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カーマインの力。
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ーーーーー
その翌日、私はトープくんたちに断りを入れて今日の勉強は休みにしてもらった。
もう一度あの木のところに行きたくて、作ったサンドイッチを持って朝から歩いて行く。
「たぶんこっちで合ってるはず・・・。」
枯れた木があったのは広大すぎる場所だった。
そのことから考えて、がむしゃらに真っ直ぐ歩いて突っ切ればあの場所に辿り着くと計算したのだ。
「お腹が空いたらサンドイッチを食べるか、昼ぐらいに食べるか悩むところだなぁ。」
昨日初めて見た木だったけど、あの木が『桜』かもしれないと思った私はもう一度ゆっくり見たいと思っていた。
花が咲くならお花見もいいと思うけど、あの木に懐かしい感じがしたのが気になって仕方ない。
「まぁ桜だったら懐かしく思うよねぇ、この世界に日本のものなんてないし。」
お皿やコップ、食べ物なんかは馴染みがあるものもあるけど、桜ほどの規模のものはない。
自分の名前に『桜』って漢字が使われてることもあって、じっくり見たかったのだ。
「あの木の下だったら昨日のこともゆっくり考えれそうだし。」
そう思いながら私は茂る森の中を進んでいった。
太い根が地面を盛り上げていて、山登りのようなテンションで歩きながら休憩を何度か挟んであの場所に向かったのだった。
ーーーーー
「つ・・ついた・・・。」
恐らく昼をとっくに回ったころに広大な草原にでた私。
まだ遠くに見えてる木は少し小さく見えてることから、まだもう少し歩かないと行けなさそうだ。
「食べながら歩こうかなぁ・・・って、それは行儀悪いか。」
目標物を視界に捉えれたことで気が楽になったわたしは、もう目的地で食べることにして歩いて行った。
森の中と違って周りを見回せる草原は目が楽しくて、鼻歌を歌いながら歩けてしまう。
「♪~・・・」
吹き抜ける風を感じながら歩いて行くと、幅の広いあの木の下に誰かがいるのが見えた。
立派すぎる木の幹にもたれかかって、腕を組んで座ってる。
「あれは・・・カーマインさん?」
見覚えのある短髪の髪型。
近づいていくと彼で間違いなかった。
「・・・寝てる。」
「・・・zzz。」
足を真っ直ぐに伸ばして幹にもたれかかり、すぅすぅと眠ってるカーマインさん。
まさか私以外にお客がいると思わず、どうしようか悩んでしまう。
「起こす・・のも悪いよね。仕事で疲れてるんだろうし・・。」
草原であるこの場所は風が気持ちよく吹いてる。
きっとそれが心地よくて眠ってしまってるのだろう。
起こすのが忍びなくて私は少し離れて腰を落とした。
広大な草原を眺めながらサンドイッチを取り出す。
「へへっ、いただきまーす。」
大きな口を開けてサンドイッチを食べようとした時、カーマインさんの体がもそっと動いた。
「あれ・・・?マオ・・?」
「あ・・起きました?おはようございます。」
ぱくっとサンドイッチにかぶりつくと、カーマインさんは崩れた姿勢を直すように体を動かしてる。
「え・・お前、ここまでどうやって来たんだ?」
「歩いてですよ?ちょっとゆっくり見てみたくなったんで来ました。」
そう言いながらサンドイッチを食べ進めてると、カーマインさんの視線がサンドイッチに移っていったのがわかった。
お昼を回ってまでここで眠っていたのなら・・・まだ昼ご飯は食べてないだろう。
「一つ食べます?」
そう聞くと彼は驚いた顔をしていた。
「え・・・!?」
「お昼まだでしたらどうぞ?まぁ、簡単なサンドイッチですけど。」
そう言って私はカバンからサンドイッチを一つ取り出した。
「・・・いいのか?」
「?・・・はい。ちょっと味は満足できてないんでその辺は勘弁してくださいね。」
カーマインさんに手渡したのは『たまごサンド』だ。
この世界、卵はあるけどマヨネーズはない。
卵と油、それに酢があればマヨネーズは作れるから作ったんだけど、大手メーカーの味に慣れてしまってるのかどうしても味に納得できない自分がいた。
(改良の余地あり。)
そんなことを考えてるうちにカーマインさんは私が作ったサンドイッチをばくっ・・!と、食べていた。
大きな口だからかパンの半分ほど無くなってる。
「!!・・・うまっ!?」
「疑問形?・・・ふふ。」
よくわからない感想に笑いながらサンドイッチを頬張る。
少し味が物足りないマヨネーズがなんとも言えない味だけど、外で食べるご飯は格別だ。
目から入ってくる景色や耳に聞こえる自然の音が調味料になってくれる。
「こんなの食べたことない・・・これ、マオが作ったのか?」
「え?・・・あ、そうですね。料理は好きなんで・・・。」
前の世界でも自炊はしていた。
時間さえあるのなら凝ったものも作りたかったけどなかなか時間が取れなかったのだ。
(料理検定とか取ったけど・・・結局使うことなかったし。)
何かの役に立つかと思って取った資格だったけど結局小学校の教員で就職が決まり、あまり『家庭科系』の資格は活用できなかった。
