上 下
3 / 11

3.

しおりを挟む
「ふぅ……やっぱり我が家は落ち着くわね」
「左様でございますか」

しばらくするとリディアは、お気に入りのソファに腰かけて優雅に紅茶を楽しむ幸せな時間に酔いしれる。先ほどと打って変わって上機嫌な様子のリディアにメイドも微笑み相槌を返す。

「そう言えばお父様とお母様を見かけませんが?」
「それでしたら早朝から街のほうにお買い物に行かれましたよ」
「そう……」
「リディアお嬢様がお帰りになるので、何かサプライズパーティーを計画していらっしゃるかもしれませんよ?」

落ち着いてきたら両親の不在がふと気がつく。どうやら朝早くから街に出かけているらしい。自分が里帰りしたのに留守にしてるなんてとリディアは残念な表情をします。

すると、その悲しい気持ちに沈むリディアに、胸を痛めたメイドが元気付けるように言うのです。ご両親様は帰って来るリディアに、何か驚くようなプレゼントを準備しているのでは?と。

仮にそうであったとしても、前日までに用意しておけばいいだけ。プレゼントなんていらないから、リディアは両親に出迎えてほしかった。顔一面に笑顔を浮かべて強く抱きしめてもらったほうが、何よりも嬉しい最高の喜び。


「ご飯まだ?お腹減ったからさっさと支度して!」

急に姿を現すエマ。見たところ風呂に入っていたことが一目で分かる。何故ならば、頭にタオルをのせて髪の毛が濡れている状態。

それに普段から使うリディアの花もようが綺麗に装飾を施してある寝巻き姿。背格好が少し小さいのでだらしなく着ている。リディアは可笑しいのと驚きで頭が揺れ思わず紅茶を吹き出しそうになるのを我慢した。

空腹だからご飯を用意をしろと、公爵家に礼儀作法を身につけるために奉公に来ている貴族のメイドに、恥じることもなく半ば当然のように命令するのです。

「親の顔が見てみたい……」

リディアは呆れて思わず口に出してしまう。子供を放置している時点でろくな親じゃない事は確かですが、家に居られても不快だし迷惑以外の何者でもない。

あなたさっきまでお菓子を好きなだけ食べてたでしょ?と突っ込みを入れたくなる。平民の分際で身の程を弁えない厚かましく憎らしい態度。

「あなた何様なの!黙って聞いていれば調子に乗り過ぎよ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される

つくも
恋愛
病弱な令嬢アリスは伯爵家の子息カルロスと婚約していた。 しかし、アリスが病弱な事を理由ににカルロスに婚約破棄され、義妹アリシアに寝取られてしまう。 途方に暮れていたアリスを救ったのは幼馴染である公爵様だった。二人は婚約する事に。 一方その頃、カルロスは義妹アリシアの我儘っぷりに辟易するようになっていた。 頭を抱えるカルロスはアリスの方がマシだったと嘆き、復縁を迫るが……。 これは病弱な令嬢アリスが幼馴染の公爵様と婚約し、幸せになるお話です。

村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗
恋愛
父親がいないことによって、エルーシャは村の人達から迫害を受けていた。 彼らは、エルーシャが取ってきた食べ物を奪ったり、村で起こった事件の犯人を彼女だと決めつけてくる。そんな彼らに、エルーシャは辟易としていた。 ある日いつものように責められていた彼女は、村にやって来た一人の人間に助けられた。 その人物とは、公爵令息であるアルディス・アルカルドである。彼はエルーシャの状態から彼女が迫害されていることに気付き、手を差し伸べてくれたのだ。 そんなアルディスは、とある目的のために村にやって来ていた。 彼は亡き父の隠し子を探しに来ていたのである。 紆余曲折あって、その隠し子はエルーシャであることが判明した。 すると村の人達は、その態度を一変させた。エルーシャに、媚を売るような態度になったのである。 しかし、今更手の平を返されても遅かった。様々な迫害を受けてきたエルーシャにとって、既に村の人達は許せない存在になっていたのだ。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

妹に醜くなったと婚約者を押し付けられたのに、今さら返せと言われても

亜綺羅もも
恋愛
クリスティーナ・デロリアスは妹のエルリーン・デロリアスに辛い目に遭わされ続けてきた。 両親もエルリーンに同調し、クリスティーナをぞんざいな扱いをしてきた。 ある日、エルリーンの婚約者であるヴァンニール・ルズウェアーが大火傷を負い、醜い姿となってしまったらしく、エルリーンはその事実に彼を捨てることを決める。 代わりにクリスティーナを押し付ける形で婚約を無かったことにしようとする。 そしてクリスティーナとヴァンニールは出逢い、お互いに惹かれていくのであった。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

処理中です...