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第2話 貴重な女性は国王と会う
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「サトウアイ」
「なんですか?」
この国の王子アルシオンと名乗る男に名前を呼ばれた愛は、少しドキッとしながらも何気なく返事をする。
「これから私の父である国王と面会してほしい」
「え!?」
「サトウアイどうした?」
自分の父親の国王と面会してほしいと言われて愛は動揺して声を上げた。アルシオンは不思議そうな顔で愛を見つめて話しかけた。
「ここはどこですか?」
「フロンティア王国だが」
愛は頭がすっかり混乱してしまって先ほどと同じ質問をした。アルシオンは当たり前のことをただ口にしているだけといった様子。
「ここは日本じゃないの?」
「ニホン?そこが住んでいた場所か……」
愛は軽い口ぶりで単刀直入に切りだした。するとアルシオンはひとりごとでもつぶやくように言う。
「突然こんな場所にいて何から何まで戸惑うことばかりだと思う。これから国王と会って君の置かれている状況を説明したい」
自分のあやふやな説明では納得しないだろう。アルシオンは気持ちが錯綜している愛にそう思いながら話した。もっとも愛が目覚めたら国王と面会することは予定されていて自然な流れであった。
「わかりました。それから私のことは愛と呼んでください」
「わかったよ。これからはアイと呼ばせてもらう」
冷静になってくるとフルネームで呼ばれることに愛はどこか気恥ずかしく思えてきた。名前で呼んでほしいと言うとアルシオンは白い歯を見せて笑顔で応じてくれた。
「――私はフロンティア王国の王カルロス・フロンティア。ようこそ世界にとって貴重な女性アイよ!」
顔を付き合わせた愛の印象では実際の年齢より若く見えるカルロス国王。貴重な女性と言われて意味の分からない様子の愛。確かに何か重大な理由があって召喚されたのだろうという事は何となく感じる。
国王と面会する前に準備したいとアルシオンに言われて愛は部屋で待たされた。その時に名前を伝えたのだろう。その後しばらくして部屋に戻ってきたアルシオンと一緒に謁見の間に入室した。
「アイは普通にしていればいい。国王だからってかしこまって話すことはいからね。わからないことがあったら何でも言ってほしい」
「わかりました」
アルシオンはなるべく堅苦しい感じを与えないほうがよさそうだと判断して、愛に普段通りに振る舞えばいいと安心させるように言葉をかけた。
通常であれば国王との謁見する際にはそれなりの態度が求められますが、この世界に重要な役割を果たす愛に口うるさく言うことはなかった。
愛の機嫌を損ねるようなことはしないように国王から命じられた。愛は何ものにも代えがたい存在で国王よりも遥か上の一番大切にすべき存在だと、この短い間にカルロス王が各大臣たちとの会議で正式に決定した。
「なんですか?」
この国の王子アルシオンと名乗る男に名前を呼ばれた愛は、少しドキッとしながらも何気なく返事をする。
「これから私の父である国王と面会してほしい」
「え!?」
「サトウアイどうした?」
自分の父親の国王と面会してほしいと言われて愛は動揺して声を上げた。アルシオンは不思議そうな顔で愛を見つめて話しかけた。
「ここはどこですか?」
「フロンティア王国だが」
愛は頭がすっかり混乱してしまって先ほどと同じ質問をした。アルシオンは当たり前のことをただ口にしているだけといった様子。
「ここは日本じゃないの?」
「ニホン?そこが住んでいた場所か……」
愛は軽い口ぶりで単刀直入に切りだした。するとアルシオンはひとりごとでもつぶやくように言う。
「突然こんな場所にいて何から何まで戸惑うことばかりだと思う。これから国王と会って君の置かれている状況を説明したい」
自分のあやふやな説明では納得しないだろう。アルシオンは気持ちが錯綜している愛にそう思いながら話した。もっとも愛が目覚めたら国王と面会することは予定されていて自然な流れであった。
「わかりました。それから私のことは愛と呼んでください」
「わかったよ。これからはアイと呼ばせてもらう」
冷静になってくるとフルネームで呼ばれることに愛はどこか気恥ずかしく思えてきた。名前で呼んでほしいと言うとアルシオンは白い歯を見せて笑顔で応じてくれた。
「――私はフロンティア王国の王カルロス・フロンティア。ようこそ世界にとって貴重な女性アイよ!」
顔を付き合わせた愛の印象では実際の年齢より若く見えるカルロス国王。貴重な女性と言われて意味の分からない様子の愛。確かに何か重大な理由があって召喚されたのだろうという事は何となく感じる。
国王と面会する前に準備したいとアルシオンに言われて愛は部屋で待たされた。その時に名前を伝えたのだろう。その後しばらくして部屋に戻ってきたアルシオンと一緒に謁見の間に入室した。
「アイは普通にしていればいい。国王だからってかしこまって話すことはいからね。わからないことがあったら何でも言ってほしい」
「わかりました」
アルシオンはなるべく堅苦しい感じを与えないほうがよさそうだと判断して、愛に普段通りに振る舞えばいいと安心させるように言葉をかけた。
通常であれば国王との謁見する際にはそれなりの態度が求められますが、この世界に重要な役割を果たす愛に口うるさく言うことはなかった。
愛の機嫌を損ねるようなことはしないように国王から命じられた。愛は何ものにも代えがたい存在で国王よりも遥か上の一番大切にすべき存在だと、この短い間にカルロス王が各大臣たちとの会議で正式に決定した。
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