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第12話

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「仲間が変な事を言って悪かった」
「レベッカ気にしないでね」
「リアムは頭がおかしいから」

身勝手な振る舞いをしたリアムにパーティーメンバーが謝罪する。ところがレベッカからしたら、別に無理難題な要求ではないので、頭の中が大混乱におちいっていたのであった。

全員に同時に付与をかけるなんて、レベッカにはそれくらいのことは当然でしょうという感じだ。次の瞬間、ハッと顔色をかえた。彼らは自分の事をのだとレベッカは思ったのです。

冒険者ギルドで最上位のSランクパーティーの今は休んでいる付与術師が、そんなの出来ないわけがない。そう判断した彼女は両手で自分のほおを叩いて気合を入れ直した。それなら自分が今できる最高の付与をするべきだと考えて本気の顔になる。

「皆さんに身体能力の強化の付与をかけました」
「は?」
「もうかけたの?」
「早すぎない?」

レベッカが全員に身体能力の強化をしたと声をかけると、誰もが戸惑うような複雑な表情を見せた。反省のために、きちんと正座しているリアムにも付与をしましたが、目を閉じていたので反応はなかった。

彼らが驚くのはむしろ当然のことであったろう。何しろあまりに予想外なほど付与を行うのが早かったのである。数秒というほんのわずかな時間だった。

「そうですか?」

レベッカは皆の若干オーバーリアクション気味な言動に、少し不安な顔になって心が波立ちましたが、それもをして、芝居じみた真似をしているのだろうと思ったのです。

その時レベッカは幼馴染の勇者パーティーにいた時のことを思い出していた――

「おいレベッカさっさと僕に身体能力の強化をかけろ!」
「もうかけたよ」
「いつもより2秒も遅いじゃないか。なまけるのもいい加減にしろよ!」
「そんな事ないと思うけど?」
「無能のくせに口答えをして文句を言うな!」

アルスとオリバーは特別にバカのくせに、いつも細かいことまで命令してきた。アルスがレベッカに頭ごなしに厳しい言い方をするのは、自分の女にしようとしても相手にしてもらえないのが原因である。

レベッカに高価なプレゼントを渡したり、色々な事をしていくら必死に口説いても汚いものでも見るような顔をされて拒絶されていた。

「レベッカばっかりずるいわ!」
「毎日アルスに色んな物を買ってもらって……」
「わざとアルスの心を振り回して楽しんでるのね」

アルスの愛人である女性メンバーのグレースとジェシカとエミリーも、レベッカに対して冷たく言い放つ。事あるごとに性悪な三人に呼び出され、恐ろしい剣幕で因縁をつけられて雑に扱われていました。

幼馴染たちの要求に比べたら、Sランクパーティーの彼らに全員同時に身体能力の強化を行うことは、レベッカには造作なく非常に簡単な事であった。
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