ぐらいの太さになっている。
ずっとのあのままだったらどうしようかと思っていたけど元に戻りそうな感じで一安心である。
よくよく思い出すと走っているときも少しずつしぼんでいってた気がしなくもない。てことは何かで力を消費するか時間経過で元に戻るって感じなのかな、たぶん。
てか、それよりもですね。
「そもそも人いるのか? この世界……」
策を実行するには人の協力が不可欠である。
隠れてからそろそろ丸1日経つが未だに人は現れない。
轍はあるしそこまで荒れてないことからそれなりに人通りはあるはずなのだが……げせぬ。
ちょっぴり本当に人がいるのかと不安になってきたじゃないか。
「……なかなか来ないなあ。いい加減腹が減ってきたぞ……いや、減らんのだけど」
腹をさすってみるけど、別にお腹がすいている訳じゃない。
茂みに隠れてて動かないでいるため、今日も根っこが元気に養分を吸っている。
ただ、ずっと食べ物を口にしていないので気持ち的に空腹というやつだ。
そんな風に時間を潰していたその時だ。
俺からみて左手のほう、遠方ではあるがゆらゆらと揺れる影が見えた。
よくよく目を凝らして見ればそれは人影とおそらく馬車であろうことが確認できた。待望の人がついに姿を現したのだ。
「!!?? ひ、人だっ!」
10日振り、そしてこの世界では初めてとなる人との出会いに俺のテンションは爆上がりだ。
心臓はばっくんばっくんと煩いまでに鳴り、俺は緊張からか茂みから顔をだしては引っ込めと意味不明な行動を繰り返していた。
いや、ほんと何してんの俺……。
「間違いない人だ! お、落ち着け俺! 焦っちゃいけない、びぃーくぅーる」
落ち着けと自分に言い聞かせ深呼吸をする。
すると徐々にではあるが心臓の高鳴りは収まり、上がりまくっていたテンションもやや落ち着いてきた。
しかしいざその時がくるとなかなか怖い物がある。
一発でうまくいけば良いけど、いかなかった場合が怖い。
街道に変な奴がでると噂にでもなったら……この世界の住人がそこまで血の気多くないことを祈る。
……大分冷静になったところで改めて策の流れをお復習いしよう。
「……よし、俺は冷静だ。 確認しよう……ばれないように後を追う。 程よいタイミングでモンスターに襲われる馬車、ピンチになったところで颯爽と俺登場。 悪は滅びる。 そして感謝された俺はお礼がしたいと町へと案内され……完璧だ。 完璧すぎて不安しかねえ」
アホじゃねえのとか言わない。
何せ異世界に転生しているんだ、そんなテンプレ見たいなことが起きたっていいじゃないか。てかそれぐらい許されろ。
「しかしどんな敵が出るんだろうな? あんま強いのだとさすがに……」
自分で策考えておいてあれだけど、結構だめだめな策だよねこれ。
人影はもう近くまで来ていてどんな格好をしているかも確認出来るようになっていた。
なんていうか思っていたよりもずっと装備がしっかりしてそう……鎧もごついし、武器も見た目凶悪だし、その装備を身にまとっている本人もやたら筋肉質でいかついおっさんばか……あ、女性もいる。たぶん杖持ってるし軽装……つっても鎧っぽいのは着てるけど、たぶん魔法使いってやつなんだろうな。
弓持ってるのも女性……かな、たぶん。胸が薄くて線の細い男といまいち区別がつかない。
男の娘じゃないよね? よね?
