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第二幕 江戸の生活をシよう!

第二十一話 エロ絵師、茶屋で働くってよ。

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 俺の名前は藤山スグル。令和でSNSにエロいイラストをあげてはエロ絵師を目指していたフリーターの十八歳。あるとき、バイト帰りに見た赤い月によって江戸時代へタイムスリップをしてしまった。そこから超絶可愛い千代姫と名乗る女の子と出会って、かくかくしこしこ。打ち首回避をしたものの、生き延びた代償はそれなりに大きい。殿様がぬけ……満足できるような卑猥な春画を描くことになったのである。

 そこからなんやかんや過ごしているうちに、江戸時代に飛ばされて一週間が経過。俺は令和時代に身につけた絵心で毎日しこまた春画を描いては殿様からあっぱれと認められ、江戸でも有名な春画絵師になっていた――のではなく、

「スグル、この団子を向こうの家まで持っていっておくれ」

「はい今すぐ~」

「スグル、今度はそっちの団子を運んだら次は注文を聞いとくれ」

「はい喜んで~」

「慌てて人様にぶつかるんじゃないよ」

「はいかしこま~」

 現実は江戸の町にあるお団子が有名な茶屋で朝から晩まで止める暇なく働いていた。この忙しさは忘年会シーズンの居酒屋バイト掛け持ち編を思い出す。体力勝負のバイトをやっていてよかった。

 なぜ春画を描いていないのかと聞かれたら、そりゃ俺だって描きたいが、殿様が本当に未来から来たならば最初にすべきことは江戸の生活に慣れることだとミツを通じて伝えられた。

 毎日エロイラストを描いていた習慣を、一週間まともに描かなければ禁断症状がすごいのなんの。描きたい欲がムラムラと積み重なって、それはいつしか苦痛となる。ので、真夜中にこっそりと家の前の地面に木の枝で軽くエロラフスケッチを描くことにより微々たるとはいえ、これで少しでもムラムラを発散させようとしていた。まっ、夜が明けれると毎回そのエロスケッチたちは草履でぐちゃぐちゃにご丁寧にもみ消されている。足のサイズ感からして、どう考えてもミツ。暇かよあいつ。

 それとこれは愚痴にもなるが、城から支給されたの長屋にある家とちゃっちい草履と絶妙ながんもどき色の一張羅のみ。絵を描く道具なんて当たってもいない。俺に春画を描かす気あるのか? とも疑問に思った。千代姫も会いに行くって言ってたが、実際は一度も来ていない。立場上難しいのか、それとも俺のことは忘れたのか……どっちにしろ、辛い。

「はぁ~、忙しいったらありゃしないよ!」

 さっきから接客指示やら配達指示を出して腰を叩いているこの人は、ここの茶屋の看板娘である小毬さんという女性。黄色の着物にお団子リスペクトなのか頭上には特大サイズのお団子ヘア。一つか二つほど年齢が上らしいが、面倒見は非情によく、俺がここで働くと聞いたときも嫌な顔もしないで受け入れてくれた。もう一人、店の奥には小毬さんの親父さんがお団子職人として素早く生地を練っては焼いて、海苔を撒いたり手作業なのがすごい。寡黙で声を聴いたことがないけど、悪い人ではなさそうだ。こちらもお団子リスペクトなのか頭皮は白玉みたくツルツル。

店員がわずか二名しかない人気店。お客は途切れなくやってくる。売買やお金の仕組みなどは教わりつつ、ぎこちなくも仕事をこなしていく。そんな俺に小毬さんと親父さんは責めることなく教えてくれることに感謝という言葉しかない。城の役人からなんて言われているか知らないが、要注意人物みたく言われてもおかしくはない。聞いてほしいわけではないが、もしかしたら気を遣われていたら逆に申し訳なくなる。
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