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第34話
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「お忙しいなか時間を割いていただいて申し訳ございません」
「それで今日は何か?」
改まった声でテリーは尋ねますが、内心かなりドキドキしていました。まさかアリスの不倫相手の奥様が直接訪問して来て、お詫びしたいと報告を受けた時は驚いた。
だが、テリーは強い興味を抱いた。男が大店の主人で結婚していることは調査で知っていたが、男の妻のことは深く調べていなかったので、会ってみたい気持ちは心の底にあった。
「この度は、夫が大変なご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます」
テリーと正面から向き合って謝罪している女性は、アリスと駆け落ちした男の妻。若い頃は美貌を容易に想像できるほどの上品そうなご婦人。
最も国の権力を掌握する王子であるテリーのほうが明らかに立場は上だが、ご婦人の実家も世界有数の事業規模を誇る裕福な商人の家の出である。
「私は気にしていませんよ」
できるだけ平静を装ってテリーは答えた。すると、ご婦人はホっと安心した表情になった。正直なところ、夫はもう助からなくて処刑されるだろうと思っていた。
それも当たり前のことで、テリー王子の妻のアリス妃と関係を持った。挙げ句の果てには家族を捨てて駆け落ちしたのだ。到底許されることではない。
もはや夫のことなど愛してはいませんが、遠い昔に愛して結婚した夫が恐ろしい処罰を受けることになれば心が痛むものです。
「どうしてそんなに心が広いのですか?」
「アリスのことを愛しているからです。今は会えなくて本当に寂しい」
驚くべき忍耐力を備えているなあと思いながら問いかけると、テリーは落ち着いて堂々とした様子で語り始める。アリスに対する愛情は強く、今なお深くなってゆく一方だと言うのです。
反対にご婦人は財産や社会的地位に家族を捨てた夫のことが、どうしても許せなかった。テリー王子も自分と同じ思いだろう。そう考えていたのである。
しかし駆け落ちした妻のアリスのことを許すと迷いなく答えた。許される範囲をとうに超えているでしょう?この男はどこか変かも?そう感じながら細かく頷いていた。
「パパ」
その時、ドアをノックする音がして可愛い声が聞こえる。テリーを呼んだのは、子供たちの中でも一番のおてんばな長女だった。
「入っておいで」
「うん」
テリーは子供を紹介するために部屋に入ってくるように言うと、短く返事してドアを押して現われたのは、夫にそっくりな顔の女の子でした。
「え……?」
夫と似ている?ほとんど生き写しに近い顔じゃないの……。ご婦人は、そう言いたげな面持ちでさすがに驚きを隠せなかった。
「それで今日は何か?」
改まった声でテリーは尋ねますが、内心かなりドキドキしていました。まさかアリスの不倫相手の奥様が直接訪問して来て、お詫びしたいと報告を受けた時は驚いた。
だが、テリーは強い興味を抱いた。男が大店の主人で結婚していることは調査で知っていたが、男の妻のことは深く調べていなかったので、会ってみたい気持ちは心の底にあった。
「この度は、夫が大変なご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます」
テリーと正面から向き合って謝罪している女性は、アリスと駆け落ちした男の妻。若い頃は美貌を容易に想像できるほどの上品そうなご婦人。
最も国の権力を掌握する王子であるテリーのほうが明らかに立場は上だが、ご婦人の実家も世界有数の事業規模を誇る裕福な商人の家の出である。
「私は気にしていませんよ」
できるだけ平静を装ってテリーは答えた。すると、ご婦人はホっと安心した表情になった。正直なところ、夫はもう助からなくて処刑されるだろうと思っていた。
それも当たり前のことで、テリー王子の妻のアリス妃と関係を持った。挙げ句の果てには家族を捨てて駆け落ちしたのだ。到底許されることではない。
もはや夫のことなど愛してはいませんが、遠い昔に愛して結婚した夫が恐ろしい処罰を受けることになれば心が痛むものです。
「どうしてそんなに心が広いのですか?」
「アリスのことを愛しているからです。今は会えなくて本当に寂しい」
驚くべき忍耐力を備えているなあと思いながら問いかけると、テリーは落ち着いて堂々とした様子で語り始める。アリスに対する愛情は強く、今なお深くなってゆく一方だと言うのです。
反対にご婦人は財産や社会的地位に家族を捨てた夫のことが、どうしても許せなかった。テリー王子も自分と同じ思いだろう。そう考えていたのである。
しかし駆け落ちした妻のアリスのことを許すと迷いなく答えた。許される範囲をとうに超えているでしょう?この男はどこか変かも?そう感じながら細かく頷いていた。
「パパ」
その時、ドアをノックする音がして可愛い声が聞こえる。テリーを呼んだのは、子供たちの中でも一番のおてんばな長女だった。
「入っておいで」
「うん」
テリーは子供を紹介するために部屋に入ってくるように言うと、短く返事してドアを押して現われたのは、夫にそっくりな顔の女の子でした。
「え……?」
夫と似ている?ほとんど生き写しに近い顔じゃないの……。ご婦人は、そう言いたげな面持ちでさすがに驚きを隠せなかった。
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