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第7話

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「好きです。最初に見た時から好意を抱いていました。付き合ってください!」

まだフローラと婚約していた時、テリーとアリスは打てば響くような楽しい会話のやり取りをしていた。すると急に改まって真っすぐな視線を向けられて告白された。

「でも僕はフローラと結婚を誓ってるんだよ?」
「そんなことは関係ありません!」

押しの強い声とアリスの一点の曇りもない瞳に心が揺さぶられたテリーは、迷いながらも了承してフローラに秘密でアリスとの交際が始まる。

恐るべきアリスの隠された本性を知らないテリーは、自ら地獄の入口に足を踏み入れて行く。今はその時の自分を殴ってでも全力で引き止めたいと思う。

テリーはフローラとのデートによくアリスを呼んでいた。そのことに、不満があったフローラは行き場を失った苛立ちが口から出て、テリーと言い争いとなった。その挙げ句に呆れたフローラに距離を置かれる。

だが、アリスと一緒にいられて笑顔を見れるだけで、充実した生活を送っているとテリーは感じられた。その頃は喧嘩しているフローラよりも、アリスのほうに心が傾いていた。

「今思うと僕の頭は狂っていたと思う」

深刻さと切迫感ある状況に追い込まれたテリーは、部屋の中でぼんやりと自分がした過去の過ちを大いに反省していた。

目鼻の整った顔立ちで身長が高かったテリーは、フローラと婚約していても毎日のように学園中の女子生徒から、好きだという気持ちを告げられた。

「君の気持ちは嬉しい。でも僕はフローラを愛しているんだ」
「フローラ様はテリー様にそんなに思われて幸せですね。正直に言うとフローラ様が羨ましいです」
「君の気持ちに答えることができなくてすまない。でも君は素敵な女性だから僕は君の新しい恋を応援しているよ」

しかしながら、テリーはフローラへの愛の証明に、いくら女子生徒から恋心を告白されても全て断っていた。告白した女子生徒も晴れやかな顔で納得して頷く。

表面では心清く正しい清廉潔白な男性だと思われ、女子生徒からの評判はとどまるところを知らず、別の学園の生徒までが門の外のあぜ道に集まるほどだった。

陰ではアリスと二股をしてるというのに……だがテリーの胸中ではアリスは特別な存在になっていた。


「フローラ幸せにするからね」
「はい」

アリスとの交際を続けながら、お互いの両親とも話し合い学園の卒業を持ってフローラと結婚の約束をした。きっと取り返しのつかない状況になる。

テリーは自分が理性的な判断のできる人間だと常々思っていた。でもアリスを目の前にすると、強烈な欲求に駆られて気持ちを抑えられない。

アリスには理性を失わせる魅力があった。屈托がなさ過ぎる笑顔を向けられ怪しいフェロモンを漂わせて、テリーは身も心もとろけてアリスに捧げていた。
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