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第31話
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「――そうですか。やはり天界に帰ってしまうのですね。私たちは取り返しのつかないことをしてしまった……ディオール帝国の人たちを恨んでいますか?」
クロエとエリザベスは、今後のことについて話し合いをしていた。クロエは天上の世界に帰って、地上で暮らすつもりはないと答えた。一縷の望みをかけていたエリザベスは、残念そうな顔をしたけど仕方ないという思いでした。
「そんな感情はありません」
あなたに冷たく接していたこの国の人間を恨んでいるのか?という問いに対してクロエは特に気にしてないと言う。そんなことはないだろうとエリザベスは思うのですが、それ以上は聞きませんでした。
「……ですが、クロエのお父上は非常にお怒りでした」
「うふふふ、そうみたいですね」
クロエの父の神からは、娘を傷つけたと声を荒げられて叱責されたことを話す。エリザベスは何度も神に謝罪しましたが許してくれなかった。クロエはエリザベスを見てにっこりと微笑んだ。
「クロエ本当にごめんなさい」
「エリザベス様、もう謝らないでください」
正面からクロエの顔を見てエリザベスは改めて深く頭を下げた。先ほども何度も手をついて泣くように謝罪をしてくれたので、気持ちは伝わっていますと返した。
「クロエありがとう」
「こちらこそお世話になりました」
二人はもうじき別れなければならないことが悲しかった。挨拶を交わしながら席を立ち始めた。
「――ん……?クロエとお母様の声……?」
クロエが姿を見せた時から、顔を真っ赤にして泣き叫んでいたガブリエルは、泣き疲れていつの間にか眠ってしまった。すぐそばのソファーの上に横になっていた彼は意識を取り戻して、二人の話し声が聞こえてくる。
「……ガブリエル?」
起き上がってみるとクロエと目が合って彼女に名前を呼ばれた。ガブリエルは心臓が高鳴って足早にクロエの前に行った。それは、ほとんど本能的とも言える行動だった。
「クロエどこにも行くなーーーーー!!帰らないでくれえええええええぇぇーっ!!私が悪かったから許してくれえええええええええええぇぇぇーっ!!」
突然、大声で叫び出したではないか。ガブリエルは自分の罪を真剣に受け止めて、過去の罪を許してほしいと熱心に懇願したのでありました。クロエとエリザベスは一瞬ぎょっとせざるをえなかった。
「わかったから静かにして……泣かないで……」
興奮しているガブリエルにクロエは穏やかに微笑んで、子供をなだめるような優しい口調で言った。苦しそうに顔をゆがめて、あんな悲痛な声をあげる彼の姿を見ていると彼女はどうにも切ない気分だった。
クロエとエリザベスは、今後のことについて話し合いをしていた。クロエは天上の世界に帰って、地上で暮らすつもりはないと答えた。一縷の望みをかけていたエリザベスは、残念そうな顔をしたけど仕方ないという思いでした。
「そんな感情はありません」
あなたに冷たく接していたこの国の人間を恨んでいるのか?という問いに対してクロエは特に気にしてないと言う。そんなことはないだろうとエリザベスは思うのですが、それ以上は聞きませんでした。
「……ですが、クロエのお父上は非常にお怒りでした」
「うふふふ、そうみたいですね」
クロエの父の神からは、娘を傷つけたと声を荒げられて叱責されたことを話す。エリザベスは何度も神に謝罪しましたが許してくれなかった。クロエはエリザベスを見てにっこりと微笑んだ。
「クロエ本当にごめんなさい」
「エリザベス様、もう謝らないでください」
正面からクロエの顔を見てエリザベスは改めて深く頭を下げた。先ほども何度も手をついて泣くように謝罪をしてくれたので、気持ちは伝わっていますと返した。
「クロエありがとう」
「こちらこそお世話になりました」
二人はもうじき別れなければならないことが悲しかった。挨拶を交わしながら席を立ち始めた。
「――ん……?クロエとお母様の声……?」
クロエが姿を見せた時から、顔を真っ赤にして泣き叫んでいたガブリエルは、泣き疲れていつの間にか眠ってしまった。すぐそばのソファーの上に横になっていた彼は意識を取り戻して、二人の話し声が聞こえてくる。
「……ガブリエル?」
起き上がってみるとクロエと目が合って彼女に名前を呼ばれた。ガブリエルは心臓が高鳴って足早にクロエの前に行った。それは、ほとんど本能的とも言える行動だった。
「クロエどこにも行くなーーーーー!!帰らないでくれえええええええぇぇーっ!!私が悪かったから許してくれえええええええええええぇぇぇーっ!!」
突然、大声で叫び出したではないか。ガブリエルは自分の罪を真剣に受け止めて、過去の罪を許してほしいと熱心に懇願したのでありました。クロエとエリザベスは一瞬ぎょっとせざるをえなかった。
「わかったから静かにして……泣かないで……」
興奮しているガブリエルにクロエは穏やかに微笑んで、子供をなだめるような優しい口調で言った。苦しそうに顔をゆがめて、あんな悲痛な声をあげる彼の姿を見ていると彼女はどうにも切ない気分だった。
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