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第10話

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そんなアイラ令嬢の心情を察したのか付き人のメリッサが口火を切る。

「ガブリエル様、ちょっと前にアイラお嬢様はガブリエル様の通われている稽古場に来訪いたしました。ですが残念ながらガブリエル様はたった今お帰りになられたと言われてアイラお嬢様はとても悲しそうな顔をしておられました」

自分が聞こうと思っていたことをメリッサが伝えてくれて落ち着いたような気持ちになりました。

しかしほんの一瞬だけガブリエル殿下の表情が引きつるのをアイラ令嬢は見逃さなかった。アイラ令嬢はその顔を見て心が乱れる。

「アイラ来てくれたのか?」
「うん、久しぶりに真剣に取り組んで努力しているあなたの顔を見たくなってね」
「その日は予定が会って早く帰ったんだ。せっかく会いに来てくれたのに悪かったな……」
「そうだったんですか……」

ガブリエル殿下は落ち着いた顔で滑らかに話す。だがウィリアム令息が教えてくれたガブリエル殿下は最近はいつも早く切り上げるという腑に落ちない点がある。

ガブリエル殿下にそのことが一番聞きたかったが、アイラ令嬢は勇気がなかった。もし聞いてしまったら全てが壊れてしまいそうな気がしたのです。

「アイラどうした?顔色が悪いけど少し休むか?」
「大丈夫です」
「アイラの体が大切だから無理はしないでくれよ」
「ありがとうガブリエル」

ぬくもりを感じさせるガブリエル殿下の言葉。自分の体調を心配して気にかける気持ちは一点の曇りもないと印象を受ける。

ガブリエル殿下と別れたその夜。

「気になる……」

アイラ令嬢はつぶやく。不安定な自分の気持ちを跡形もなく消え去りたかった。
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