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第14話

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「アルス!」

目を輝かせて詰め寄ってきたエリーゼはそのまま彼に飛びついて二人は強く抱きしめ合いました。

あなたは深刻な病気じゃないの?そんなに全力で走って大丈夫なの?ウェンディはひっかかりを感じる顔になって幼馴染の行動を疑問に思う。

「エリーゼ嬉しいのは分かったから落ち着いてくれ」
「ごめんなさい」
「はしゃぎ過ぎだよ。エリーゼは病気なんだから」
「アルスの顔を見たら気持ちを抑えられないくて体が勝手に動いて……」

彼は自分の胸にもの凄い勢いで飛び込んできたエリーゼを慈愛に満ち溢れる笑顔でなだめ、丁寧な手つきエリーゼの頭や体を撫でる。

エリーゼはとても気持ち良さそうに、うっとりした幸せな顔をしていたのがウェンディの印象に強く残りました。

「エリーゼに紹介するよ。僕の婚約者のウェンディだ。と言ってもこの前会ったから知ってるよね」
「少し前にお見舞いに来てくれてたまらなく嬉しかったわ!」
「エリーゼ様お元気そうで何よりです……」

彼が紹介してウェンディはあいさつを交わす。彼は婚約者だと紹介したが、今は仲直りして再び付き合ってるけど婚約者ではないと心情で否定していた。

エリーゼはこの間ウェンディが一人でお見舞いに来訪してくれたことを無邪気な笑顔で息を弾ませ喜びが爆発するように話す。

えっ!?この人なに言ってるんだろう?あんなに険悪な雰囲気になったのに?この人ちょっと怖い……とウェンディは本能的に察知する。

「エリーゼはそんなに嬉しかったのか」
「はいとっても!ウェンディ様とは身内のようなお友達になれそうです」
「それはいいね」
「ねぇウェンディ様!」
「そ、そうでしょうか?」

彼との会話でエリーゼはウェンディの背筋が寒くなることを満面の笑顔で答えます。

急に話を振られたウェンディは焦ってしまい声が裏返り言葉がつっかえる。驚いてパッと切り返せなくてうまく対応できませんでした。

「それならエリーゼに一つだけ僕から言いたいことがある」
「アルスなにかしら?」

彼は何か直感で考えが浮かびエリーゼは胸をときめかせながら問いかける。

「家族同様の関係ならウェンディ様と呼ぶのは堅苦しい」
「確かにその通りね!」
「互いにウェンディ、エリーゼと呼び合えばいいじゃないか」
「私は全然構わないけど……」
「ウェンディもエリーゼと同じ気持ちだから問題ないよ。僕は彼女の気持ちをいつでも理解できて感じ取れるからね」

彼はやはり頭に異常が見られる……頭の中を精密検査してもらわないといけませんね。

ウェンディの正直な気持ちは友達でもない人に、馴れ馴れしく名前を呼ばれたくない。彼女の気持ちを全く汲みとることができない情けない彼です。

頭が弱い彼がとんでもない事を言い出してしまい、幼馴染との関係がウェンディの思いと裏腹に親密になる。
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