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最初はシャールも呆れてミュエルと話し合って説教したらしいけど、結局は妹に甘くて恋人のマライアにドレスを貸してくれるようにお願いしてみると答える。ミュエルも調子に乗って『それなら以前着ていたあの彩りも鮮やかなドレスがいい』と注文まで付ける厚かましい態度。

「そんなことは私に関係ないでしょ?」
「そこを何とか……頼めるのはマライアしかいないんだよ。一日貸すだけだから」

母から譲り受けたマライアが一番気に入っていて大切にしているドレス。それを正直に言うと嫌いな彼の妹のミュエル貸したくないのは当然の気持ち。その日は、愛している彼からのお願いでも断固拒否した。


数日後、シャールとミュエルが来訪した。何故か関係のない彼の幼馴染のアニーと取り巻きの令嬢達も連れてきている。この来訪者は立場をわきまえないでマライアのことを悪者にするのです。

「お兄様から聞いたと思うけどドレス貸してね?」 
「その話なら断らせてもらいます」

ミュエルは挨拶もなく会った瞬間に、いきなりドレスを貸してと言ってくる。相変わらず礼儀知らずな人だと呆れます。マライアはこんな子に大事なドレスを貸すなんてとんでもないと改めて思う。

仮に貸してしまったら、兄を奪われマライアのことを悪魔のように憎んでいるので、ドレスは汚され擦り切れて返されるのは容易に想像がつく。それどころか返してさえもらえなくてそのまま取られちゃうかも?

ミュエルの性格を知っているマライアは不安しかない。それに、今助けたら甘やかされて育ったミュエルの金遣いの荒さは決して直らないだろう。

マライアにとっての唯一の気がかりは、シャールと婚約しているので、ミュエルとの付き合いはこれから先何十年もあるし、その都度頼まれて自分の宝物をミュエルの所有物にされるのは断じて許容できない。今のうちに手を打っておく必要がある。

だが先日、彼は幼馴染と浮気してることが分かったので、別れることになるだろうから、こちらが愛想よく笑いかけながら応じる必要もなくなった。

「どうして?お兄様から理由を聞いているでしょう?私が親からお仕置きされてもいいの?」
「あなたの自業自得ですから私には関係ございません」
「は?」

今ここでマライアが変な親切心をだして取り繕ってもいい結果にはならない。逆にミュエルがみっともない姿をさらしても心を入れ替えるいい機会だと思う。

パーティで『素敵なドレスね』『私にも今度回して』なんて言われたらミュエルはどんな返事をするのか?そんなことも気になる。返してと催促しても友人に貸したとか言い訳されて、挙げ句のはてにドレスは自分の物だと言い出すのは火を見るより明らかだ。
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