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第13話

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「アイシャごめん……」
「ナルセスはこれからどうしたいの?」

向かい合って座るナルセスの表情が緩やかに変化するのが見ていてわかったが、アイシャは気にせず話しを続けた。

話しが終わる頃には、ナルセスは涙が止まらなくなり繰り返し謝罪をしていた。アイシャが質問してもナルセスはうつむき加減の姿勢で、口を割らずに静止したまま。

「ルージュの事が好きなの?私と別れたいの?」
「別れたくない……」
「なら、どうしてこんな事をしたの?」
「アイシャ本当にごめん……許してくれ」
「それでは何もわからないでしょ。なぜこんな事になったのか細かく説明して!」

ナルセスが少しずつ語り始める。数ヶ月ほど前に行われた晩餐会でルージュと会い、始めは警戒してたが話しているうちに無防備になった。

その時は周りに誰もいなくてナルセスは、相当に強い酒を飲まされたようで酔っていた。たぶん飲み物に薬を混ぜられていたと話す。

それで気がついた時には、部屋のベッドの上で隣にはルージュがいた。二人とも衣服を何も着ていない状態だったらしい。

「お酒に薬を入れられた失態は仕方がないにしても、どうしてルージュと関係を続けたの?」
「気を失ってる間に恥ずかしい姿を撮られて、言う事を聞かないならアイシャに話すと脅されて……僕はアイシャに嫌われるのが怖かったんだ」

仕組まれた罠に引っかかったことはナルセスは即座に理解したが、精神的に追い詰められて仕方なかったと悲壮感漂う顔で告白した。

ルージュの要求は徐々にエスカレートして、気がついたときには後戻りできない程の深みへ落ちていくのを感じた。もう自分一人の力では逃げ出せなかったとナルセスは泣き崩れる。

「ルージュに愛情はあるの?」
「そんな感情は全くないよ。あるのは恐怖心だけだ」
「それなら私と別れる気持ちはないってこと?」
「うん……でも昔アイシャのことを虐げていた義姉のルージュを抱いた僕を許せるの?」
「今は動揺してるから、はっきりと答えられない」

強要されて関係を続けていた相手なので、最初から好きでもないとナルセスは答える。アイシャはその言葉に多少の安心を得ることはできた。

ナルセスの話によると、ルージュは結婚相手を探していて会うたびに、アイシャと別れて自分と結婚しなさいとナルセスに迫っていたようです。

「それと気になっていることがあるんだけど……いいかな?」
「アイシャへの罪滅ぼしに、この際何でも隠さず答えるよ」
「あの、ナルセスは種無しなの?」
「えっ?」

調査書でアイシャが目にした種無しという二人の会話が気になっていた。ナルセスは子供が作れない体なのか?真意を尋ねた。

寝耳に水の質問にナルセスは驚いた顔をして訳が分からないと言う感じだが、部屋の隅に控えるメイドもただならぬ空気を感じたのか、落ち着かず緊張している様子がうかがえる。
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