10 / 49
第10話
しおりを挟む
そんなアイラ令嬢の心情を察したのか付き人のメリッサが口火を切る。
「ガブリエル様、ちょっと前にアイラお嬢様はガブリエル様の通われている稽古場に来訪いたしました。ですが残念ながらガブリエル様はたった今お帰りになられたと言われてアイラお嬢様はとても悲しそうな顔をしておられました」
自分が聞こうと思っていたことをメリッサが伝えてくれて落ち着いたような気持ちになりました。
しかしほんの一瞬だけガブリエル殿下の表情が引きつるのをアイラ令嬢は見逃さなかった。アイラ令嬢はその顔を見て心が乱れる。
「アイラ来てくれたのか?」
「うん、久しぶりに真剣に取り組んで努力しているあなたの顔を見たくなってね」
「その日は予定が会って早く帰ったんだ。せっかく会いに来てくれたのに悪かったな……」
「そうだったんですか……」
ガブリエル殿下は落ち着いた顔で滑らかに話す。だがウィリアム令息が教えてくれたガブリエル殿下は最近はいつも早く切り上げるという腑に落ちない点がある。
ガブリエル殿下にそのことが一番聞きたかったが、アイラ令嬢は勇気がなかった。もし聞いてしまったら全てが壊れてしまいそうな気がしたのです。
「アイラどうした?顔色が悪いけど少し休むか?」
「大丈夫です」
「アイラの体が大切だから無理はしないでくれよ」
「ありがとうガブリエル」
ぬくもりを感じさせるガブリエル殿下の言葉。自分の体調を心配して気にかける気持ちは一点の曇りもないと印象を受ける。
ガブリエル殿下と別れたその夜。
「気になる……」
アイラ令嬢はつぶやく。不安定な自分の気持ちを跡形もなく消え去りたかった。
「ガブリエル様、ちょっと前にアイラお嬢様はガブリエル様の通われている稽古場に来訪いたしました。ですが残念ながらガブリエル様はたった今お帰りになられたと言われてアイラお嬢様はとても悲しそうな顔をしておられました」
自分が聞こうと思っていたことをメリッサが伝えてくれて落ち着いたような気持ちになりました。
しかしほんの一瞬だけガブリエル殿下の表情が引きつるのをアイラ令嬢は見逃さなかった。アイラ令嬢はその顔を見て心が乱れる。
「アイラ来てくれたのか?」
「うん、久しぶりに真剣に取り組んで努力しているあなたの顔を見たくなってね」
「その日は予定が会って早く帰ったんだ。せっかく会いに来てくれたのに悪かったな……」
「そうだったんですか……」
ガブリエル殿下は落ち着いた顔で滑らかに話す。だがウィリアム令息が教えてくれたガブリエル殿下は最近はいつも早く切り上げるという腑に落ちない点がある。
ガブリエル殿下にそのことが一番聞きたかったが、アイラ令嬢は勇気がなかった。もし聞いてしまったら全てが壊れてしまいそうな気がしたのです。
「アイラどうした?顔色が悪いけど少し休むか?」
「大丈夫です」
「アイラの体が大切だから無理はしないでくれよ」
「ありがとうガブリエル」
ぬくもりを感じさせるガブリエル殿下の言葉。自分の体調を心配して気にかける気持ちは一点の曇りもないと印象を受ける。
ガブリエル殿下と別れたその夜。
「気になる……」
アイラ令嬢はつぶやく。不安定な自分の気持ちを跡形もなく消え去りたかった。
11
お気に入りに追加
2,360
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
お飾り王妃は愛されたい
神崎葵
恋愛
誰も愛せないはずの男のもとに嫁いだはずなのに、彼は愛を得た。
私とは違う人との間に。
愛されたいと願ったお飾り王妃は自らの人生に終止符を打ち――次の瞬間、嫁ぐ直前で目を覚ました。
「今日から妹も一緒に住む」幼馴染と結婚したら彼の妹もついてきた。妹を溺愛して二人の生活はすれ違い離婚へ。
window
恋愛
「今日から妹のローラも一緒に住むからな」
ミカエルから突然言われてクロエは寝耳に水の話だった。伯爵家令嬢一人娘のクロエは、幼馴染のミカエル男爵家の次男と結婚した。
クロエは二人でいつまでも愛し合って幸福に暮らせると思っていた。だがミカエルの妹ローラの登場で生活が変わっていく。クロエとローラは学園に通っていた時から仲が悪く何かと衝突していた。
住んでいる邸宅はクロエの亡き両親が残してくれたクロエの家で財産。クロエがこの家の主人なのに、入り婿で立場の弱かったミカエルが本性をあらわして、我儘言って好き放題に振舞い始めた。
【完結】美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~
Rohdea
恋愛
───私は美しい姉と間違って求婚されて花嫁となりました。
美しく華やかな姉の影となり、誰からも愛されずに生きて来た伯爵令嬢のルチア。
そんなルチアの元に、社交界でも話題の次期公爵、ユリウスから求婚の手紙が届く。
それは、これまで用意された縁談が全て流れてしまっていた“ルチア”に届いた初めての求婚の手紙だった!
更に相手は超大物!
この機会を逃してなるものかと父親は結婚を即快諾し、あれよあれよとルチアは彼の元に嫁ぐ事に。
しかし……
「……君は誰だ?」
嫁ぎ先で初めて顔を合わせたユリウスに開口一番にそう言われてしまったルチア。
旦那様となったユリウスが結婚相手に望んでいたのは、
実はルチアではなく美しくも華やかな姉……リデルだった───
幼馴染の彼と姉が婚約、姉の浮気で婚約破棄になり妹の私と結婚しました。
window
恋愛
公爵令嬢のグレースは子供だった頃幼馴染のハリー伯爵家令息を好きになった。しかしその恋は実ることなく夢に終わる。
姉のシャーロットとハリーが付き合って婚約したのだ。未だに好きだったグレースはその話を聞かされて火がついたように大声で泣く。
そんな時ハリーが家のリビングで飲んだくれていた。その場にいる母親のローラが申し訳ない顔で優しい言葉をかけていたがハリーは姉と別れると強い口調で言い放っていた。
どうやら姉が浮気したようで婚約もなかったことにしたいらしい。
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
回帰令嬢ローゼリアの楽しい復讐計画 ~拝啓、私の元親友。こまめに悔しがらせつつ、あなたの悪行を暴いてみせます~
星名こころ
恋愛
ルビーノ公爵令嬢ローゼリアは、死に瀕していた。親友であり星獣の契約者であるアンジェラをバルコニーから突き落としたとして断罪され、その場から逃げ去って馬車に轢かれてしまったのだ。
瀕死のローゼリアを見舞ったアンジェラは、笑っていた。「ごめんね、ローズ。私、ずっとあなたが嫌いだったのよ」「あなたがみんなに嫌われるよう、私が仕向けたの。さようならローズ」
そうしてローゼリアは絶望と後悔のうちに人生を終えた――はずだったが。気づけば、ローゼリアは二年生になったばかりの頃に回帰していた。
今回の人生はアンジェラにやられっぱなしになどしない、必ず彼女の悪行を暴いてみせると心に誓うローゼリア。アンジェラをこまめに悔しがらせつつ、前回の生の反省をいかして言動を改めたところ、周囲の見る目も変わってきて……?
婚約者候補リアムの協力を得ながら、徐々にアンジェラを追い詰めていくローゼリア。彼女は復讐を果たすことはできるのか。
※一応復讐が主題ではありますがコメディ寄りです。残虐・凄惨なざまぁはありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる