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第4話

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「グレース買い物に行こう」
「う、うん」

翌日は馬車で街に繰り出すことになった。丁度いいくらいの気温に空は雲一つなく冴え渡っていて抜けるような青空のもとさわがしい響きを立てて走る馬車。デート日和でハリーといると柔らかいものに包まれているような優しい気持ちになる。

「ちょっと止めてくれ」
「どうしたの?」
「グレース少し歩こうか。話したいこともあるしさ」
「え?うん、いいけど…」

ハリーが不意打ちのように大声を上げて御者に伝えると馬車は急停止した。なんとなくハリーは寂しそうな顔をしていた。

「グレースこの場所覚えてる?」
「あっ、ここって」
「小さい頃ここでよく遊んだよね。グレースまだ遊びたいから帰りたくないって泣いて大変だったよな?」
「そんなこともあったね。昔のことを引っ張り出すのはやめてよ…でもハリーもよく覚えてるね」
「グレースとの思い出はずっと記憶に残ってるよ」
「それよりも話したい事って何?」
「そろそろ帰ろうかと思ってるんだよね」

空気を変えるために何気なく言ったことだけどグレースは言わなければ良かったと悔しくてたまらないという顔つきになった。

「え?でも、シャーロットお姉様まだ帰って来てないけど…話をするんじゃないの?」
「気がついたら結構泊まってるしさ。シャーロットの浮気で婚約解消したからおじさんもおばさんも後ろめたさを感じてるのか何も言わないけど迷惑かなって?」
「そんなことないよ。まだ3日だから全然迷惑じゃないよ」
「シャーロットのことはもういい…もう親同士の間で話し合いも終わってるしさ」

グレースには何も言う権利はない。姉の浮気で婚約解消になってるけど、その彼と男女の関係をもってしまった。この状況は自分がずるいことをしたみたいで賞賛できない。でもハリーから帰ると言われるとどっと悲しさが押し寄せてくる。

「グレースそんな悲しい顔しないでくれよ。僕だってグレースと離れるのは寂しいけどいつまでも一緒にいるわけにはいかないだろう?」
「分かってるけど…昨日私と付き合うって両親に言ってくれたよね?」
「あれは冗談だよ」
「私は冗談でも嬉しかった」
「グレース…」
「んむっ!?」

グレースはすっかり沈み込んでいるとハリーが柔らかい眼差しで見つめて優しい言葉をかける。二人は見つめ合ってからどちらともなく軽いキスをした。

「ハリー大好き。もう離れたくない」
「僕もだよグレース」

この日二人は付き合って半年後に結婚して幸せに暮らしました。
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