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アザレアのゆらぎ。
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「え・・・?私を知ってるんですか?」
見たことのない姿に上から下まで何度も視線を移すけど記憶の中にはいない。
女の子が騎士団の服を着ていたのなら絶対覚えてると思うのに、記憶のどこにもいないのだ。
「あ、マオがお熱出してるときにお家に行ったから覚えてないのかもしれないー。」
「熱?・・・あ、もしかしてあの時に・・・?」
カーマインさんたちに看病をされたことがあったことを思い出した私。
その時確かに誰かがいたような気が・・・しなくもなかった。
「私は『アザレア』。よろしくね?」
「よ・・よろしくお願いします・・・。」
かわいらしい笑顔を見ながら頭を下げた私だったけど、何か違和感を感じていた。
彼女の所作に引っかかる部分があったのだ。
(なんか・・無駄に『女の子感』を出してるような・・・)
まるで『自分を女の子として見て!』みたいな動きが気になり、私は視線を彼女の喉元に移した。
すると喉ぼとけが見えたのだ。
手の甲を見るとごつごつとしていて、その骨格から『男性』だと推測できる。
この人は・・・女の人のふりをした男の人なのだ。
(でもどうして女の人のふりをするんだろう・・・。)
ロングヘアーが似合ってる彼女(?)だったけど、ショートヘアも似合いそうに見えた。
少し小柄な気はするけど私より背も高く、体つきも・・・
「どうしたの?マオ。」
じっと見てるとアザレアさんは私を覗き込むようにして声をかけてきた。
「あ・・・どうして女の人のフリしてるのかなーと思って・・・」
そう聞くと彼女は驚いた顔を見せた。
そして少し悩んだあと、ごつごつした手で自分の前髪をかき上げたのだ。
「・・・どうしてわかったんだ?」
(わ・・・!声が変わった・・・!)
急に低い声に変わったアザレアさんに驚いてると、彼はガシガシと後ろ手に頭を掻いていた。
「オレが男だってこと、初対面で見抜いた奴はいないんだがな・・・。」
「えーと・・男の人の特徴があったので・・・?それで男の人かなーと・・・」
喉ぼとけや骨張った手のことを説明すると、アザレアさんは自分の手をじっと見つめたあと、豪快に笑い始めた。
「ははっ・・!こんなとこを見られていたのか!」
「まぁ・・あとは妙に女の子っぽく振舞おうとしてるところが気になって・・・ですかね。」
「あー・・わざとらしかったってことか。気を付ける。」
(注意点を伝えたわけではないんだけど・・・)
よくわからない状況だ。
「あ、オレ、基本的には女の方でいるからマオもそのつもりでいてくれるか?」
「それは大丈夫ですけど・・・。」
「じゃあ一緒にお城に帰ろっ?マーオ?」
「---っ!かわいい声に変わりましたね・・・。行きましょうか。」
傍から見たら女の子同士で歩き始める。
アザレアさんは歩きながら二役をしてる理由を話してくれた。
なんでも仕事で必要なことらしく、使い分けてるのだとか。
「オレはみんなみたいに体が大きくないからさ、力じゃ敵わないんだよ。だから別の道を見つけたってわけ。」
「なるほど・・・。」
「ま、陰謀とかあったら潜入して調べたりするのに結構便利なんだ。だから他言無用な。」
人差し指を自分の口にあて、シーっと言うアザレアさんは少年のような顔で笑っていた。
その表情は心からのもののようで、こっちも自然と笑みがこぼれてしまう。
「ふふっ。」
「・・・で?マオが『召喚されるべき者』だったんだろ?ライラックが調べ上げてた。」
「あー・・・そうみたいなんですけど・・・どうしたらいいんですかね。」
