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第一幕 江戸にイこう!
第十九話 判決のとき
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何度見ても慣れない淡々とした語りと、江戸時代のヤーさんっぽい見た目に気圧されてしまう。わずかに感じた怯えは次第に拡大していき、頭からつま先まで全身がガクブル。次に発せられる内容で、生きるか死ぬか、最終決定する。はけ口のない、耐え難い陰鬱な圧迫感。胃がいくつあっても足りない。
俺と千代姫以外の人間は即打ち首を望む声が大半。だからこそ、殿様もそちら側の意見に近いと考えている。バッコンバッコンと激しく鳴る心臓を抱えてるのですら息苦しい。もし今、胃袋に少しでも食べ物があれば緊張のしすぎで確実に戻していた。このときばかりは昨晩コンビニで暴飲暴食をしない自分にナイス。
殿様は思い悩むように親指と人差し指で顎を撫で、手を合わせて懇願する千代姫と遠くの景色を打ち見往復。
そして、とうとう判決のときがやってきた――。
「名を、藤山スグルといったな」
「はいっ!」
「では、スグル……」
スグル……の先は!? 先はどうなる!? どうなるんだ殿!?
あれだけ頻繁に吹いていた風が止み、誰しも吐息さえ慎み、空のささやきが聞こえそうな粛然に覆われた。不釣り合いな晴れ晴れとした真下の舞台で下される罪状に全員が耳を澄ました中、
「私のために春画を描け。そして私を満足させろ。もしそれが果たされなかったときは、今度こそ斬る」
ん? んん~? 言語は日本語だが、理解するのに時間がかかる。春画がなんだっけな? もう一度頭の中で判決内容をRepeat after me。生きていく条件として春画を描けと聞こえたような……もっと簡単に、ラノベタイトル風にすれば「可愛い姫と出会えたのに、その父上である殿様から春画を描けと脅されていますっ!」的な。聞き間違い? 聞き間違いじゃないならタイトルこれに変更するのもいいかもしれん。
「えっとー……つまり、殿様のために春画を描くなら江戸で生きていいということでしょうか?」
「そうだ。まだ死に場ではないと言っている。何度も言わすな」
それはあっけなくスラスラと上げられる。強弱もつけられず、棒読みに近い。千代姫と口喧嘩したときの方が感情的になって人間らしさがあった。
「生きれるのか、俺は……ここで!」
やったやった、やった――!
なにはともあれ、神回避。生きる道を開けたのだ。薄暗くぼけけていた視界が明るくなり、気分は最高潮に高まって、酔いそうな喜びに打たれる。
「父上! ありがとうございます!」
すると千代姫は、下された判決に自分のことのように嬉し泣きをする。だがその傍らで見物人をしていた大多数が「やっぱり~」そんな愚痴をこぼしながら、コント並みのずっこけ。神経を研ぎ澄ませて盗み聞きをしたところ、前々から殿様は千代姫にちょいちょい甘いところがあったらしく、この場に参戦してきた瞬間から俺の打ち首回避の可能性が見えていたそうな。
「では私は行く。後のことは任せた」
お役目終了、そんな感じで背をプイッと向ければ、静かに城へ入っていく殿様を大慌てで追いかける復活した爺やと大勢の役人たち。「もう一度よくお考えになってください!」爺やの悲鳴に近い声をオチにして、ちょっと前まで軽いライブ会場の動員数がいたとは思えない。嵐が過ぎ去ったように、きれいさっぱり人がいなくなってしまった。
いるのは安心感から大の字にして寝転ぶ俺と千代姫とミツの三人だけである。
俺と千代姫以外の人間は即打ち首を望む声が大半。だからこそ、殿様もそちら側の意見に近いと考えている。バッコンバッコンと激しく鳴る心臓を抱えてるのですら息苦しい。もし今、胃袋に少しでも食べ物があれば緊張のしすぎで確実に戻していた。このときばかりは昨晩コンビニで暴飲暴食をしない自分にナイス。
殿様は思い悩むように親指と人差し指で顎を撫で、手を合わせて懇願する千代姫と遠くの景色を打ち見往復。
そして、とうとう判決のときがやってきた――。
「名を、藤山スグルといったな」
「はいっ!」
「では、スグル……」
スグル……の先は!? 先はどうなる!? どうなるんだ殿!?
あれだけ頻繁に吹いていた風が止み、誰しも吐息さえ慎み、空のささやきが聞こえそうな粛然に覆われた。不釣り合いな晴れ晴れとした真下の舞台で下される罪状に全員が耳を澄ました中、
「私のために春画を描け。そして私を満足させろ。もしそれが果たされなかったときは、今度こそ斬る」
ん? んん~? 言語は日本語だが、理解するのに時間がかかる。春画がなんだっけな? もう一度頭の中で判決内容をRepeat after me。生きていく条件として春画を描けと聞こえたような……もっと簡単に、ラノベタイトル風にすれば「可愛い姫と出会えたのに、その父上である殿様から春画を描けと脅されていますっ!」的な。聞き間違い? 聞き間違いじゃないならタイトルこれに変更するのもいいかもしれん。
「えっとー……つまり、殿様のために春画を描くなら江戸で生きていいということでしょうか?」
「そうだ。まだ死に場ではないと言っている。何度も言わすな」
それはあっけなくスラスラと上げられる。強弱もつけられず、棒読みに近い。千代姫と口喧嘩したときの方が感情的になって人間らしさがあった。
「生きれるのか、俺は……ここで!」
やったやった、やった――!
なにはともあれ、神回避。生きる道を開けたのだ。薄暗くぼけけていた視界が明るくなり、気分は最高潮に高まって、酔いそうな喜びに打たれる。
「父上! ありがとうございます!」
すると千代姫は、下された判決に自分のことのように嬉し泣きをする。だがその傍らで見物人をしていた大多数が「やっぱり~」そんな愚痴をこぼしながら、コント並みのずっこけ。神経を研ぎ澄ませて盗み聞きをしたところ、前々から殿様は千代姫にちょいちょい甘いところがあったらしく、この場に参戦してきた瞬間から俺の打ち首回避の可能性が見えていたそうな。
「では私は行く。後のことは任せた」
お役目終了、そんな感じで背をプイッと向ければ、静かに城へ入っていく殿様を大慌てで追いかける復活した爺やと大勢の役人たち。「もう一度よくお考えになってください!」爺やの悲鳴に近い声をオチにして、ちょっと前まで軽いライブ会場の動員数がいたとは思えない。嵐が過ぎ去ったように、きれいさっぱり人がいなくなってしまった。
いるのは安心感から大の字にして寝転ぶ俺と千代姫とミツの三人だけである。
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