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第4話
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「エレナと一緒に新婚旅行に行くのをイリスが許可したじゃないか」
「はぁ?」
次にハリーはあり得ない事を言い放った。自分がエレナの同行を許したと言うのです。イリスは思わず気の抜けた声出した。
頭を整理して過去を振り返るがイリスは、そんなことを言った覚えはないので、どうやらハリーは誰かに妙なことを吹き込まれたらしいと思った。
「私がいたら駄目なの?」
「心配しないでエレナそんなことないよ」
突然さびし気な表情を浮かべたエレナは、ぼんやりとハリーの顔を見上げながら、今にも泣きだしそうな弱々しい声でつぶやく。
だがエレナの本音はハリーと仲良く話していたのに、質問を浴びせかけるな!という気持ちで隣に座っているハリーに見えない顔の片側だけゆがめて、内心で舌打ちした。
イリスだけはその場面を偶然目撃し、背筋を寒気が走る。
「でもイリス様は私のことを邪魔者みたいに言ってるみたい」
「イリスは少し混乱してるだけだからね」
エレナは不機嫌な顔から途端に悲しい顔へと変わり、ハリーを見つめて助けを求めるようなことを言った。ハリーはポケットからハンカチを取り出して、それを淋しそうに涙ぐんでいるエレナに手渡した。
「ハリーありがとう」
「エレナは泣き顔も可愛いな」
緊張感の張り詰めた雰囲気の中で、エレナは主演女優のような見事な演技力だった。輪をかけてお人好しで、泣き落としに弱いハリーは簡単に騙されてしまう。
ハリーは気の毒なエレナに同情する気持ちが湧き上がってくる。エレナにはあどけない笑顔でいて欲しかったのに、不意打ちのようなイリスの心ない言葉に、裏切られたという思いが胸をよぎる一方だった。
「自分が言ったことを忘れたのか?」
「私がいつ言ったのか教えてほしいですけど?」
ハリーはエレナを悲しませたイリスの冷たい態度を非難しようとする。正確にはイリスは、がっくりと首をうなだれただけで口を開いて返事をしたわけではない。
だからイリスも自分がいつどこでエレナの旅行を認めたのか、まったく記憶がなかった。眉間にしわを寄せ真面目に記憶をたどるとエレナと会ったことは覚えている。
「お願いします。私も一緒に連れてってください。迷惑はかけません」
「それは無理な相談ですね……」
新婚旅行に一緒に行きたいと言ったエレナの、礼儀をわきまえない言葉も記憶にある。それに対してイリスは受け入れられませんと通る声で言い、ハリーにも何度頼まれても跳ね返し断固拒否の姿勢を貫き通した。
「はぁ?」
次にハリーはあり得ない事を言い放った。自分がエレナの同行を許したと言うのです。イリスは思わず気の抜けた声出した。
頭を整理して過去を振り返るがイリスは、そんなことを言った覚えはないので、どうやらハリーは誰かに妙なことを吹き込まれたらしいと思った。
「私がいたら駄目なの?」
「心配しないでエレナそんなことないよ」
突然さびし気な表情を浮かべたエレナは、ぼんやりとハリーの顔を見上げながら、今にも泣きだしそうな弱々しい声でつぶやく。
だがエレナの本音はハリーと仲良く話していたのに、質問を浴びせかけるな!という気持ちで隣に座っているハリーに見えない顔の片側だけゆがめて、内心で舌打ちした。
イリスだけはその場面を偶然目撃し、背筋を寒気が走る。
「でもイリス様は私のことを邪魔者みたいに言ってるみたい」
「イリスは少し混乱してるだけだからね」
エレナは不機嫌な顔から途端に悲しい顔へと変わり、ハリーを見つめて助けを求めるようなことを言った。ハリーはポケットからハンカチを取り出して、それを淋しそうに涙ぐんでいるエレナに手渡した。
「ハリーありがとう」
「エレナは泣き顔も可愛いな」
緊張感の張り詰めた雰囲気の中で、エレナは主演女優のような見事な演技力だった。輪をかけてお人好しで、泣き落としに弱いハリーは簡単に騙されてしまう。
ハリーは気の毒なエレナに同情する気持ちが湧き上がってくる。エレナにはあどけない笑顔でいて欲しかったのに、不意打ちのようなイリスの心ない言葉に、裏切られたという思いが胸をよぎる一方だった。
「自分が言ったことを忘れたのか?」
「私がいつ言ったのか教えてほしいですけど?」
ハリーはエレナを悲しませたイリスの冷たい態度を非難しようとする。正確にはイリスは、がっくりと首をうなだれただけで口を開いて返事をしたわけではない。
だからイリスも自分がいつどこでエレナの旅行を認めたのか、まったく記憶がなかった。眉間にしわを寄せ真面目に記憶をたどるとエレナと会ったことは覚えている。
「お願いします。私も一緒に連れてってください。迷惑はかけません」
「それは無理な相談ですね……」
新婚旅行に一緒に行きたいと言ったエレナの、礼儀をわきまえない言葉も記憶にある。それに対してイリスは受け入れられませんと通る声で言い、ハリーにも何度頼まれても跳ね返し断固拒否の姿勢を貫き通した。
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