走り出してから割とすぐだったね、結構近くまで歩いてたのか……最もずっと歩いていたとしたら数時間は掛かっていたとは思うけど。
「あれは……道だ!」
道を目にした俺はさらに加速し、一気に森を飛び出した。そして道に出ると同時に右半身を踏ん張りブレーキをかける。
結構な勢いで走っていたからだろう、地面からはもくもくと土煙があがり当たりの視界を一時的に奪う。
やがて煙が晴れるとそこには地平線へと続く道が延々と続いていた。
残念ながら町の姿を確認することは出来なかったが、道の続く先には間違いなく町があるはずだ。
ようやく、ようやく森を抜け町へと続く手がかりを得た喜びから俺は自然と叫び、思いっきり拳を空に突き上げていた。
「よっしゃあああぁぁ…………」
10日近くがんばった甲斐があった……それでさ、これで後は道なりに進むだけと思ったんだけどさ。
ふと気になることがあって、俺は自身の体をまじまじと見つめる。
ずっと森の中を着の身着のまま彷徨っていただけあって、服はぼろぼろだし体も結構汚れている。
ていうか右半身まっぱだし、ズボンもそのへんに生えてた草で縛ってなんとかずり落ちないようにしているだけ。そして何より右半身が木だ。
「これ、やばいよね。気味悪がられるならまだしも最悪モンスター扱いで命がやばいんじゃ……」
半身が裸だけならまだ誤魔化せると思う。でもこの木の部分はダメな気がする……。
えぇ……どうしよう。
あれから悩みに悩んだ末に俺はある解決策を思いついた。
いやもうほんと思いついたときは正直俺って天才じゃね? って思ったね。
そしてそのあと無性に泣きたくなった。
まあそれは置いといて。
俺が今何をしているかと言うと、思いついた解決策を実行すべく茂みにじっと身を潜め、道の様子を伺っているのだ。
ああ、ちなみに養分吸いまくってまっちょになったマイボディだけど、時間が経つにつれ徐々にしぼんでいって……いまは左側の倍ぐらいの太さになっている。
ずっとのあのままだったらどうしようかと思っていたけど元に戻りそうな感じで一安心である。
よくよく思い出すと走っているときも少しずつしぼんでいってた気がしなくもない。てことは何かで力を消費するか時間経過で元に戻るって感じなのかな、たぶん。
てか、それよりもですね。
「そもそも人いるのか? この世界……」
策を実行するには人の協力が不可欠である。
隠れてからそろそろ丸1日経つが未だに人は現れない。
轍はあるしそこまで荒れてないことからそれなりに人通りはあるはずなのだが……げせぬ。
ちょっぴり本当に人がいるのかと不安になってきたじゃないか。
「……なかなか来ないなあ。いい加減腹が減ってきたぞ……いや、減らんのだけど」
腹をさすってみるけど、別にお腹がすいている訳じゃない。
茂みに隠れてて動かないでいるため、今日も根っこが元気に養分を吸っている。
ただ、ずっと食べ物を口にしていないので気持ち的に空腹というやつだ。
そんな風に時間を潰していたその時だ。
俺からみて左手のほう、遠方ではあるがゆらゆらと揺れる影が見えた。
よくよく目を凝らして見ればそれは人影とおそらく馬車であろうことが確認できた。待望の人がついに姿を現したのだ。
「!!?? ひ、人だっ!」
10日振り、そしてこの世界では初めてとなる人との出会いに俺のテンションは爆上がりだ。
心臓はばっくんばっくんと煩いまでに鳴り、俺は緊張からか茂みから顔をだしては引っ込めと意味不明な行動を繰り返していた。
いや、ほんと何してんの俺……。
「間違いない人だ! お、落ち着け俺! 焦っちゃいけない、びぃーくぅーる」
落ち着けと自分に言い聞かせ深呼吸をする。
すると徐々にではあるが心臓の高鳴りは収まり、上がりまくっていたテンションもやや落ち着いてきた。
しかしいざその時がくるとなかなか怖い物がある。
一発でうまくいけば良いけど、いかなかった場合が怖い。
街道に変な奴がでると噂にでもなったら……この世界の住人がそこまで血の気多くないことを祈る。
……大分冷静になったところで改めて策の流れをお復習いしよう。
「……よし、俺は冷静だ。 確認しよう……ばれないように後を追う。 程よいタイミングでモンスターに襲われる馬車、ピンチになったところで颯爽と俺登場。 悪は滅びる。 そして感謝された俺はお礼がしたいと町へと案内され……完璧だ。 完璧すぎて不安しかねえ」
アホじゃねえのとか言わない。
何せ異世界に転生しているんだ、そんなテンプレ見たいなことが起きたっていいじゃないか。てかそれぐらい許されろ。
「しかしどんな敵が出るんだろうな? あんま強いのだとさすがに……」
自分で策考えておいてあれだけど、結構だめだめな策だよねこれ。
人影はもう近くまで来ていてどんな格好をしているかも確認出来るようになっていた。
なんていうか思っていたよりもずっと装備がしっかりしてそう……鎧もごついし、武器も見た目凶悪だし、その装備を身にまとっている本人もやたら筋肉質でいかついおっさんばか……あ、女性もいる。たぶん杖持ってるし軽装……つっても鎧っぽいのは着てるけど、たぶん魔法使いってやつなんだろうな。
弓持ってるのも女性……かな、たぶん。胸が薄くて線の細い男といまいち区別がつかない。
男の娘じゃないよね? よね?
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