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第19話

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「その人にハリーは騙されてるのが分からないの?」
「イリスそんな言い方は良くない。エレナは僕たちのことを心配してくれてるんだよ」

ハリーは学園での授業科目では成績優秀者であったが、恋愛問題においては成績下位と言える男である。

未だに正しい認識ができていないのが証拠だろう。新婚旅行に幼馴染を連れてきたことに対してイリスが怒っていることを理解していないのです。

美しい容姿と恵まれたスタイルをしているので学園では、ハリーはいつも女子生徒に囲まれて遊んでいそうな印象を抱かれていたが、実はかなり奥手でイリスが初めて付き合った女性だった。

「ハリーどいて!」
「ここから先は通すことはできない!」

まさにハリーはイリスの前に立ちはだかる壁。エレナの安全を守る義務があると言いたげな顔で、ハリーは鉄壁のディフェンス力を発揮していた。

さっきまで気を失っていたことに、自分は何をやっていたんだと思いながら、反省する気持ちもあってエレナに近づかないようにと伝えて、イリスからの非難の声にも負けずに全力で受け止める。

「ハリーそうよ!私を助けるために頑張って!」

弾除けくらいにはなるかな?エレナはそう思いながらイリスからの攻撃の盾代わりに、ハリーを利用することに一応成功した。

簡単に壊れてしまう貧弱な盾だと思っていたら、意外に丈夫でなかなか耐久性の高い盾のようです。そのままハリーが押し切って勝利し、自分の無罪を勝ち取るのだと内心ほくそ笑みながら唇をなめる。

良い方向に予想を裏切る結果になってエレナは笑顔で、やや甲高い声で応援の声をかけた。

「エレナありがとう!」

後ろでエレナが愛嬌のいい声で応援してくれている。振り返って喜んでくれる可愛い顔を見たら、ハリーは力が湧いてきて何よりも嬉しかった。


「何やってるのよ。ハリーの役立たず……」

しばらくエレナは二人の攻防を注意深く見守っていた末に、このままではハリーに勝ち目がなさそう?と不安そうに小声でつぶやく。

次第に劣勢へと追い込まれていくハリーの姿に、理不尽にもエレナは苛立ちをつのらせ始め、落ち着かない気分になっていた。

今はイリスの怒りを抑えることが先決だよね?まもなく崩れそうな目の前の壁を見ながら、そう思い焦ったエレナは悪魔のような悪知恵を閃く。そうだ!この男に全ての責任を負わせようと良心を捨てた腹黒さを見せる。

「ハリーは新婚旅行をなんだと思ってるの!イリス様が可哀想だとは思わないの?どうして私を誘ったのよ!」

エレナはハリーのことが好きでしたが今は自分が助かりたいがために、ハリーのことを自分の身代わりに差し出したのだった。
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