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第15話

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「お嬢様!」
「そんなに急いでどうしたのかしら?」

メイドが慌てた声で部屋のドアを叩きやって来る。

オリビアがリラックスした雰囲気でハーブティーを楽しんでいた時だった。ゆったりと贅沢な時間が突如として急変すると彼女は目をむいた。

アルフィが重病で毎日苦しんでいるという。もはや虫の息で、胃に穴が開くような断末魔の悲鳴を上げて、ベッドの上で日夜もがいているそう。

「殿下が現在危険な状態にあるってこと?」
「そのようです」
「手紙には命が尽きる前にお嬢様に会いたいと……」
「最近姿を見せないと思ったら往生際が悪い男だわ」

一時は高熱が続き死にかけだったみたい。彼はうなされてオリビアの名前を呼んでいた。悪い夢でも見ていたのだろうか?

執念深いとも言うべき忍耐に彼女は額に手をあてて重いため息をはく。手紙をよこすなんて実に未練がましい。呆れたというような調子でしきりに驚くのである。

「ですがお嬢様、国王様のサインがございます」
「なんですって!それを早く伝えなさい!」

最初は冷たいようだけど、お見舞いに行くのを断ろうと考えていた。そればかりか別れて半年以上経ってもまだしつこく絡む面倒臭い男としか思えなかった。

だが、手紙には彼の父の国王の署名がされていることを知り、状況がガラッと変わる。これは会いに行かないわけにはいかない。

メイドに指示を出したオリビアは、素早い行動をとり準備を万端に整えて、急いで馬車に飛び乗り王子のお見舞いに駆けつけたのです。


「殿下、お身体の具合はいかがですか?」

オリビアが超豪華なホテルのような病室に入る。だけど反応がない。あれ……?でもベッドのカーテンはどういう理由か閉められていた。

気になった彼女は王子に声をかけながらカーテンをそっと掴み、勢いよくカーテンを開け放つ。ベールに包まれていた真実を目の当たりにする。

「えっ?」

その瞬間、驚きながらも息がつまる。踏み込むと我が目を疑う光景が広がっていた。彼女がこれまで見た中でも最も驚くべきシーン。

アルフィと綺麗なドレスを着た令嬢と思われる女性が重なっていた。二人はしっかりと抱き合ったまま熱烈なキスを交わしている。

「ん、誰だ?……オリビア!」

女性は反対を向いていたのですが、彼と彼女の二人の視線は絡みついたようにぶつかる。捨てた男なのに現場を目撃して、非常にショックを受けてしまう。

お互いの脳が破壊されて放心状態で口を開けまま、身体が凍ったように停止した。
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