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21話

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「はぁーっ、アンジェラに会いたい……」

ロバートは病室の窓から外の景色をぼんやり眺めていた。復縁を迫ったものの断られてしまったアンジェラに想いを募らせていた。

今思うと婚約していた時は幸せだったと何度泣いたことか。ロバートは付き合っていた時にアンジェラにもらった革製のペンケースを見ながら痛いほど感じた。自分と別れたアンジェラは新しい恋人がすでにいるんじゃないかと不安な思いがロバートの胸に広がった。

――数日前、過激派グループによる襲撃を受けて裸姿で公開謝罪をする羽目になる。全国民に裸を晒すことになって恥ずかしい思いをした。

(もう家には帰れない。お父様とお母様になんて言えばいいんだ)

父のアンドレア国王にも母のミランダ王妃にも合わせる顔がない。新聞を広げたら自分の子供が裸で涙を浮かべた写真を見て親は呆れ果てていることだろう。ロバートは苦しそうな表情で目を閉じて頭を悩ませる。

ロバートとニーナは公開謝罪を終えると各新聞社の記者達に囲まれてインタビューを受けた。

「なんだと!取材まで裸のまま答えるのか?」
「嘘でしょ?」

やっと服が着れるとロバートとニーナはほっとした顔していた。ロバートが服を着てから話をしたいと言ったところ、一人の記者が服を着て取材を受けたらアンジェラ様への誠意が伝わらないと言い出した。他の記者たちも次々に同じことを言って二人は服を着ることを許されなかった。

「せめてパンツははかせてくれ!世間はみんなしてるのに僕達はフルヌードなんだぞ!」
「えっ?」
「何ですか?」
「僕は裸でいいからニーナにだけはパンツをはかせてやってほしい!胸は手ぶらでなんとかするから!」

読者様は顔パンツという言葉をご存知だろうか?素顔は恥ずかしいとマスクは下着のような存在で、着用しないと恥ずかしいという意見。

これ以上ニーナを生まれた状態の姿にさせとくわけにはいかない。下着を身につけたいと主張して最後まで抵抗を続けましたが無駄なあがきだった。記者たちは知らん顔で聞こえないふりをしてとぼけた態度でスルーしていた。

悲しそうな顔で切ない思いで見つめてくる幼馴染のニーナに、ロバートは忍びないと思いながら気の毒そうに眉を寄せて、もう少しだから頑張ろうと精神的な辛さに耐えてと元気付ける。

「ニーナごめん……もうちょっとだから……」
「ロバートの無能!役立たず!」

突然ニーナは感情的になって不機嫌な口ぶりでロバートを責めた。もう耐えられないといった思いでニーナの怒りは爆発寸前だった。ニーナは感情にまかせて次の行動をとった。

「ぎゃあっ」

ロバートは驚きに溢れた悲鳴を上げて床を転がった。殴られた瞬間ぐらりと視界が回転して少しの間ロバートの意識は飛んでいた。
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