とりあえずお城に戻って議論されるみたいだけど、このままだったら私は聖女として仕事をすることになってしまう。
そして今まで聖女だと名乗っていた今川先生がどうなってしまうのかが気になるところだ。
「ま、キララは監禁処分だな。嘘だったわけだし。」
「監禁・・・」
「マオはしばらく城だろうな。とりあえずいろんなところに行って務めをするんじゃないか?」
「そう・・ですよね・・・」
ケルセンの町に戻れるようになるのはだいぶ先になりそうだと思ったとき、ふとアザレアさんの手首にある腕輪が目に入った。
「この腕輪・・カーマインさんたちもしてましたよね?騎士団の何かなんですか?」
3人とも同じものをしていた記憶がある。
それどころかマローさんや、さっきのもう一人の王子さま、それにその取り巻きの人たちも同じ腕輪をしていたのだ。
「あぁ、これか?これは誰とも婚姻してない証だな。」
「へぇー、婚姻してない証・・・・え!?」
「なんだ?知らなかったのか?」
「知らないも何も・・・私のいた世界にはそんな風習なかったんで・・・」
「あ、そうか。なら教えてやるよ。」
アザレアさんは腕輪のことを説明し始めた。
成人と呼べる年になったときにこの二個セットの腕輪をつけることが義務化されてるらしく、男の人たちは皆つけるのだとか。
そして一生一緒にいたいと思える相手と出会ったとき、二個のうちの一つを相手に贈り、夫婦となるらしい。
だから腕に一つの腕輪しかしてない男の人は、既婚者ということになるのだ。
「へぇー!」
「『へぇー!』って・・・マオの世界は違ったのか?」
「私の世界は指輪ですね。お揃いの指輪を左の薬指に通すことで夫婦の証明になるんですけど・・・基本的には国に書類を提出して夫婦であることを認めてもらうので、指輪はしない人もいますし。」
「指かー。指は俺たち力を使うからなかなか難しいな。」
「あー・・そういうこともあって腕輪なんですね。」
「そゆこと。ま、オレは二つつけてると男ってバレるから一つだけだけどなー。」
まだまだ知らないことがたくさんあるこの世界。
また一つ新しいことを知ったとき、私たちはお城に足を踏み入れたのだった。
見たことのない姿に上から下まで何度も視線を移すけど記憶の中にはいない。
女の子が騎士団の服を着ていたのなら絶対覚えてると思うのに、記憶のどこにもいないのだ。
「あ、マオがお熱出してるときにお家に行ったから覚えてないのかもしれないー。」
「熱?・・・あ、もしかしてあの時に・・・?」
カーマインさんたちに看病をされたことがあったことを思い出した私。
その時確かに誰かがいたような気が・・・しなくもなかった。
「私は『アザレア』。よろしくね?」
「よ・・よろしくお願いします・・・。」
かわいらしい笑顔を見ながら頭を下げた私だったけど、何か違和感を感じていた。
彼女の所作に引っかかる部分があったのだ。
(なんか・・無駄に『女の子感』を出してるような・・・)
まるで『自分を女の子として見て!』みたいな動きが気になり、私は視線を彼女の喉元に移した。
すると喉ぼとけが見えたのだ。
手の甲を見るとごつごつとしていて、その骨格から『男性』だと推測できる。
この人は・・・女の人のふりをした男の人なのだ。
(でもどうして女の人のふりをするんだろう・・・。)
ロングヘアーが似合ってる彼女(?)だったけど、ショートヘアも似合いそうに見えた。
少し小柄な気はするけど私より背も高く、体つきも・・・
「どうしたの?マオ。」
じっと見てるとアザレアさんは私を覗き込むようにして声をかけてきた。
「あ・・・どうして女の人のフリしてるのかなーと思って・・・」
そう聞くと彼女は驚いた顔を見せた。
そして少し悩んだあと、ごつごつした手で自分の前髪をかき上げたのだ。
「・・・どうしてわかったんだ?」
(わ・・・!声が変わった・・・!)
