聖女に王子と幼馴染をとられて婚約破棄「犯人は追放！」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で価値の高い女性だった。

第64話

カップルと思われた客は男性がナンパして女性を食事に連れてきていた。結局最後は男性が支払うことで決着はついた。女性をナンパしておいて食事すら奢らないのか。もはや呆れるほかない。本当に女性からしたら迷惑この上ない話である。

「――彼とはいつも割り勘で何となく大事にされてない気がします」

そしてその日の夜、仕事を終えてスタッフルームで互いの労をねぎらって、みんなでだらだらと雑談をしていた時に口を滑らすように言った。

精霊のレストランでホールリーダーを務めるボーイッシュな感じの細身の女性のニーナだった。どこか悲しそうな顔をして呟いた。二十代半ばのニーナは少し年上の彼と付き合っていた。だけどデートで食事をした時にいつも割り勘だという。ニーナは自分は彼に大切にされていないのかなと悩んでいた。

「ニーナ本当なの？」
「はい、彼とは付き合って半年なんですがずっと割り勘なんです」
「ちょっと考えられないわね」

セリーヌは心配そうな顔で言った。あり得ないことが世の中にはままあるが、付き合っている恋人と食事が割り勘なんてセリーヌには考えられなかった。もちろん男性が払うのが当然だと思っている。

ニーナは付き合い始めて半年だという。何回かデートを繰り返してきたというが、全て割り勘だったというのだ。なんとも器の小さいセコい男ではないかとセリーヌは自然とそう感じた。

「今まで付き合った人は普通にご馳走してくれたから今の彼はおかしいかな？って思って……」
「絶対おかしいよ！」

ニーナはこれまで親しく交際していた相手には、食事を支払ってもらっていたという。それが普通だと思っていたので今の彼には大切にされてないような気がしていた。ニーナの話を聞いた同僚たちも絶対におかしいと口を揃えて叫ぶ。

「都合のいい女にされているんじゃないの？」
「そうなのかな？」
「たぶんね」
「あ！そう言えば……」

探るような視線で言う同僚たちの言葉でニーナには思い当たることがあった。彼は食事代を割り勘にするくせに、事あるごとに会いたいと言ってくる。仕事終わりで疲れているのに週に数回は家に来て食事を作りに来てくれと頼んでいるのだ。彼はニーナが食材調達してきた食費も払ってないらしい。

食事が終わると当然のように体の関係も求められる。ニーナの話を聞いてセリーヌと同僚たちは、何という厚かましい男なのかという思いでニーナが哀れというのもあるし、それ以上にニーナのろくでもない彼に苛立ちを覚えた。

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