60 / 66
第60話
しおりを挟む
「うぅ……うぅぅ……うわあああん……」
レオナルドはアリーナの家にやってきて執事になるように命じられた時は、反抗的な態度を露骨に表面に出していた。その気持ちも分からなくはありません。王太子殿下という次期国王の座を約束された国で一番高貴な身分なのに、自分よりも年下のメイドの女性に教育を受けているのです。
彼は賢くないので何度も逆らって肉体に何度も鞭をまともに受けていた。でもそれは彼の最後のプライドだったとも言えよう。レオナルドが休まるのは寝る時だけで、瞼はひくひくと震え枕を濡らす日々が続いた。
「痛い……寒い……」
泣いていると傷に触れ鋭い痛みが全身に走った。それと同時にぞくぞくと背中に寒さを感じる。使用人部屋なので暖房は当然のようにない。厳しい冬の季節で辺境伯家の庭には雪が積もっている。今日はメイドたちと一緒に馬車置き場から門のまえの道を雪かきした。
朝に出かけたアリーナが馬車に乗って夕方ごろ帰って来た時は、メイドたちと並んでぺこぺこと頭を下げてアリーナに対してお嬢様お帰りなさいませと挨拶をした。アリーナが戻るまでに雪かきを終えているようにとメイドたちに言われていたので、夢中になり全力を尽くして雪かきをした。最後のほうは寒さで手の指に感覚がなくなっていた。
「レオナルド雪かきご苦労さま。頑張っていますね」
「私のようなどうしようもない男に身にあまるお言葉……アリーナお嬢様ありがとうございます!」
アリーナはメイドと一緒に並んで出迎えているレオナルドに、ふと気付くとにこりと笑って言った。レオナルドは正直なところ、王子の自分にこんなことをさせて許せないと文句を言いそうになりましたが、メイドたちに焼け付くような視線を向けられおしとやかに振る舞う。
ここでアリーナに失礼な態度をとろうものなら、また鞭で叩かれてしまう事が頭をよぎった。さすがにいくら頭の悪い彼でも何度も叩かれたら、ほとんど本能的な恐怖に駆られ反論しないように気持ちをおさえるようになる。
「婚約破棄したことを根に持っているのかな?でもカトリーヌが……」
簡素なベッドの上でひととおり泣いたレオナルドはポロッと言う。あの日アリーナに婚約破棄を宣言した時から自分は大きな不幸に見舞われたと思い始める。幼馴染のカトリーヌを妊娠させてしまったから仕方なかったんだと心の中で正当化しようとして、アリーナとやり直せないかと悪知恵を働かせるのです。
「そうだ!カトリーヌのお腹にいる僕の子供はどうなったんだ?それとカトリーヌはアリーナの能力の制約で一年しか生きられない……その後はどうなるんだ?」
レオナルドは足りない頭で考えを巡らせていた。だがその心配はいらなかった。父の国王が産まれた子供は養子となって跡を継ぐことを決めている。元王太子殿下のレオナルドは、まだ自分が次期国王になれるのだとおめでたい頭をしていた。
レオナルドはアリーナの家にやってきて執事になるように命じられた時は、反抗的な態度を露骨に表面に出していた。その気持ちも分からなくはありません。王太子殿下という次期国王の座を約束された国で一番高貴な身分なのに、自分よりも年下のメイドの女性に教育を受けているのです。
彼は賢くないので何度も逆らって肉体に何度も鞭をまともに受けていた。でもそれは彼の最後のプライドだったとも言えよう。レオナルドが休まるのは寝る時だけで、瞼はひくひくと震え枕を濡らす日々が続いた。
「痛い……寒い……」
泣いていると傷に触れ鋭い痛みが全身に走った。それと同時にぞくぞくと背中に寒さを感じる。使用人部屋なので暖房は当然のようにない。厳しい冬の季節で辺境伯家の庭には雪が積もっている。今日はメイドたちと一緒に馬車置き場から門のまえの道を雪かきした。
朝に出かけたアリーナが馬車に乗って夕方ごろ帰って来た時は、メイドたちと並んでぺこぺこと頭を下げてアリーナに対してお嬢様お帰りなさいませと挨拶をした。アリーナが戻るまでに雪かきを終えているようにとメイドたちに言われていたので、夢中になり全力を尽くして雪かきをした。最後のほうは寒さで手の指に感覚がなくなっていた。
「レオナルド雪かきご苦労さま。頑張っていますね」
「私のようなどうしようもない男に身にあまるお言葉……アリーナお嬢様ありがとうございます!」
アリーナはメイドと一緒に並んで出迎えているレオナルドに、ふと気付くとにこりと笑って言った。レオナルドは正直なところ、王子の自分にこんなことをさせて許せないと文句を言いそうになりましたが、メイドたちに焼け付くような視線を向けられおしとやかに振る舞う。
ここでアリーナに失礼な態度をとろうものなら、また鞭で叩かれてしまう事が頭をよぎった。さすがにいくら頭の悪い彼でも何度も叩かれたら、ほとんど本能的な恐怖に駆られ反論しないように気持ちをおさえるようになる。
「婚約破棄したことを根に持っているのかな?でもカトリーヌが……」
簡素なベッドの上でひととおり泣いたレオナルドはポロッと言う。あの日アリーナに婚約破棄を宣言した時から自分は大きな不幸に見舞われたと思い始める。幼馴染のカトリーヌを妊娠させてしまったから仕方なかったんだと心の中で正当化しようとして、アリーナとやり直せないかと悪知恵を働かせるのです。
「そうだ!カトリーヌのお腹にいる僕の子供はどうなったんだ?それとカトリーヌはアリーナの能力の制約で一年しか生きられない……その後はどうなるんだ?」
レオナルドは足りない頭で考えを巡らせていた。だがその心配はいらなかった。父の国王が産まれた子供は養子となって跡を継ぐことを決めている。元王太子殿下のレオナルドは、まだ自分が次期国王になれるのだとおめでたい頭をしていた。
0
お気に入りに追加
3,088
あなたにおすすめの小説
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜
雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。
だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。
平民ごときでは釣り合わないらしい。
笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。
何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。
処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~
インバーターエアコン
恋愛
王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。
ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。
「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」
「はい?」
叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。
王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。
(私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)
得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。
相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。
憧れていた王子が一瞬でカエル化した!
さこの
恋愛
憧れていた王子が一瞬でカエル化した!
「キャサリン嬢の髪の毛は個性的ですぐにキャサリン嬢だと分かって良いね」って褒め言葉だと思っていたのに馬鹿にされていた!
だから婚約者候補を降りました。みんな王子に抱いていた気持ちがある場面を見て魔法が解けたように気持ちが冷めた!
その後着飾るのをやめたら、逆に王子から言い寄られる事になった。え、気持ち悪いんですけど……
王子に誤解されたくなくて距離をとっていた義兄との仲が深まりその後義兄から告白される事に!ずっと私が好きだったの?
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる