46 / 65
第46話
しおりを挟む
「――ここは?」
フレッドは目を覚ますと光が目に入ってきた。上体を起こしながらちらりと周囲を確認すると見慣れた光景が目に飛び込んできた。
「フレッド大丈夫か」
簡素な作りのベッドに進み寄って声をかけたのはアランだった。崩れかけた建物の廃墟のような場所がヴァレンティノ王国のフレッド・ユーステルム王太子殿下の現在の住処となっている。
後悔先に立たずという思いで、あの日セリーヌに一方的に婚約破棄を強行し、セリーヌと決別してからフレッドの人生は急降下の勢いを維持し続けて最終的に国が崩壊した。言い渡されたセリーヌは悲しみ嘆き国を去った。だが彼女は他の国に定住地をいくつも持っていたので何不自由ない暮らしを送っていた。
「セリーヌ!?アラン、セリーヌはどうしたんだ!」
はっと気がついて慌てて声を上げた。フレッドはセリーヌと出会って抱きしめたくなり駆け寄ったら何かに弾き飛ばされて、そこから記憶がうすれて意識を失ってしまった。
やっとセリーヌに会えたのにどうして自分はこんな状態になっているのか?と不思議な気さえする。
「フレッド落ち着け!セリーヌなら今は別の部屋で怪我人の面倒をみている」
「それなら私もすぐにセリーヌのところに連れてってくれ」
ベッドから下りて二歩、三歩と進むとフレッドはうずくまって胸に手を当てた。アランは強い口調でフレッドに言い聞かせる。セリーヌは病人たちの体の傷を癒やし世話をしていると話した。
フレッドはセリーヌがいると分かっているのに、じっと辛抱して待っていることはできなかった。セリーヌに一刻も早く会いたいという気持ちが抑えられなくなり、アランに肩を貸してほしいと頼んだ。話したいこと謝りたいことは山ほどある。
「そんなに焦って行動したら先ほどみたいになるぞ?」
「それが聞きたかった。アランさっき何が起こってどうして私がこんな目に?」
アランはやれやれという表情でフレッドを憐れむように見て言う。するとフレッドはふと気付いて疑問を投げ掛けた。
「セリーヌは魔法で危険な人物から見を守っているらしい。俺もセリーヌに会って嬉しくて抱きつこうとしたら同じ目に遭った。フレッドと比べて倒れて気絶することはなかったけどな」
「どういう事だ?セリーヌに私達が変質者と思われたということか?」
セリーヌは色々な危害に備えて防御魔法を展開していた。最初にセリーヌと会って自分も同じ事になったとアランは笑い顔を見せて話した。ところがフレッドのほうはセリーヌに異常者と判断されたことに納得ができなかったらしく不満を口にした。
*****
新作「結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。」を投稿しました。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
フレッドは目を覚ますと光が目に入ってきた。上体を起こしながらちらりと周囲を確認すると見慣れた光景が目に飛び込んできた。
「フレッド大丈夫か」
簡素な作りのベッドに進み寄って声をかけたのはアランだった。崩れかけた建物の廃墟のような場所がヴァレンティノ王国のフレッド・ユーステルム王太子殿下の現在の住処となっている。
後悔先に立たずという思いで、あの日セリーヌに一方的に婚約破棄を強行し、セリーヌと決別してからフレッドの人生は急降下の勢いを維持し続けて最終的に国が崩壊した。言い渡されたセリーヌは悲しみ嘆き国を去った。だが彼女は他の国に定住地をいくつも持っていたので何不自由ない暮らしを送っていた。
「セリーヌ!?アラン、セリーヌはどうしたんだ!」
はっと気がついて慌てて声を上げた。フレッドはセリーヌと出会って抱きしめたくなり駆け寄ったら何かに弾き飛ばされて、そこから記憶がうすれて意識を失ってしまった。
やっとセリーヌに会えたのにどうして自分はこんな状態になっているのか?と不思議な気さえする。
「フレッド落ち着け!セリーヌなら今は別の部屋で怪我人の面倒をみている」
「それなら私もすぐにセリーヌのところに連れてってくれ」
ベッドから下りて二歩、三歩と進むとフレッドはうずくまって胸に手を当てた。アランは強い口調でフレッドに言い聞かせる。セリーヌは病人たちの体の傷を癒やし世話をしていると話した。
フレッドはセリーヌがいると分かっているのに、じっと辛抱して待っていることはできなかった。セリーヌに一刻も早く会いたいという気持ちが抑えられなくなり、アランに肩を貸してほしいと頼んだ。話したいこと謝りたいことは山ほどある。
「そんなに焦って行動したら先ほどみたいになるぞ?」
「それが聞きたかった。アランさっき何が起こってどうして私がこんな目に?」
アランはやれやれという表情でフレッドを憐れむように見て言う。するとフレッドはふと気付いて疑問を投げ掛けた。
「セリーヌは魔法で危険な人物から見を守っているらしい。俺もセリーヌに会って嬉しくて抱きつこうとしたら同じ目に遭った。フレッドと比べて倒れて気絶することはなかったけどな」
「どういう事だ?セリーヌに私達が変質者と思われたということか?」
セリーヌは色々な危害に備えて防御魔法を展開していた。最初にセリーヌと会って自分も同じ事になったとアランは笑い顔を見せて話した。ところがフレッドのほうはセリーヌに異常者と判断されたことに納得ができなかったらしく不満を口にした。
*****
新作「結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。」を投稿しました。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
8
お気に入りに追加
3,251
あなたにおすすめの小説
実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~
juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。
しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。
彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。
知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。
新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。
新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。
そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。
婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います
かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。
現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。
一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。
【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。
癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。
レイナの目標は自立する事なのだが……。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜
超高校級の小説家
恋愛
マトリカリア伯爵家は代々アドニス王国軍の衛生兵団長を務める治癒魔法の名門です。
神々に祝福されているマトリカリア家では長女として胸元に十字の聖痕を持った娘が必ず生まれます。
その娘が使う強力な治癒魔法の力で衛生兵をまとめ上げ王国に重用されてきました。
そのため、家督はその長女が代々受け継ぎ、魔力容量の多い男性を婿として迎えています。
しかし、今代のマトリカリア伯爵令嬢フリージアは聖痕を持って生まれたにも関わらず治癒魔法を使えません。
それでも両親に愛されて幸せに暮らしていました。
衛生兵団長を務めていた母カトレアが急に亡くなるまでは。
フリージアの父マトリカリア伯爵は、治癒魔法に関してマトリカリア伯爵家に次ぐ名門のハイドランジア侯爵家の未亡人アザレアを後妻として迎えました。
アザレアには女の連れ子がいました。連れ子のガーベラは聖痕こそありませんが治癒魔法の素質があり、治癒魔法を使えないフリージアは次第に肩身の狭い思いをすることになりました。
アザレアもガーベラも治癒魔法を使えないフリージアを見下して、まるで使用人のように扱います。
そしてガーベラが王国軍の衛生兵団入団試験に合格し王宮に勤め始めたのをきっかけに、父のマトリカリア伯爵すらフリージアを疎ましく思い始め、アザレアに言われるがままガーベラに家督を継がせたいと考えるようになります。
治癒魔法こそ使えませんが、正式には未だにマトリカリア家の家督はフリージアにあるため、身の危険を感じたフリージアは家を出ることを決意しました。
しかし、本人すら知らないだけでフリージアにはマトリカリアの当主に相応しい力が眠っているのです。
※最初は胸糞悪いと思いますが、ざまぁは早めに終わらせるのでお付き合いいただけると幸いです。
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!
リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。
聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。
「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」
裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。
「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」
あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった!
、、、ただし責任は取っていただきますわよ?
◆◇◆◇◆◇
誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。
100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。
更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。
また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。
更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる