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第46話

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「おはよう!」
「おはよう。体は大丈夫?」
「うん、今は平気。よくあることだから」

数日後にアイラが登校してきた。顔を見かけて元気な姿で挨拶をしてくれた。ガブリエルも挨拶を返すと、気になってることを尋ねる。

昔からアイラは体が弱くて倒れていたと、顔色を変えるでもなく平然として答えた。

「そうなんだ。大変だね」
「もう慣れてるから」

ガブリエルは心配そうな口ぶりで続けると、アイラは自分にとっては当たり前のことで慣れた感覚であると言う。

この頃からガブリエルは、アイラに好きだという気持ちを伝えたいと思うようになっていた。最初の頃はただ好きだという気持ちがあるだけで、それ以上のことは望んでなかったと思う。

アイラも自分のことが好きだったら嬉しいなぁと夢見てたくらいで、ただ一緒に話すだけで一日幸せな気分に浸ることができる。

「はぁ……アイラの顔を見るだけで胸が苦しい……」

でも、成長して男女の境が明確になっていく頃、ガブリエルはアイラとただ喋るだけの関係が心苦しくなってきた。

心臓の音を体中に響かせながら自分の想いを伝えて、アイラが自分と同じ気持ちであってくれたら、どんなに喜んだことだろう。そればかり考えるようになっていた。

「おはよう!」
「おはよう」
「この前友達と私の家で一緒に遊んだの」
「そう」

アイラは、朝の挨拶から昨日友人と遊んだ話をきた。この前の誕生日プレゼントにもらった着せ替え人形で遊んだと嬉しそうに話す。

学園の初等部の頃は、ガブリエルは友人も少なかったし、男子なので人形で遊ぶことにも興味がなかった。いつも家で本ばかり読んでいて、内向的で大人しい性格をしていた。野暮な印象の人間だったと思う。

「今度一緒に遊ぼう」
「うん」

アイラは、そんなガブリエルにもっといろんなことを教えたかったのかもしれない。今となってはわからないけど、アイラはそうしていつも気遣ってガブリエルに話しかけてくれていた。

数日後、いつものように教室に入ると正面に、装飾が施されて派手な感じでガブリエルとアイラの名前が書いてある。

「これはなんだよ……」

見た瞬間、ガブリエルは激しく動揺して顔が露骨に強張る。心中穏やかでいられなくなって恥ずかしい気持ちになった。そして二人の積み上げてきたものが、一気に大きな音を立て崩れていく感覚を味わう。
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