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第1話
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戦闘には不向きな職種だけど自分なりに一生懸命働いてきたつもりだった。しかし心から信頼し合った間柄だと思っていたのは自分だけだったみたい――
「レベッカ、君はクビだ」
「え?」
勇者のアルスに突然告げられてレベッカは信じられなかった。何を言われたのか状況を正しく理解できず、短い戸惑った声を出した。つい先日、その功績を国王陛下に称えられ勇者パーティーの称号を授かったのにどうして……?
今から7年前、小さな田舎の村で育った幼馴染の6人は故郷に錦を飾るため都会へ出て来て冒険者登録を行いパーティーを組んだ。リーダーを努めるのはアルスという金髪の容姿端麗な若者だが、わがままで後先考えずに突っ走る性格ゆえにメンバーはいつも振り回されている。
その美しい顔から爽やかな笑顔を向けると女性たちは彼に惹かれていく。非常にモテるため、何人もの愛人を抱えていてパーティーメンバーの中にも男女関係を持っている女性がいる。パーティーは男性が二人に女性が三人でレベッカ以外はアルスと体を重ね合わせていた。
「チッ」
小さく舌打ちしたのは神官で回復役を担当しているグレースだった。レベッカ以外のメンバーは並んで大きなソファに腰をおろしている。
「レベッカ、幼馴染だから今まであなたが役立たずでも黙っていましたが、もうみんな我慢の限界です」
攻撃魔法が得意な賢者のジェシカが顔をしかめてグサリと胸にくる言葉を言い放った。レベッカのことを無能な人間だと批判している。だが誰もが頷いて同意をしていた。
「はぁーっ、レベッカのせいでうちの優秀なパーティーメンバーの評価が下がってしまうんですよ?」
偵察を担っている弓使いのエミリーが深くため息をつきながら、あきれたように言った。レベッカのせいで能力の高い自分たちが、冒険者ギルドに低評価を下されると不満を漏らしはじめた。
「……」
アルスより頭ひとつぶん高い背丈で、全身にたくましい筋肉の持ち主である戦士のオリバーは、極端なくらい無口な男で何も言わなかった。だけど、いかつい顔を苦渋にゆがめて恨みのこもった眼差しで、レベッカの事を睨んでいた。
「理由を教えて!」
「理由?そんなのレベッカがお荷物だからだよ?」
このままでは追放されてしまう……。そう思ったレベッカは正当な理由もなく、そのような結論に至ったのか尋ねたところ、悪びれる風もないアルスは厄介者扱いした。
「レベッカ、君はクビだ」
「え?」
勇者のアルスに突然告げられてレベッカは信じられなかった。何を言われたのか状況を正しく理解できず、短い戸惑った声を出した。つい先日、その功績を国王陛下に称えられ勇者パーティーの称号を授かったのにどうして……?
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「チッ」
小さく舌打ちしたのは神官で回復役を担当しているグレースだった。レベッカ以外のメンバーは並んで大きなソファに腰をおろしている。
「レベッカ、幼馴染だから今まであなたが役立たずでも黙っていましたが、もうみんな我慢の限界です」
攻撃魔法が得意な賢者のジェシカが顔をしかめてグサリと胸にくる言葉を言い放った。レベッカのことを無能な人間だと批判している。だが誰もが頷いて同意をしていた。
「はぁーっ、レベッカのせいでうちの優秀なパーティーメンバーの評価が下がってしまうんですよ?」
偵察を担っている弓使いのエミリーが深くため息をつきながら、あきれたように言った。レベッカのせいで能力の高い自分たちが、冒険者ギルドに低評価を下されると不満を漏らしはじめた。
「……」
アルスより頭ひとつぶん高い背丈で、全身にたくましい筋肉の持ち主である戦士のオリバーは、極端なくらい無口な男で何も言わなかった。だけど、いかつい顔を苦渋にゆがめて恨みのこもった眼差しで、レベッカの事を睨んでいた。
「理由を教えて!」
「理由?そんなのレベッカがお荷物だからだよ?」
このままでは追放されてしまう……。そう思ったレベッカは正当な理由もなく、そのような結論に至ったのか尋ねたところ、悪びれる風もないアルスは厄介者扱いした。
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