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「僕とアニーの関係はどの程度マライアに知られているのかな?」
「ドレスを借りに行った以前にお兄様とアニーの関係を掴んでいたのでしょう」
「そうだと思う。でなければ叩き出すなんて普通はしませんよね」

漏らしてしまい大急ぎで着替えてきたシャールが話しに加わり、真剣な目つきで言う。戻ってきた時は赤恥をかいたので照れ笑いをしていた。

前からシャールとアニーの関係を察知していたに違いない。そうでなければいくら何でも放り出すのはやり過ぎだ。家族になって、これから先何十年間密接な関係が決定している婚約者と妹にあの態度はない。

「マライアは最初から僕との婚約は取り消すつもりかな?」
「その考えが自然だと思います」

シャールは脳裏に稲妻が走る。マライアは婚約解消を受け入れているから、あのような過激な態度で接してきたのだと漠然と理解する。アニーも彼の言葉に納得したようだった。

「だから言ったじゃないか!あのドレスはマライアの宝物だって……仮に貸してもらっても返す気もなかったんだろう?」
「当たり前ですわ。だってあのドレス一目見た瞬間に私の物にしたくて……欲しかったの!」
「はぁ……ミュエル、お前って奴は……」

怒りと苛立ちを含んだ声のシャールはミュエルをギロリと睨んで責める。恋人があのドレスをかけがえのない宝物だったことは教えてもらったことがあった。

呆れたことにミュエルは最初から、ドレスを借りても返す気は更々なかったと打ち明ける。いい加減に兄も我が妹ながら、どうにも腹が立ってやり切れない気持ちになる。

いや、とっくの昔にアニーと浮気しているので、裏切っているから顔向けができない立場なのは変わりない。それもマライアに勘付かれていた。

「僕は最低だな……彼女を辛い気持ちにさせて傷つけてしまった。自分が情けないよ」

それでもドレスのことに関してはシャールは心苦しく思う。何故なら自分がミュエルの我がままな頼みごとを承諾して、婚約者の彼女に甘えて妹にドレスを貸してあげてほしいと繰り返しお願いした。

なんて自分は恥ずべき男なのだと、彼女が大切にしてる物を軽々しく貸してと言い続けて、彼女がどれほど胸を痛めていたか。今になって分かった完膚なきまでの愚かさ。

結局のところ、妹の性格を見抜いていた彼女は賢くて貸さなかったけど、気分次第で貸していたのかもしれない。その時は何か理由を付けて妹が簡単に返すわけがないのだから、二度と大事なドレスは彼女の手には戻ってこなかったのだ。

自己反省をせざるを得なくなってきたシャールは失禁したことも忘れて、小声で呟きながらマライアに胸の中で、平身低頭ひたすら謝るばかりだった。
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