急に低い声に変わったアザレアさんに驚いてると、彼はガシガシと後ろ手に頭を掻いていた。
「オレが男だってこと、初対面で見抜いた奴はいないんだがな・・・。」
「えーと・・男の人の特徴があったので・・・?それで男の人かなーと・・・」
喉ぼとけや骨張った手のことを説明すると、アザレアさんは自分の手をじっと見つめたあと、豪快に笑い始めた。
「ははっ・・!こんなとこを見られていたのか!」
「まぁ・・あとは妙に女の子っぽく振舞おうとしてるところが気になって・・・ですかね。」
「あー・・わざとらしかったってことか。気を付ける。」
(注意点を伝えたわけではないんだけど・・・)
よくわからない状況だ。
「あ、オレ、基本的には女の方でいるからマオもそのつもりでいてくれるか?」
「それは大丈夫ですけど・・・。」
「じゃあ一緒にお城に帰ろっ?マーオ?」
「---っ!かわいい声に変わりましたね・・・。行きましょうか。」
傍から見たら女の子同士で歩き始める。
アザレアさんは歩きながら二役をしてる理由を話してくれた。
なんでも仕事で必要なことらしく、使い分けてるのだとか。
「オレはみんなみたいに体が大きくないからさ、力じゃ敵わないんだよ。だから別の道を見つけたってわけ。」
「なるほど・・・。」
「ま、陰謀とかあったら潜入して調べたりするのに結構便利なんだ。だから他言無用な。」
人差し指を自分の口にあて、シーっと言うアザレアさんは少年のような顔で笑っていた。
その表情は心からのもののようで、こっちも自然と笑みがこぼれてしまう。
「ふふっ。」
「・・・で?マオが『召喚されるべき者』だったんだろ?ライラックが調べ上げてた。」
「あー・・・そうみたいなんですけど・・・どうしたらいいんですかね。」
とりあえずお城に戻って議論されるみたいだけど、このままだったら私は聖女として仕事をすることになってしまう。
そして今まで聖女だと名乗っていた今川先生がどうなってしまうのかが気になるところだ。
「ま、キララは監禁処分だな。嘘だったわけだし。」
「監禁・・・」
「マオはしばらく城だろうな。とりあえずいろんなところに行って務めをするんじゃないか?」
「そう・・ですよね・・・」
ケルセンの町に戻れるようになるのはだいぶ先になりそうだと思ったとき、ふとアザレアさんの手首にある腕輪が目に入った。
「この腕輪・・カーマインさんたちもしてましたよね?騎士団の何かなんですか?」
3人とも同じものをしていた記憶がある。
それどころかマローさんや、さっきのもう一人の王子さま、それにその取り巻きの人たちも同じ腕輪をしていたのだ。
「あぁ、これか?これは誰とも婚姻してない証だな。」
「へぇー、婚姻してない証・・・・え!?」
「なんだ?知らなかったのか?」
「知らないも何も・・・私のいた世界にはそんな風習なかったんで・・・」
「あ、そうか。なら教えてやるよ。」
アザレアさんは腕輪のことを説明し始めた。
成人と呼べる年になったときにこの二個セットの腕輪をつけることが義務化されてるらしく、男の人たちは皆つけるのだとか。
そして一生一緒にいたいと思える相手と出会ったとき、二個のうちの一つを相手に贈り、夫婦となるらしい。
だから腕に一つの腕輪しかしてない男の人は、既婚者ということになるのだ。
「へぇー!」
「『へぇー!』って・・・マオの世界は違ったのか?」
「私の世界は指輪ですね。お揃いの指輪を左の薬指に通すことで夫婦の証明になるんですけど・・・基本的には国に書類を提出して夫婦であることを認めてもらうので、指輪はしない人もいますし。」
「指かー。指は俺たち力を使うからなかなか難しいな。」
「あー・・そういうこともあって腕輪なんですね。」
「そゆこと。ま、オレは二つつけてると男ってバレるから一つだけだけどなー。」
まだまだ知らないことがたくさんあるこの世界。
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