49 / 51
一年生交流会
始まらずに終わった恋(1)
しおりを挟む
おそらく、いま、慎吾に聞けば、相手の名前もわかるんだろう。しかし、それを聞く心の準備は、志信にはまだ無かった。
聞きたくない、知りたくないと思う話ほど、すぐに耳に入ってくるものなのかもしれない。部屋に戻ると、和美と志信が、それぞれ一年生交流会の副委員長と会計になった事を聞いた佳織が、意図せずして前年の副委員長の名前を志信へ告げた。
一年生交流会の委員長副委員長は付き合うという、一刻寮で言い伝えられているジンクス、委員長は羊谷悠嘉、そして、副委員長は。
寅田早希。
悠嘉の恋人は、志信のごくごく身近に居た。
志信は、知ってしまった事実が、胸の奥に重く、わだかまる思いを感じていた。
和美が、悠嘉に思いを寄せているかもしれない、そんな風に思っていたりもした。
しかし、それは、あくまで志信が、『そうだったらいやだな』という妄想の一つにすぎない。
だが、今されている話はそうでは無い。
もしかしたら、ジョージが持っている情報は古いのかもしれない。
けれど、伝えられたジンクスは、実際に付き合っている二人がいてこそ説得力を持つ。
少なくとも、ジョージが知る範囲で、悠嘉と、早希は付き合っているというのは事実として認知されている事なのだ。
もちろん、今、ジンクスの話をして、佳織にそういった事実がある事を確かめる事はできる。しかし、その話をした時に、志信は取り乱さずにいられる自信が無かった。
自分でも、思っていた以上に、志信は悠嘉の事を思っていたのだろうか。
いや、これは、推しのアイドルに恋人がいた事実を知った状況に近かった。
誰かとこの気持ちを共有したいと思っても、志信は、誰にもその気持ちを言っては居ない。確かに、和美達に、あの、入寮時のドッキリに現れた悠嘉の姿がりりしく、格好良かったといった事は言ったが、その話はそこで終わっている。
和美と佳織は、昨年の一年生交流会の時の話をしているが、志信の耳には届いていなかった。
ダメ押しに、早希がバイトから戻ってくると、いたたまれなくなった志信は、風呂に行くと言って、部屋を出て行った。
聞きたくない、知りたくないと思う話ほど、すぐに耳に入ってくるものなのかもしれない。部屋に戻ると、和美と志信が、それぞれ一年生交流会の副委員長と会計になった事を聞いた佳織が、意図せずして前年の副委員長の名前を志信へ告げた。
一年生交流会の委員長副委員長は付き合うという、一刻寮で言い伝えられているジンクス、委員長は羊谷悠嘉、そして、副委員長は。
寅田早希。
悠嘉の恋人は、志信のごくごく身近に居た。
志信は、知ってしまった事実が、胸の奥に重く、わだかまる思いを感じていた。
和美が、悠嘉に思いを寄せているかもしれない、そんな風に思っていたりもした。
しかし、それは、あくまで志信が、『そうだったらいやだな』という妄想の一つにすぎない。
だが、今されている話はそうでは無い。
もしかしたら、ジョージが持っている情報は古いのかもしれない。
けれど、伝えられたジンクスは、実際に付き合っている二人がいてこそ説得力を持つ。
少なくとも、ジョージが知る範囲で、悠嘉と、早希は付き合っているというのは事実として認知されている事なのだ。
もちろん、今、ジンクスの話をして、佳織にそういった事実がある事を確かめる事はできる。しかし、その話をした時に、志信は取り乱さずにいられる自信が無かった。
自分でも、思っていた以上に、志信は悠嘉の事を思っていたのだろうか。
いや、これは、推しのアイドルに恋人がいた事実を知った状況に近かった。
誰かとこの気持ちを共有したいと思っても、志信は、誰にもその気持ちを言っては居ない。確かに、和美達に、あの、入寮時のドッキリに現れた悠嘉の姿がりりしく、格好良かったといった事は言ったが、その話はそこで終わっている。
和美と佳織は、昨年の一年生交流会の時の話をしているが、志信の耳には届いていなかった。
ダメ押しに、早希がバイトから戻ってくると、いたたまれなくなった志信は、風呂に行くと言って、部屋を出て行った。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
みいちゃんといっしょ。
新道 梨果子
ライト文芸
お父さんとお母さんが離婚して半年。
お父さんが新しい恋人を家に連れて帰ってきた。
みいちゃんと呼んでね、というその派手な女の人は、あからさまにホステスだった。
そうして私、沙希と、みいちゃんとの生活が始まった。
――ねえ、お父さんがいなくなっても、みいちゃんと私は家族なの?
※ 「小説家になろう」(検索除外中)、「ノベマ!」にも掲載しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる