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「イリスどうだったの?」

キースと入れ替わるように母が部屋に入ってきた。心なしか嬉しそうな気がする。清らかな湧き水のような心の母には愛人になれと迫られた事は抵抗があって言いにくい。

「少し考えさせてくださいと伝えました」
「どうしてイリス?ありがたい話じゃない」

イリスは渋い表情で語り始めました。少し考える時間をほしいと話したところ、母は不思議でならないという顔になります。

彼は想像を絶する人でした。イリスも愛人になれと言われるまでだったら、純粋な気持ちでキースに心から感謝をしていました。


「私がどんな気持ちでミシェルの婚約者のキースに頼んだと思ってるの?あなたのためを思ってした事なのに面目がつぶれたわ……理由を教えなさい!」

部屋に入って来てから数分後に母はがらりと変わっていた。何度尋ねても娘のはっきりしない曖昧な返答に我慢の限界に達する。

自分の子供にどんな時でも太陽に照らされたような慈愛に満ちた顔で、温かい目で見てくれている母が髪を振り乱し気の立った顔つきでイリスを叱り飛ばす。

怒られながらイリスは自分の言葉を振り返り母の気持ちを理解していました。自分の学費のためにただひたすらに頭を下げて彼にお願いしている母の姿を思い浮かべる。


「お母様」
「なんですかイリス私が膝を叩く理由をやっと話す気になりましたか?」
「はい」

これ以上母に嘘はつけない、正直に話そうと思い始めました。なにより大好きな母に口汚い言葉を浴びせられることが悲しくて泥を噛むよりつらかった。

「実は……キースに愛人になれと言われたのです」
「そんな嘘はやめなさい!彼がそんな卑劣なことを言うわけないでしょ!」

勇気を奮い立たせて発言したイリスを母はあり得ないと言って凄いスピードで否定する。

イリスはショックで呆然とした状態になる。どうして自分の言うことを信じてくれないのか?なぜ母は姉の婚約者である彼の肩を待つのか?

「お母様聞いてください!」
「あなたが彼を貶めることを言うなんて……私は育て方を間違えたようですね」
「違います!私は真実を言っています!」
「黙りなさい!彼はそんな薄汚ない人ではありません!」

イリスは母に自分の本音を打ち明けても信じてもらえなくて辛くてたまらない。だけど腹の底から声を出して熱心に伝えました。

でもそれも意味がありません。真摯に受け止めないでイリスが根も葉もない話を言っていると頭ごなしに怒り、キースの擁護を繰り返し行うのです。
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