世界に女は自分だけ妊娠して人間を救え「断る！私は子供は産まないし結婚しない」特別に重要な女性の幸福な独身生活

第1話 目覚めたら知らない男がいた

今まで生きてきてこれといって私の人生は特別なことはなかった。

「――お目覚めになられましたか？」

愛は意識を取り戻してベッドの上に身を起こしたら、そばに見知らぬ男が立っていた。静かで品のある声で問いかけられた。

甘い顔立ちの男で高貴な身分と思わせるような印象を受ける。気を抜けば男の瞳に吸い込まれそうになり、物語に登場するような非現実的な美男に愛は眼を洗われる思いでした。

「……」
「あの、私の言葉は通じますか？」

突然のことで状況を飲み込めない愛が黙っていると、背の高い金髪の男は不安そうな顔になって話しかけてきた。

「誰ですか？それにここはどこ？」
「私はアルシオン。この国の王子です」

じっと固まっていた愛が口を開いた。改めて記憶を振り返ってみた。昨夜遅く家に帰って来た愛はいつものように手早く食事を済ませると、疲れですぐに眠ってしまいました。

そして目が覚めたらこの状況なっていた。愛は夢を見ている気でいたが近くにいる男の声で現実だと理解し始める。外国の人だろうか？そう思っていたらこの国の王子だというではありませんか。

「え……？国の名前は？」
「フロンティア王国です」
「は？」

愛は明らかに王子と言ったアルシオンの言葉に疑問を抱いていた。新鮮な驚きを感じアルシオンという男に密かな好意を持ちつつ重ねて尋ねた。

国名を聞いたところフロンティ王国という聞いたこともない国だった。愛は思わず間抜けな声をあげる。

「あの、君の名前を教えてくれないか？」

アルシオンは驚きぶりをながめていたが、ふと気になってベッドの上で身を起こしている女性に尋ねてみた。アルシオンに言われて自分はまだ名前を名乗っていないことに気がついた。

「愛です。佐藤愛といいます」
「サトウアイ？珍しい名前ですね」
「そんなことないと思いますけど……」

佐藤愛。不意に愛は言うとアルシオンは全く聞き覚えのない名前だったらしく、軽く首を傾げるようにし眉を寄せて悩んだ表情になる。

珍しい名前だと言われた愛はちょっと不思議な気がした。佐藤は日本でもっとも人口の多い名字だし、愛という名前もありふれた名前で同姓同名の人が結構いるのではないかと思われる。

でも外国人なら分からなくても仕方ないかという気持ちになった。この時、愛はここが異世界だとは想像すらしてなかった。眠っていたので移動しているという感覚すらなく、まだ家のすぐ近所の場所にいるという心地がしていた。