21 / 66
第21話
しおりを挟む
「カトリーヌ令嬢!」
「……なんでしょうか?」
――カトリーヌが部屋を出ようとした時でした。国王が必死の様子で大声で叫んだ。カトリーヌは思わすドアの前で足を止めて、振り向いて国王を少し見つめてから言葉を返す。
「アリーナ令嬢と敵対するのは絶対にやめたほうがよい」
「そうよ。アリーナ様には勝てないわ」
国王と王妃はアリーナと戦うことを真剣な面持ちでやめさせようとした。二人とも落ち着いた声ですが、顔からは何か熱心さは伝わってくる。アリーナには、どう頑張っても勝てないと言うのです。
「ご心配いただいて感謝いたします。ですが私は大丈夫です。彼を助けたい……私の生き様で後悔はしたくないのです」
「お父様、お母様、カトリーヌはこう見えても強力な魔法を使える優秀な魔法師です。上位精霊とも契約していますから大丈夫ですよ……」
カトリーヌは軽く頭を下げてから話した。まず自分の身を本気で案じてくれているということに、純粋にありがたくて厚くお礼を申し上げる。それでもカトリーヌはレオナルドを助けたいと、強い決意と固い覚悟がうかがえるのであった。
カトリーヌが話した後に間髪いれずに、横になっているレオナルドが咄嗟に口を開いた。カトリーヌは魔法が得意で上位精霊と契約していると言う。カトリーヌの腕前に感銘を受けているような口ぶりです。表情も少し明るくなって、彼女に全幅の信頼を寄せている様子だった。
「レオナルドありがとう。あなたは生きるのを諦めないでね……彼の言う通りです。心配なさらないでください。自分で言うのも何ですが……私は強い。凄く強いのです」
「……カトリーヌ令嬢が魔法の名人で、上位クラスの精霊と契約していることは知っておる。だがな……アリーナ令嬢には、どのような手段を使っても勝てないだろうな……」
カトリーヌはレオナルドの言葉に、すっかり嬉しくなって爽やかな笑顔を見せている。愛している男から熱心に応援されて、あらん限りの勇気を出した。それは喜びの武者ぶるいで、一気に気持ちが高まった。
ところが、国王は水を差すように介入する。カトリーヌがかなりの魔法の使い手であることと、上級な精霊とも契約していることは知っていると言う。実際にカトリーヌは、国中でも数えるほどしかいない一流の魔法師なのだ。
確かにカトリーヌは強い。それは国王も高く評価して認めているし、世の中の多くの人々に認められている。にも関わらず、アリーナには明白に勝てないと答えた。国王は、何か恐れていらっしゃる。はるかに重い恐怖感を抱いていた。
「……なんでしょうか?」
――カトリーヌが部屋を出ようとした時でした。国王が必死の様子で大声で叫んだ。カトリーヌは思わすドアの前で足を止めて、振り向いて国王を少し見つめてから言葉を返す。
「アリーナ令嬢と敵対するのは絶対にやめたほうがよい」
「そうよ。アリーナ様には勝てないわ」
国王と王妃はアリーナと戦うことを真剣な面持ちでやめさせようとした。二人とも落ち着いた声ですが、顔からは何か熱心さは伝わってくる。アリーナには、どう頑張っても勝てないと言うのです。
「ご心配いただいて感謝いたします。ですが私は大丈夫です。彼を助けたい……私の生き様で後悔はしたくないのです」
「お父様、お母様、カトリーヌはこう見えても強力な魔法を使える優秀な魔法師です。上位精霊とも契約していますから大丈夫ですよ……」
カトリーヌは軽く頭を下げてから話した。まず自分の身を本気で案じてくれているということに、純粋にありがたくて厚くお礼を申し上げる。それでもカトリーヌはレオナルドを助けたいと、強い決意と固い覚悟がうかがえるのであった。
カトリーヌが話した後に間髪いれずに、横になっているレオナルドが咄嗟に口を開いた。カトリーヌは魔法が得意で上位精霊と契約していると言う。カトリーヌの腕前に感銘を受けているような口ぶりです。表情も少し明るくなって、彼女に全幅の信頼を寄せている様子だった。
「レオナルドありがとう。あなたは生きるのを諦めないでね……彼の言う通りです。心配なさらないでください。自分で言うのも何ですが……私は強い。凄く強いのです」
「……カトリーヌ令嬢が魔法の名人で、上位クラスの精霊と契約していることは知っておる。だがな……アリーナ令嬢には、どのような手段を使っても勝てないだろうな……」
カトリーヌはレオナルドの言葉に、すっかり嬉しくなって爽やかな笑顔を見せている。愛している男から熱心に応援されて、あらん限りの勇気を出した。それは喜びの武者ぶるいで、一気に気持ちが高まった。
ところが、国王は水を差すように介入する。カトリーヌがかなりの魔法の使い手であることと、上級な精霊とも契約していることは知っていると言う。実際にカトリーヌは、国中でも数えるほどしかいない一流の魔法師なのだ。
確かにカトリーヌは強い。それは国王も高く評価して認めているし、世の中の多くの人々に認められている。にも関わらず、アリーナには明白に勝てないと答えた。国王は、何か恐れていらっしゃる。はるかに重い恐怖感を抱いていた。
0
お気に入りに追加
3,089
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
あなたに愛や恋は求めません
灰銀猫
恋愛
婚約者と姉が自分に隠れて逢瀬を繰り返していると気付いたイルーゼ。
婚約者を諫めるも聞く耳を持たず、父に訴えても聞き流されるばかり。
このままでは不実な婚約者と結婚させられ、最悪姉に操を捧げると言い出しかねない。
婚約者を見限った彼女は、二人の逢瀬を両親に突きつける。
貴族なら愛や恋よりも義務を優先すべきと考える主人公が、自分の場所を求めて奮闘する話です。
R15は保険、タグは追加する可能性があります。
ふんわり設定のご都合主義の話なので、広いお心でお読みください。
24.3.1 女性向けHOTランキングで1位になりました。ありがとうございます。
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
モブですが、婚約者は私です。
伊月 慧
恋愛
声高々に私の婚約者であられる王子様が婚約破棄を叫ぶ。隣に震える男爵令嬢を抱き寄せて。
婚約破棄されたのは同年代の令嬢をまとめる、アスラーナ。私の親友でもある。そんな彼女が目を丸めるのと同時に、私も目を丸めた。
待ってください。貴方の婚約者はアスラーナではなく、貴方がモブ認定している私です。
新しい風を吹かせてみたくなりました。
なんかよく有りそうな感じの話で申し訳ございません。
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる