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千錦寮の秘密?
ジョージが普通になっていた
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明日の入学式に備えて、生活基盤を整えた方がいいという早希の言葉に従って、オリエンテーションで配られた近隣マップなどを元に、志信と和美は近隣を散歩する事にした。
昼食を済ませてから出ようと言う二人に、早希が一つだけ注意をくれた。
「多分、そんなに遅くなる事は無いと思うけど、夜9時に玄関が施錠されるから」
男子寮は基本施錠されないらしいのだが、女子寮の玄関は施錠される。その為、女子寮生は全員玄関の鍵を各自持つことになっているという。
「新入生は鍵のコピーが間に合わないから、二週間くらいは一応門限9時って感じになるから、注意してね」
もちろん、門限、などと言っても、罰則等があるわけで無く、中にいる誰かに電話をして開けてもらえばいいだけなのだけれど、閉め出されてビックリしないようにという事だった。
二人は、夕食は寮の食堂でとるつもりだったので、門限前には確実に戻りますよと早希に告げ た。
本屋やスーパー、ディスカウントショップなどを巡りつつ、コーヒーショップで休憩していると、見覚えのある集団があった。
よく見ると、集団の中の一人はジョージだった。例の黒ずくめの服では無くて、ごく普通のダンガリーシャツにチノパンという服装だった。
「あ、ジョージだ」
と、志信が声をかけると、恥ずかしそうにしながらジョージがやってきた。
「入寮手続きの時一緒だった人だよね、えーっと、卯野さん? だっけ?」
「よく覚えてたね」
そう言いながら、志信があいている席を勧めると、ジョージ達一団がそのまま横の四人がけの席に座った。
「女子は卯野さんだけだったしね、……えーっと、そちらは?」
そう言いながら、ジョージは和美の方を見た。
「志信ちゃんと同室の猪俣です」
「俺、辰巳です」
「あれ? ジョージじゃなくていいの?」
志信が尋ねると、ジョージは恥ずかしそうに頭をかいた。
「何か、自分でも無理してんな、と、思って、やめたんだ、キャラ作るの」
そう言って笑うジョージは、いたって普通で、単なる好青年だった。
志信は、ちょっとキャラを作っているくらいのほうが面白かったなと思いながらも、つっこみ不在の居心地の悪さから解放されて、気楽ではあった。
ジョージの連れも、皆一年生だったようで、皆、特に和美に対して強い関心を示され、ひとしきり自己紹介をしあった。
「そういえば、女子寮の方、ちょっとすごいよね」
「ああ、あれ、歌とか」
話が、女子寮の変わったルールに至った時、ジョージが他の皆をとがめるように見た。
ジョージの視線を感じたのか、他の男性陣も、しまった、という顔つきで、あわてて話題を変えた。
「ん? 何かまずかった?」
志信がジョージに尋ねると、ジョージは困ったような顔をして、言った。
「あー、女子寮の事は話しちゃいけないって先輩に言われててさ」
「なんで?」
「ごめん、今は言えない」
「今は、って事は、時期が来れば話せる内容って事?」
「とにかくゴメン、また、今度」
ジョージ達は、あわてて話を切り上げて、そそくさと立ち去っていった。
「……何だったんだろうね、あれ」
残された志信と和美は、氷がとけて、ぬるくなったアイスカフェオレをすするようにして飲み干した。
昼食を済ませてから出ようと言う二人に、早希が一つだけ注意をくれた。
「多分、そんなに遅くなる事は無いと思うけど、夜9時に玄関が施錠されるから」
男子寮は基本施錠されないらしいのだが、女子寮の玄関は施錠される。その為、女子寮生は全員玄関の鍵を各自持つことになっているという。
「新入生は鍵のコピーが間に合わないから、二週間くらいは一応門限9時って感じになるから、注意してね」
もちろん、門限、などと言っても、罰則等があるわけで無く、中にいる誰かに電話をして開けてもらえばいいだけなのだけれど、閉め出されてビックリしないようにという事だった。
二人は、夕食は寮の食堂でとるつもりだったので、門限前には確実に戻りますよと早希に告げ た。
本屋やスーパー、ディスカウントショップなどを巡りつつ、コーヒーショップで休憩していると、見覚えのある集団があった。
よく見ると、集団の中の一人はジョージだった。例の黒ずくめの服では無くて、ごく普通のダンガリーシャツにチノパンという服装だった。
「あ、ジョージだ」
と、志信が声をかけると、恥ずかしそうにしながらジョージがやってきた。
「入寮手続きの時一緒だった人だよね、えーっと、卯野さん? だっけ?」
「よく覚えてたね」
そう言いながら、志信があいている席を勧めると、ジョージ達一団がそのまま横の四人がけの席に座った。
「女子は卯野さんだけだったしね、……えーっと、そちらは?」
そう言いながら、ジョージは和美の方を見た。
「志信ちゃんと同室の猪俣です」
「俺、辰巳です」
「あれ? ジョージじゃなくていいの?」
志信が尋ねると、ジョージは恥ずかしそうに頭をかいた。
「何か、自分でも無理してんな、と、思って、やめたんだ、キャラ作るの」
そう言って笑うジョージは、いたって普通で、単なる好青年だった。
志信は、ちょっとキャラを作っているくらいのほうが面白かったなと思いながらも、つっこみ不在の居心地の悪さから解放されて、気楽ではあった。
ジョージの連れも、皆一年生だったようで、皆、特に和美に対して強い関心を示され、ひとしきり自己紹介をしあった。
「そういえば、女子寮の方、ちょっとすごいよね」
「ああ、あれ、歌とか」
話が、女子寮の変わったルールに至った時、ジョージが他の皆をとがめるように見た。
ジョージの視線を感じたのか、他の男性陣も、しまった、という顔つきで、あわてて話題を変えた。
「ん? 何かまずかった?」
志信がジョージに尋ねると、ジョージは困ったような顔をして、言った。
「あー、女子寮の事は話しちゃいけないって先輩に言われててさ」
「なんで?」
「ごめん、今は言えない」
「今は、って事は、時期が来れば話せる内容って事?」
「とにかくゴメン、また、今度」
ジョージ達は、あわてて話を切り上げて、そそくさと立ち去っていった。
「……何だったんだろうね、あれ」
残された志信と和美は、氷がとけて、ぬるくなったアイスカフェオレをすするようにして飲み干した。
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