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8話

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「問題を起こした処罰としてロバートとニーナに国外追放処分を命じる」

アンドレアは権威のある声で厳しい判決を下した。その姿は国王にふさわしい貫禄かんろくを備えていた。ロバートとニーナに国外追放の刑を言い渡した。国外追放は非常に重い罰と言われていて最も不名誉な処分の一つである。アンドレアは自分の血を引き継いだ実子にも情けをかけずに、ためらわないだけの意志を持って口にした。

「え……!?お父様?冗談ですよね?」
「この場で冗談が言えると思うか?」

最初ロバートは何を言われているのか理解できなかったのが、そのうちに恐ろしさで自分の体が震えているのを感じた。ロバートは父にこわばった顔で問いただしたが有無をいわせぬ口調で返された。国外追放は決して冗談ではなかった。

「僕は……この国の王子ですよ?追放なんてあり得ない!」
「お前は王族から追放して親子の縁も切る。十日の猶予ゆうよを与えるからその間に準備を整えて国を出ろ。二度と会うことはないだろうけど元気で暮らせ」

ロバートは体が凍りついて頭が真っ白になってしまった。正常な判断ができなくなるのも当然の結果で、王子である自分が国外追放の刑を言い渡されるなんて考えてもみなかっただけに理性は失われた。ロバートが顔色を変えて父の下した決断に異議を唱えた。

アンドレアは無表情な顔で息子を見つめて話した。もう親でも子でもないと言って家族関係を一切断つと甘やかさない姿勢を見せた。ロバートは父の声が事務的で冷たく感じられた。アンドレアは親しく話すことを避けているような印象を受ける。

「そ、そんな……!?」
「こんなことあってはならないですわ……私が未来の王妃になるはずなのに……」

国王に結婚を認めてもらって幸福の絶頂にいたロバートとニーナは、天国から地獄に落とされたような気分だった。ニーナは今回の騒動を引き起こしたことで、それなりの罰を受ける覚悟はしていたが国外追放という予想以上の重い処分でした。

ニーナは真っ青な顔をして細い体が小刻みに震えている。死刑宣告に等しい処罰を与えられて、ニーナは心にひどいショックを受けて意識を失い倒れてしまった。

「ニーナ!?大丈夫か!しっかりしろ!」

ロバートは床の上に倒れたニーナに気がついてためらいなく抱き寄せた。ニーナの身を案じてロバートは力いっぱい大声で叫んで絶え間なく呼びかけていた。

(まさか国外追放なんて……大変なことになったわね)

アンジェラは慎重な態度を保って成り行きを見守っていた。アンドレアが二人に国外追放を言い渡した時は目の前で起きたことが信じられなかった。黙り込んでいたアンジェラは衝撃を受けて息もつけないほど驚いていた。

だけど親身になってニーナを介抱しているロバートの姿を見ても同情する気にはなれなかった。それどころか逆に心の中でいい気味だと思って眺めていた。アンジェラは自分にもそういう感情があったことに気づかされて、自分の心が汚れてしまったような気もした。
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