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第5話 恥をかかされた女王様

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「なんだ?」
「何かあったのか?」
「あの二人は卒業したら結婚するらしい」
「おおおーっ!!」
「それは祝うべきことだな」

いつの間にか周りに大勢の生徒たちが集まっていた。思いのほかロナウドが大きな声を出して言ったらしく、食堂から昼ご飯を終えて戻ってきた生徒たちが立ち止まって好奇心に輝いた瞳で芝居でも見物するように見ていた。ソフィアとロナウドが結婚すると聞いて盛大な歓声と拍手が湧き上がる。

生徒が群れをなして声が入り交じり廊下がこれほどにぎわっていることに、ソフィアもロナウドもアイリーンとアイリーンの取り巻きたちも今まで気付かなかったので周りを見て予想外の事態に驚いていた。

周囲の生徒たちが興奮もあらわな笑顔で沸き立っているので、解散したいという願望を持つのが普通だろう。現にアイリーンの取り巻きたちは気まずそうに顔を見合わせたり目線を下に落としている。だが自分たちの支配的な立場にいるアイリーンは腹の虫がおさまらなかったようだ。

「結婚するなんて聞いてないわ!」
「それは皆に秘密にしていただけだけど?」
「恋人関係までは大目に見てきたけど結婚なんて許しません!」

アイリーンはソフィアとロナウドが親しく交際していることは知っていた。ただし学園を卒業したら二人は結婚するという話は寝耳に水の情報であった。結婚の事実は秘密にしようと両家の間で約束が取り交わされていただけのこと。こうしたことはそれほど珍しいことではない。

アイリーンは癇癪かんしゃくを起こし大声をあげてロナウドに結婚は許さないと怒鳴りつけた。結婚することを表立って公表することを控えただけなのに、何でそんなにアイリーンは目くじら立てて文句をいうのか?

「はぁー、何が許さないのか分からないな?アイリーン僕に振られたからってソフィアに八つ当たりをするのはやめてくれないか」
「うっ、うるさいっ!ロナウドは絶対に私のものにしてやるんだからっ」
「何度も断っただろう?僕はソフィアと結婚するんだ!」

ロナウドは参ったなといった感じでため息をついて、ソフィアの知らなかった意外な事実を語りはじめた。以前からアイリーンはロナウドに言い寄って何度も振られていた。ソフィアと別れて自分と付き合おうと少々強引な手段で迫ったこともあった。

ですがロナウドはソフィアを心から愛していたので、アイリーンの甘い誘いを確固たる意志ではねのけていました。ソフィアは嬉しくなりましたが話してくれなかったことに、悲しくて泣きたいような気になって立っていた。

大勢の生徒の前で恥をかかされたと感じた女王様は、身の縮む思いで顔を真っ赤にしてロナウドを睨みながら唇を噛み締めている。
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