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お城再び。

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「はぁー・・・お城には行くって言いましたけどなんでこんなことに・・・」


カーマインさんたちに説得された翌日、私は早々にお城に向かうことになった。

トープさんが馬を手配してくれ、それに乗って行くのだけど・・・馬に乗ることができない私は3人の馬に交互に乗せてもらってる状態なのだ。

今はトープさんの馬に乗せていただいてる。


「まさかマオが馬に乗れないとは思わなくて・・・馬車よりこっちの方が早くて融通きくしね。」

「~~~~っ。」


トープさんの後ろで馬に跨り、私は彼の腰に腕を回していた。

時々スピードを上げて走る馬に落とされないようにするだけで必死だ。


「前の世界では馬に乗る人はごく一部の人だったんですよ。他に乗り物あったんで・・。」

「他の乗り物?馬車じゃなくて?」

「馬車・・・よりも速い乗り物ですかね。」


私は馬に揺られながら電車やバス、車のことを説明していった。

どう伝えたら私の知ってる物を伝えれるか考えながら一つずつゆっくり話していく。

するとトープさんは興味津々に聞いてくれ、いろんな話をするようになっていった。

建ててもらった家の話や、子供たちの話、ケルセンに来るまでの道中の話とか・・。

するとトープさんは申し訳なさそうな声で私に言ったのだ。


「マオは前の世界に戻りたいよね?勝手にこっちに呼んじゃって・・・ほんとごめん。」


3人から何度も言われてる言葉だ。

聞き飽きてるような気もするけど、本当に申し訳なく思ってくれてるのだろう。


「まぁ戻りたいですけど私がいなかったことになってるなら戻れないですしね。」

「・・前の世界に家族や恋人もいただろうに・・ほんとごめんね。」

「家族はいましたけど恋人はいなかったのでそこは大丈夫ですね、仕事で忙しかったですし。」


いつかいい人と出会えたらいいなと思っていた私だったけど、仕事量から考えたら無理なことだった。

子供たちと関われてるだけでいいと思っていたけど、違う世界にきてしまってそれも叶わない。

厚意で教師紛いのことはさせてもらってるけど、自分の時間がかなりできてしまった。

ゆっくりするのもいいと思う自分もいるのだ。


「来てしまったのものは仕方ないので、もう何度も謝っていただかなくて大丈夫ですよ?自由に過ごさせてもらってますし・・。」

「・・ありがとう。」


納得してくれたのかトープさんは私を見て優しく笑ってくれていた。

『巻き込まれた』という立場を憐れんでくれているのだろうけど、私は特に何も思ってなかったのだ。

最初こそはどうしようかと思ったけど、どうしようもないものは仕方ない。

変えることのできない過去を嘆くより、先を見るほうが自分の為になるのだ。


(これでもう謝って来なくなったらいいんだけど・・・。)


そんなことを考えてるうちに馬がスピードを上げ始めた。

どうやら道がいいところに出たようだ。


「マオ、しっかりつかまってな?一気に抜けるから。」

「!!・・・はい・・・!」


振り落とされないようにトープさんの体に腕を回し直そうとした時、私の体がふわっと浮いた。


「へっ・・?」


ふと視線を横にすると、トープさんの馬の真横にカーマインさんの馬がいたのだ。

そして手綱から手を離したカーマインさんの両手が私の脇を抱えていたのだ。


「へっ!?」

「落ちるからこっち来な。」

「!?!?」


ひょいっと抱えられた私の体は、カーマインさんの馬に乗せられた。

それもカーマインさんの前で、横座り状態だ。


「ふぁ!?」

「一気に抜けるぞー。」

「!?!?」


ぐんっ・・!と、加速したのを体で感じ、私は思わずカーマインさんの体に手を回した。

さっきまではトープさんの背中で見えなかった雄大な景色が私の視界に飛び込んでくる。


「わぁ・・・!」

「ここ、見晴らしいいだろ?」


そう言われた場所は広大な湖だった。

手付かずだからかきれいな色の湖は、鳥がたくさん遊びに来てる。

周りは草原地帯のように見通しがよく、思わず見惚れてしまうような光景だ。


「すごい・・・こんな景色見たことない・・・」


そう呟きながら私は見入っていた。

旅行という旅行は学校関連でしか行くことが無く、雄大な景色を見に行っても私は子供たちの監視で忙しかったのだ。


「マオは景色とか好きか?星とか・・山とか。」

「好きですよ?・・・こんな雄大な景色、前の世界ではなかなか見れるものじゃないんで・・・贅沢ですね。」


見入ってる私を気遣ってか、カーマインさんは馬のスピードを落としてくれた。

ゆっくりと流れていく景色を堪能すると、また速度を上げて走り出していく。


「悪いな、マオ。明日中に着きたいところがあるから急ぐぞ。夜通し走るから眠くなったら寝ていい。」

「夜通し!?」

「あぁ、馬で2週間の道を5日で行く。途中で休みはするけどできるだけ急ぐからな?」

「えぇぇぇ!?」


そのカーマインさんの言葉通り馬は5日間、ほぼ走りっぱなしだった。

途中にある町で若干の休憩は取れたものの、町にある馬と交換してもらったりして移動し続けたのだ。

馬上で睡眠なんて取れるはずないと思っていた私だったけど、しっかりと睡眠が取れないままの状態が続き、いつの間にかうとうとと眠るようになっていた。

トープさんやセラドンさんの馬に乗ってる時は彼らの後ろに乗ることが多くて寝てる暇なんてなかったけど、カーマインさんは私を前に乗せてくれて腕で囲ってくれるからうとうとすることができたのだ。

移動しながら食事もしていき5日目の夕方、私は見覚えのある町に足を踏み入れたのだった。


「つ・・ついた・・・・」


ずっと馬の上にいた私は体のあちこちが痛くなって、まともに立つことすらできない状態だった。

ふらつくどころか真っ直ぐに立てるかどうかも怪しく、下ろしてもらった馬を支えに両足を地面につくことだけで精いっぱいだ。


「マオ、歩けないだろ?部屋を用意させるから今日はそこで寝てくれ。」


カーマインさんに言われ、私は馬からパッと手を離した。

何ともない風に立って、笑顔を作る。


「はい。」

「大丈夫か?」

「なんとか・・・。」


私はふらつきながらも用意してもらった部屋に入り、とりあえず5日ぶりにベッドにダイブした。

久しぶりに横になって寝れることに感動しながら、明日からの予定を頭の中で確認する。


「えっと・・明日は王子さまと会って・・それでいろいろ聞いて・・・zzz。」


ぶつぶつ言いながらも限界だった眠気にやられ、私は眠りに落ちていったのだった。




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