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第31話
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「マリアよ。一つ質問していいか?」
「はいっ!何なりとお聞きくださいませ!!」
互いの顔をじっと見つめ合っていたら、ランドルフがマリアに意見を聞きたいと言う。マリアはランドルフからの好奇的な視線を浴びて子供みたいに純粋に笑っている。
魔王はマリアに興味を持ったらしく、マリアの失礼な態度には特に腹を立てていなかった。やけに無邪気な、人懐っこい笑顔を向ける可愛い奴だなと思ったほどでした。言ってみればランドルフの感覚は、ペットの龍を大事にするような気持ちで自分の妻にするという思いはない。
「ならば聞くが、お前は魔王領に行ったアイラのことをどう思った?」
その質問が耳に入って理解すると、少し残念な気持ちになる。姉のことか……?そう思ったのです。何をしている時が楽しいとか、好きな食べ物は何かとか、自分に対してのことではなくて悔しそうに唇を噛んだ。
とは言え、魔王領の支配者と初めて交わす会話である。マリアはきわめて慎重に返答する必要があると心を静める。しばらくの間、うーんと考え込んでいるようであった。
「――私は、お姉様のことが大好きでした。私と違って美人で頭が良くて、本当に幅広い教養を身につけていて心から尊敬しておりました。ですが……魔王領に行くことが父から聞かされまして、その日から悲しくて体を震わせて泣き続けて、毎日泣いていたので目が赤く腫れていました。何度も父に、もう一度考え直してくださいと、お願いしておりました。でも……父は、もう決まったことだから仕方ないと言われて……私はショックで食事も喉を通らず痩せ細り、お姉様のことが心配で夜も眠れなくなりました。そして魔王領に行く日は、お姉様との別れが悲しくてたまらなかったです。最後は身体を強く抱きしめ合って、それなりの時間一緒に泣いて姉妹の絆を確かめ合いました……」
マリアはランドルフに、好印象を与えておく必要があると考えた。実際には大嫌いなアイラのことを褒め称える。とても賢い立派な姉だと言い、心から深い信仰に到達していると話す。
魔王領に行ってほしくなかったと目から涙を流しながら、ときどき言葉を詰まらせながら話した。自分にとって姉は、かけがえのない大切な存在であって、胸の中には姉とのいろんな思い出があると苦しい思いを味わいながら、魔王領に行く姉の背中を見送ったと肩を大きく震わせて涙声で答えた。
(小ざかしい!よくそんなことが言えるわ。ばかのくせに悪知恵に限って頭がよく回りますね……見えすいた嘘をついて、この子全然変わってないわ……)
目の前に魔王がいるこのような場で、思いつく限りの口からでまかせをしゃべり続けるマリアに、やり場のない怒りがこみ上げてくるのを抑えられなくて、アイラは多少口を尖らせて心に不満を漏らした。
*****
新作「王子に婚約破棄されて国を追放「魔法が使えない女は必要ない!」彼女の隠された能力と本来の姿がわかり誰もが泣き叫ぶ。」を投稿しました。よろしくお願いします。
「はいっ!何なりとお聞きくださいませ!!」
互いの顔をじっと見つめ合っていたら、ランドルフがマリアに意見を聞きたいと言う。マリアはランドルフからの好奇的な視線を浴びて子供みたいに純粋に笑っている。
魔王はマリアに興味を持ったらしく、マリアの失礼な態度には特に腹を立てていなかった。やけに無邪気な、人懐っこい笑顔を向ける可愛い奴だなと思ったほどでした。言ってみればランドルフの感覚は、ペットの龍を大事にするような気持ちで自分の妻にするという思いはない。
「ならば聞くが、お前は魔王領に行ったアイラのことをどう思った?」
その質問が耳に入って理解すると、少し残念な気持ちになる。姉のことか……?そう思ったのです。何をしている時が楽しいとか、好きな食べ物は何かとか、自分に対してのことではなくて悔しそうに唇を噛んだ。
とは言え、魔王領の支配者と初めて交わす会話である。マリアはきわめて慎重に返答する必要があると心を静める。しばらくの間、うーんと考え込んでいるようであった。
「――私は、お姉様のことが大好きでした。私と違って美人で頭が良くて、本当に幅広い教養を身につけていて心から尊敬しておりました。ですが……魔王領に行くことが父から聞かされまして、その日から悲しくて体を震わせて泣き続けて、毎日泣いていたので目が赤く腫れていました。何度も父に、もう一度考え直してくださいと、お願いしておりました。でも……父は、もう決まったことだから仕方ないと言われて……私はショックで食事も喉を通らず痩せ細り、お姉様のことが心配で夜も眠れなくなりました。そして魔王領に行く日は、お姉様との別れが悲しくてたまらなかったです。最後は身体を強く抱きしめ合って、それなりの時間一緒に泣いて姉妹の絆を確かめ合いました……」
マリアはランドルフに、好印象を与えておく必要があると考えた。実際には大嫌いなアイラのことを褒め称える。とても賢い立派な姉だと言い、心から深い信仰に到達していると話す。
魔王領に行ってほしくなかったと目から涙を流しながら、ときどき言葉を詰まらせながら話した。自分にとって姉は、かけがえのない大切な存在であって、胸の中には姉とのいろんな思い出があると苦しい思いを味わいながら、魔王領に行く姉の背中を見送ったと肩を大きく震わせて涙声で答えた。
(小ざかしい!よくそんなことが言えるわ。ばかのくせに悪知恵に限って頭がよく回りますね……見えすいた嘘をついて、この子全然変わってないわ……)
目の前に魔王がいるこのような場で、思いつく限りの口からでまかせをしゃべり続けるマリアに、やり場のない怒りがこみ上げてくるのを抑えられなくて、アイラは多少口を尖らせて心に不満を漏らした。
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