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きれいなおねえさんは好きですか(4)

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 結局、初日に『ゲスト』としてカウントしてもよさそうなのは源五郎老人一人であった。ローテーションも一巡して、最後の『中の人』は圭吾で本日は終了、頃の時間。

「通常より開場時間が長いんだねえ……」

 アテンドの譲二がぼやくと、

「仕事帰りのきれいなおねえさんとかこないもんかねえ……」

 扉の裏側で『中の人』用のインカムをつけている圭吾に対して登弥が言った。

「いや、来た、お姉さん」

 譲二が言うやいなや、

「よし、圭吾、交代、俺がやる」

 奪い取るようにして登弥が圭吾のインカムを装着した。

「おー、けっこうきれいな人じゃん」

「バカ、登弥、声、入るから」

 圭吾と登弥がごちゃごちゃ言っているのをよそに、譲二の言うところの『きれいなおねえさん』がどうやら近づいてきたらしい。

「はじめまして! 私はステノ! あなたのお名前は?」

 登弥がよどみない様子で、先んじて話しかけてしまった。

 圭吾は、あーあ、と、思いながら、しかしこうなったらもうノイズになるので黙るしか無いな、と、黙ってなりゆきを見守る事にした。

 一方、扉の外である所の譲二の方も自棄になって対応を始めたようだ。

 譲二は、ハラハラしながら『駒田紅緒』と名乗った女性と登弥扮するおしゃべりロボットのやりとりを見守っていた。

 話を聞くに、どうも紅緒嬢は理系らしい。子供の頃星が好きだった話などを聞くに、『おしゃべりロボット』としてのステノの受け答えに疑問をもつのでは無いか、と。

 しかし、譲二の不安をよそに、紅緒嬢(といっても年齢的には自分たちより上だろうな、とは思っているが)は、楽しそうに会話を続けている。

 思えば、圭吾であったらここまでよどみなく会話できたろうか、扉の内側に登弥が居てくれて良かった。と、思いながら、譲二ははらはらしながら対応を続けた。

「じゃあ、また来ようかな」

 紅緒嬢が言うと、

「うれしい、待ってるよ」

 と、ステノが答える。

 お前……、最初とキャラ変わってるぞ、素の登弥が透けて見えるじゃないか、と、譲二はひとりごちそうになったがこらえた。

 紅緒嬢が元気を取り戻したように軽い足取りで去っていくのを見送る頃に、館内には『蛍の光』が響き、思っていたよりは大きな波はたたずに、譲二達三人のアルバイト初日は終わった。

 片付けを終えて、寮に戻ろうと少年少女科学館を出ようとすると、どこか他の施設に立ち寄っていたのか紅緒嬢の姿があった。

「あれ……」

 登弥が、じっと紅緒嬢の方を見ていたが、譲二はそれについて特に何か言ったりはしなかった。
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