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第16話

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「今日は大事な話しがあるの」
「なに?」
「私妊娠したかも……」
「は?」

ある日、二人でいた時に妙に改まった雰囲気になり、不意打ちのようにアリスから妊娠してることを打ち明けられた。思わずテリーの間抜けな低い声が部屋の中に響く。

「体調がおかしくて、予定日になってもあの日がなくて診てもらったら……」

最近アリスは体の具合が悪くなることが増えた。最初は疲れにより体調を崩していたと思っていたが、診察してもらったら身籠っているとわかった。度重なる体の異変は、妊娠初期に起こる吐き気だと医者から教えられる。

「本当に?」
「テリーは喜んでくれないの?私とテリーの赤ちゃんなんだよ」

本当にアリスは新しい命が宿っているのだろう。だが、テリーは素朴な疑問が脳裏に湧いて、胸に抱いた思いを口にした。

当たり前だが、アリスは不機嫌そうに顔をしかめる。何でそんなことを言うのかとテリーに対して、怒りに燃えて詰め寄ってきた。

「でもアリスは僕に全く触れさせてくれないじゃないか」

テリーがそう思うのもごく自然なことであった。なぜならばアリスに厳しくしつけられ、テリーのほうから手を握ることさえ許されなかったのだ。

そう反論されるのは予想していたが、面と向かうと言葉がすぐには出てこない。明らかにアリスの表情には気まずさが漂い、落ち着きを失った様子で目が泳いでいる。

「……でも月に一度はしてるし……」
「正直に言わせてもらうけど、遊び相手の男の子供じゃないのか?君には彼氏がたくさんいるだろう?僕の知ってるだけでも7人はいるよ」

二人はしばらく無言のまま、アリスはうなだれて口を開いた。目の前にいるテリーにも聞き取れないほど小さ過ぎる声で、説明するように言い訳めいたことを発した。

ところがテリーは即座に確信したように追及するのです。実際にテリーが目撃したことがあるアリスの彼氏はかなり多い。アリスと男が抱き合ってキスしてるのを何度も見たことがある。

アリスの趣味なのか?不明だが、その様子を見ていろと命令されたこともある。テリーは悔しい気持ちに耐えながら、獣のうめき声のような泣き声を上げて体を震わせながら見ていた。

「何言ってるの?遊びの男にはちゃんと気をつけて対策してるわ!」
「そ、そうなの?」
「失礼なこと言わないでよ!謝って!」
「ごめん……」

アリスには様々な交際相手がいる。テリーもやむを得ず浮気を大目に見るほどの譲歩をした。フローラを裏切った自分の罰で運命だと思って諦めていた。

完全に逆ギレに近い態度のアリスは、何とかテリーを退けることに成功する。実のところ、アリスのお腹の子供の父親は、アリスと親密そうに寄り添い宝石店にいた荒っぽく下品な言葉遣いの男でした。
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