心から信頼していた婚約者と幼馴染の親友に裏切られて失望する〜令嬢はあの世に旅立ち王太子殿下は罪の意識に悩まされる

第39話

ある日、側近のメリッサが真面目な顔でアイラ夫人に告げました。

「ガブリエル様は不倫をされています」
「え……！？」

アイラは何となくそんな気はしていましたが、面と向かってはっきり言われると驚くものです。

メリッサはアイラの心の内を理解して伝を頼って、数ヶ月前から独自に調査していたのでした。

「相手はエステルという名前で結婚していたのですが……旦那にバレて追い出されたようです」
「そうなのですね」
「ガブリエル様は結婚前にも奥様の親友のジュリア令嬢と浮気をしていたのに懲りない男ですね」

アイラは夫の裏切りに気づいていたのか寂しそうな顔で返事をする。

メリッサの話によると二人は週に一度の逢い引きを繰り返しているという。親友と関係を持った過去の事を思い出してアイラは嫉妬をして苛立ちました。

1週間後、アイラ夫人は固い決意をしてガブリエル殿下に別れ話を切り出す。

「アイラ突然どうしたんだ？」

ガブリエルは動揺しますが、アイラは覚悟を決めているので何を言われても心に響かない。

アイラの一歩も引かない態度に最終的にはガブリエルも諦めて、揉めることなく円満に二人は別れました。

その話し合いの場で、アイラは一言もガブリエルがエステルと不倫をしていることを言いませんでした。

半年後、アイラ夫人はあの世に旅立ちました。でも自ら命を絶ったわけではありません。

実は、アイラは医者からもう長くないと教えられていたのです。なのでアイラは身を引いてガブリエルと別れました。

不貞を働いていたことが分かってもガブリエル殿下のことは愛していました。自分の寿命は短く風前の灯のような状態なので、二人に幸せになってもらいたかった。

アイラはそのことを黙ってこの世を去りましたが、アイラのことを誰よりも深く気づかい親愛の情を抱いていた付き人のメリッサは、あまりにも気の毒に思い我慢できずにガブリエルに手紙を送り全てを伝える。

手紙を読んだガブリエルは罪の意識にさいなまれ生涯苦しむことになります。エステルとも呆気なく別れて関係が断ち切れる。

その後、ガブリエルは貴族の令嬢と再婚しますが、因果応報なのかその令嬢の実家が不祥事を起こします。その結果お家取りつぶしになりました。

程なくしてガブリエルは、たちの悪い病気にかかってしまい悲惨な生活を余儀なくされるのでした。