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「お母様はまだお姉様の婚約者と関係を続けたいのですか?」

切ない雰囲気を匂わせながら過ちを認める母に、娘は険しい顔で静かに聞いていた。

母の話が一段落し、二人で数秒間黙っているとイリスが強い口調で核心をつく質問をする。

「……」
「はぁ……黙っているということはお母様はキースとの関係を続けたいと言う事ですね?」

娘に本質を問いかけられ母は固い表情をして、きゅっと唇を結びだんまりを決め込む。

母の態度にイリスは気持ちが重苦しく苛立ち、がっかりして無意識に深いため息が出る。

このままでは母は取り返しのつかない場所まで行き着いてしまうのではないか?

イリスは希望を失った顔で母に、返ってくる見込みのない答えを求めました。


「だってあの人は遠くにいて私を愛してくれないから……悪いのは家にいないあの人よ!」

仕事の都合で離れて暮らしている父が悪いと母は甘ったれた責任逃れをします。

その瞬間、パーンと肌がぶつかり合う高い音が部屋に響き渡る。

想像よりも大きな音がしたことに、イリスは驚いて瞬きすら忘れた。

わずかの間をおいて気分が落ち着くと、手の平がしびれるように痛いのでそちらに意識が向く。

娘は全力の限りを尽くして母の頬を平手打ちしたのです。

「お母様には心底呆れました」

我が子に毛嫌いされ、後ろに倒れて身も心もぐったりと崩れ落ちた母は、頭が真っ白になり魂の抜けたような顔をしていた。


「まさか娘に本気でぶたれるなんて……」
「私も本心では大好きなお母様を叩きたくありませんでした」

母は沈んだ表情で自分の子供に全力で平手打ちされたことを悲しみにくれる。

哀れな鼻声になって暗く閉ざされた気配の母に、娘は心が壊れてしまいそうで精神的につらい。

「じゃあどうしてイリスは殴ったの?痛くてママは泣きそうよ?」

娘に顔面をビンタされた母の頬は、片側だけが腫れていて喋ると痛みが生じました。

ほっぺたが痛くて涙が出そうよ?母は下まぶたに涙をためて寂しそうに涙ぐんでいます。

「お母様黙りなさい!」
「ヒィーッ!」

母は娘に同情されて温かい言葉をかけてもらえると期待を膨らませていたのかもしれないけど、逆に叱られて悲鳴を漏らしてしまい身体がピクリと震える。

娘は大好きな母の心が変わり果ててしまったことが一番悲しくて深く寂しさを感じていた。

一緒にお茶をしながらお菓子を食べるのも大好きだし、ちょっと前からお化粧を教えてもらいお肌のお手入れの話で会話が広がる。

母は愚かというほかない。でも滑稽のようだけど娘は少しだけ可哀想に思う。
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