心から信頼していた婚約者と幼馴染の親友に裏切られて失望する〜令嬢はあの世に旅立ち王太子殿下は罪の意識に悩まされる

第27話

「殿下とそんなことがあったの……辛かったねアイラ」
「でも殿下もひどいですね」
「そうよ全部殿下が悪い！」

親友のみんなが優しい目をして慈愛に満ちた顔でアイラ令嬢の心の傷を癒す。胸のもやもやを吸われていくような感じで気持ちと体が軽くなります。

「アイラしばらくは入院でしょ？」
「うん」
「だったら私達が殿下に話を聞いてみるから……ねえみんな」
「そうだね。アイラが殿下のことを心配してるのは分かってる。でも私達はそれ以上にアイラのことが大切なの」
「アイラはまず体調を回復することが一番だよ」
「ありがとう……」

親友の優しい心づかいにまた涙がにじんできて両目から涙がはらはらと流れ心の安らぎに浸る。親友から息が止まるほどギュッと抱きしめてもらい喜びで胸が一杯になった。

強い絆がある親友達には自分の心情を察してくれる深い配慮があり、自分は友人に育まれているんだなとアイラ令嬢は身にしみて思う。

「アイラ泣かないで」
「私達毎日お見舞いに来るからね」
「元気出して。私達はアイラの笑顔が大好きなんだから」

アイラ令嬢はガブリエル殿下のことを3人の親友に任せることにする。ジュリア令嬢にフローレンス令嬢にクラリス令嬢は安心してと告げて病室から退出しようとドアを開けた時です。

「キャーーーーーーーーーー！！」

偶然に先頭にいてドアを開けたクラリス令嬢が驚きに溢れた悲鳴を部屋中に響き渡るほど上げました。

「クラリスどうしたの！」
「なに？」
「え……うそ……」
「みんな大丈夫。何があったの？」

他の令嬢も動揺する。ドアを開けただけでクラリス令嬢が何か恐ろしげなものでも見たような悲鳴を上げたのです。

親友も帰るのでベッドでぐっすり眠りにつこうと思っていたら、突然に耳も破れんばかりに響く悲鳴を聞いたアイラ令嬢も上体を起こして心配で声をかける。

ドアの前にはガブリエル殿下が立っていた。幽霊のように気味悪いくらい青ざめている顔に下半身もみっともなく震えている。

「王太子殿下！」
「ガブリエルがいるの？」

フローレンス令嬢がガブリエル殿下を呼ぶとアイラ令嬢も直ぐに反応して心の中の影が広がっていく。だけど恋人がお見舞いに来てくれて顔に静かな喜びが水のようにあふれる。

（ガブリエル何しにきたのかしら？アイラに余計なことを言いに来たんじゃないでしょうね）

ガブリエル殿下と禁断の恋愛をしている令嬢は冷や汗をかいて胸がドキドキしていた。

「アイラ体は大丈夫？」
「うん……」
「二人で話がしたいんだけどいいかな？」

ガブリエル殿下は婚約者に話しかけて平静を装っていますが、病室の中には自分と不適切な関係を持っている令嬢がいるので不安で胸が弾けそうな気分です。

「ちょっと待ってください！殿下は私達に出て行けとおっしゃるのですか？」
「その通りだ。アイラにだけ話したいことがある」
「納得できません！」
「私達はアイラの親友ですから聞く権利があります！」
「それに殿下の秘密もアイラから先ほど打ち明けられました」
「この浮気者！」
「アイラが可哀想です」
「もう私達の親友を苦しめないで！」

ガブリエル殿下はアイラ令嬢と二人だけにしてほしいと伝えますが令嬢達は厳しく拒否して一歩も譲りません。

容赦なく痛烈な批判を浴びせ息つく暇もなく野次を飛ばし、ガブリエル殿下に自分達は部屋を出るのは反対だと悲鳴に近い抗議をします。

（そうよ。このままガブリエルとアイラを二人だけにしたら大変だわ。ガブリエルに何をしゃべられるかわからない。関係がバレるのは何としてでも阻止しないと……）

一人の令嬢は自分の抱えている深刻さや切迫した状況を理解し、トイレを我慢している時のような焦って落ち着かない気持ちでした。