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第37話

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ガブリエル殿下はいつもたくさんの愛情を与えてくれるアイラ夫人をまた裏切ってしまった罪悪感で真実を告げて離婚する決意をしていた。

しかし愛する妻と離れることはガブリエル殿下にとって体が二つに引き裂かれるような苦痛です。だけどこれ以上アイラ夫人を傷つける事に耐えられず自らの過ちを考えると慰謝料を払う人生しか残されていないと胸中で思う。

数日後、ガブリエル殿下は不倫相手のエステル夫人に妻と離婚する事になるかもしれないと話し始める。覚悟を決めていることが分かるとエステル夫人は最後に抱いてほしいと言われて二度とアイラ夫人を裏切らないと誓っていたのにエステル夫人に頼まれてあっさりと抱いてしまう。

ガブリエル殿下は部屋から出た後にアイラ夫人の顔を思い浮かべていた。頭の中を整理するとガブリエル殿下がエステル夫人と不倫する理由などなかったのかもしれない。

自分は妻からの愛情に不信感を抱いたことはないしガブリエル殿下も妻への陽だまりのような愛情がいつも胸の中にある。だが、先ほどエステル夫人とベッドを共にしてガブリエル殿下は今までになくお互いを求め合うことに初恋みたいに熱を上げて夢中になっていた。

その事にガブリエル殿下は快楽の海に溺れた自分自身が果てしなく情けなく感じてアイラ夫人を揺るぎない物として信じていたことが全て覆ってしまったような気がしていた。

2日後にまたエステル夫人の部屋を訪れるガブリエル殿下は頭でもう関係を終わらせないと駄目だと理解していてもお互い依存しているので破滅に向かって突っ走ってしまう。部屋に入るとエステル夫人は急にガブリエル殿下に抱きついてきた。

「殿下会いたかった……とても寂しかった……」
「エステルやめてくれ。このような関係は良くない。もうアイラを裏切ることはしたくない」
「それならどうして部屋にいらしたのですか?」
「すまない……自分でも分からないんだ。僕達はお互いに病気なのかもしれない」

ガブリエル殿下は突発的に抱きつかれてあわただしく困惑した気持ちになりながら本音を告げた。

「私のほうこそ申し訳ございません。でも殿下のことを愛してしまったのです。殿下が奥様のことを深く愛しているのは重々承知しています。でもほんの少しの間だけでも今だけは私のことを愛してくださいませんか?私は殿下のことを考えるだけで説明のつかない衝動に突き動かされて我慢できないのです」

エステル夫人は蚊の鳴くような弱々しい声で語りました。ガブリエル殿下はこの思いを聞いて気が動転して言葉が見つからない。

エステル夫人は依然として強く抱きしめてきてガブリエル殿下は切なくなるくらい一生懸命に抵抗しました。けれど二人の唇が磁石のようにくっつくとガブリエル殿下は自分の意思とは関係なく催眠術にかかったみたいにエステル夫人の胸の中で崩れ落ちてしまう。
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