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千錦寮の秘密?
事件発生!? 緊急寮生大会(1)
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夕方、志信と和美は寮に戻り、夕食に行く為、食堂へ向かった。
志信はすっかり曲を覚え、元気よく歌い、一方、和美の方は、疑わしい目つきで学ラン姿の三人をじっと見ていた。
夕食、の、後。
佳織はバイトの為、まだ帰宅しておらず、早希は風呂へ行っていて、部屋には和美と志信だけだった。
「志信ちゃん、あのさ……」
何かを思いついたように、和美が言おうとした、その時。
ピンポンパンポーンと、放送が入った。
『緊急連絡です、寮内に不審者が侵入したという報告がありました、寮内にいる人達は、各部屋に待機して下さい、繰り返します、寮内に残っている人達は、部屋から出ないようにして下さい』
「不審者……って……」
志信は、ぎょっとした和美に言った。
和美も、急な放送に不安を感じているようで、言いかけた言葉を飲み込んだようだ。パタパタと走ってくるスリッパの音がして、あわてて早希が風呂から戻ってきた。かなりあわてていたようで、髪からしずくがしたたっている。
「この部屋は、大丈夫?」
心配そうに早希が言うと、志信と和美は、部屋に異常が無い事を告げた。
安心して、早希がバスタオルで髪を拭き始めると、ややあってノックの音がした。
現れたのは滝宮晶子だった。
「ショーコ先輩、不審者って……」
「裏口の鍵を開けっぱなしにした子がいたみたい、一階の2号室に侵入したんだけど……」
「ああ、2号室……熊谷先輩は……」
何かを察したように早希が言った。
「うん、部屋にいた。……でも、逃がしたって。一刻の皆にも声かけて追いかけたけど、逃げられた、一人だったっぽいけど、他に侵入者がいないか、今見回ってるとこ」
晶子はそう言って、部屋を見回した。
「私達、夕食の後ずっと部屋にいました、誰もここには来てません」
志信が答えると、晶子は安心したように次の部屋へ向かった。
「怖い思いしたね、大丈夫?」
早希が志信と和美に心配そうに言った。
「はい、大丈夫です、放送にはビックリしましたけど」
和美が答えて、志信に視線を送ると、
「あの、熊谷先輩っていうのは」
「女子柔道部の人、っても、マネージャーだけどね、前は選手だったみたいだけど、今は故障して、選手では無いみたい、でも、まあ、鉄火場、みたいのには慣れてるの、かな」
「怖い思いをしていないといいんですけど」
心配そうに和美が言うと、
「優しいね、和美ちゃん」
志信も、和美は優しい、と、思った。
志信は、元女子柔道選手なら、たとえ不審者相手でもひるまず怖い思いはしなかったのではと勝手に大丈夫だろうな、と、思ったけれど、和美はそんな風には思い込まなかったという事だ。
志信は、なんだか強そうな人だし、多分大丈夫だったんだろうな、と、思い込んだ自分を少しだけ恥ずかしいと思った。
「……けど、鍵が開けっ放しだったってのは、ちょっとまずいね」
早希が言った。
女子寮生がそれぞれ持っているという鍵。
門限以降、各自で施錠しなくてはならないそれを、開けたままにするというのは、こんな風に事件を起こす可能性があるのだと、志信は少しだけ怖くなった。
志信はすっかり曲を覚え、元気よく歌い、一方、和美の方は、疑わしい目つきで学ラン姿の三人をじっと見ていた。
夕食、の、後。
佳織はバイトの為、まだ帰宅しておらず、早希は風呂へ行っていて、部屋には和美と志信だけだった。
「志信ちゃん、あのさ……」
何かを思いついたように、和美が言おうとした、その時。
ピンポンパンポーンと、放送が入った。
『緊急連絡です、寮内に不審者が侵入したという報告がありました、寮内にいる人達は、各部屋に待機して下さい、繰り返します、寮内に残っている人達は、部屋から出ないようにして下さい』
「不審者……って……」
志信は、ぎょっとした和美に言った。
和美も、急な放送に不安を感じているようで、言いかけた言葉を飲み込んだようだ。パタパタと走ってくるスリッパの音がして、あわてて早希が風呂から戻ってきた。かなりあわてていたようで、髪からしずくがしたたっている。
「この部屋は、大丈夫?」
心配そうに早希が言うと、志信と和美は、部屋に異常が無い事を告げた。
安心して、早希がバスタオルで髪を拭き始めると、ややあってノックの音がした。
現れたのは滝宮晶子だった。
「ショーコ先輩、不審者って……」
「裏口の鍵を開けっぱなしにした子がいたみたい、一階の2号室に侵入したんだけど……」
「ああ、2号室……熊谷先輩は……」
何かを察したように早希が言った。
「うん、部屋にいた。……でも、逃がしたって。一刻の皆にも声かけて追いかけたけど、逃げられた、一人だったっぽいけど、他に侵入者がいないか、今見回ってるとこ」
晶子はそう言って、部屋を見回した。
「私達、夕食の後ずっと部屋にいました、誰もここには来てません」
志信が答えると、晶子は安心したように次の部屋へ向かった。
「怖い思いしたね、大丈夫?」
早希が志信と和美に心配そうに言った。
「はい、大丈夫です、放送にはビックリしましたけど」
和美が答えて、志信に視線を送ると、
「あの、熊谷先輩っていうのは」
「女子柔道部の人、っても、マネージャーだけどね、前は選手だったみたいだけど、今は故障して、選手では無いみたい、でも、まあ、鉄火場、みたいのには慣れてるの、かな」
「怖い思いをしていないといいんですけど」
心配そうに和美が言うと、
「優しいね、和美ちゃん」
志信も、和美は優しい、と、思った。
志信は、元女子柔道選手なら、たとえ不審者相手でもひるまず怖い思いはしなかったのではと勝手に大丈夫だろうな、と、思ったけれど、和美はそんな風には思い込まなかったという事だ。
志信は、なんだか強そうな人だし、多分大丈夫だったんだろうな、と、思い込んだ自分を少しだけ恥ずかしいと思った。
「……けど、鍵が開けっ放しだったってのは、ちょっとまずいね」
早希が言った。
女子寮生がそれぞれ持っているという鍵。
門限以降、各自で施錠しなくてはならないそれを、開けたままにするというのは、こんな風に事件を起こす可能性があるのだと、志信は少しだけ怖くなった。
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