中学や高校の教員で採用が決まっていたらまた違ったのかもしれないと思うけど、違う世界に来てしまってる今、そんなこと考えたって何の意味もない。
「マオは・・・前の世界で何してたんだ?こことは違う世界だったんだろ?」
「まぁ・・そうですね。あ、でも大きくは違いませんよ?人がいて、家があって、お店があって・・・学校とか。」
「がっこう?」
「勉強しに行くところですね。みんな6歳になったら通う義務が発生するんです。15歳になるまでいろんなことを学んで・・・大きく成長していくんです。」
子供たちは義務教育期間の中でも小学校の間が一番大きく成長する。
知能や体はもちろんのこと、心も。
「マオはそこでも勉強を教えてたのか?子供たちに教える姿は随分慣れてるように見えたが・・・」
「あー・・ご名答です。コパーくんたちよりもっと小さい子から上は18歳まで教える資格を持ってました。」
「しかく?」
「お給金をもらって教えるには国の試験を受けて『教えれます』って証明がないといけないんですよ。・・・あ、カーマインさんの耳飾りみたいな感じですかね。」
力が使える者がつけてるという五角形の耳飾り。
ピアスのようだけど、これも資格証明書みたいなものだ。
「なるほど・・・。」
「文字の読み書きができないくらいの年の子にはお話を聞かせてあげたりとか、もう大人の仲間入りするくらいの年の子は、興味のあることを深く深く教えて・・・って、そんな感じでしたね。」
私は前の世界の生活をカーマインさんに話していった。
思えばこんな話をするのはここに来て初めてのことで、思い出しながらの話は私にとってとても楽しものだった。
楽しかった学生時代や苦労した初めての教育実習、家族でのバーベキューのことなんかがまだ鮮明に思い出せれる。
(これもいつか朧げな記憶になっていくんだろうなぁ・・・。)
そんなことを感じながら話していくけど、カーマインさんは私の話を真剣に聞いてくれていた。
相槌は欠かさないし、なんならずっとこっちを見ながら頷いてくれていたのだ。
聞き上手なのかと思いながら一通り話した私は、次はカーマインさんのことを聞こうと思って問うことにした。
「・・・カーマインさんは?」
「うん?」
「カーマインさんは騎士団として働くようになる前はどんな生活してたんですか?」
そう聞くとカーマインさんの顔から笑顔が消えていった。
聞いてはいけないことだったのかと思ってると、小さめな声でカーマインさんが話し始めたのだ。
「俺は・・俺に力があることがわかるまでは普通の生活してた。それこそコパーとかメイズとかみたいなな。」
「『力があることがわかるまで』?・・・10歳頃くらいまでってことですか?」
「あぁ。」
カーマインさんは作物を作る農家の家庭に生まれたらしく、毎日新鮮な野菜を口にしていたらしい。
朝は家の手伝いをして、昼からは同年代の子供たちと遊び、夕暮れ時に家に帰ってくる。
そんな生活をしていたらしいのだが、10歳の時に受けた『騎士判定』のテストで彼の周りは激変したそうだ。
「まぁ、『力』を持って生まれたことは喜ばしいとされてるんだけど、俺の力は独特というか・・ちょっと異質なものでさ。俺の周りに誰も近寄らなくなって・・・」
「え?誰も?ご両親もですか?」
「・・・そう、両親も。」
その激変した生活に耐えれなくなったカーマインさんは家を出ることを決め、ずっと城下町にある騎士団の寮のようなところで生活をすることに決めたのだとか。
そこで出会ったのがトープさんとセラドンさんらしく、二人はカーマインさんの力を理解し、受け入れてくれてるらしくて気を許せる唯一の存在らしい。
「あいつらがいるから・・他から無下に扱われても平気だし、仕事もできる。感謝しかない存在なんだよ。」
そう笑顔で話してくれるカーマインさんだけど、私はその『力』がどんなものなのか気になって仕方なかった。
(周りの人が離れていくような『力』って・・なんだろ。毒とか?)
そんなことを考えてると、私の考えが分かったのかカーマインさんは困ったように笑いながら教えてくれた。
「俺の『力』は『言霊』なんだ。対象物に触れて問うと、嘘偽りない答えを聞き出せるし、命令もできる。」
「・・・言霊!?」
「そう。まぁ、『力を使う』って思わない限り何も起こらないけどな。」
「へぇー・・・!」
聞き出したいことを聞けるなら情報系で役に立ちそうだ。
敵がいるなら尋問すればすぐに情報を聞き出せるし降伏させることもできる。
仲間内でも何かあれば全員から『本当のこと』を聞き出すことはできるだろう。
ただ、その『本当のこと』が主観的なものであればあるほどごちゃごちゃになるかもしれないけど・・・。
「あれ?じゃあもしかしてカーマインさんの近くにいた人が遠巻きになったのって・・・」
「俺に何か聞かれたり言われたりするのを恐れて・・・ってとこだな。」
「あー・・なるほど。」
秘密にしてることを無理矢理聞き出されたらいい気はしない。
言いたくないことやしたくないことを無理矢理させられるのも嫌なことだ。
(でもカーマインさんってそんな無理矢理みたいなことはしないと思うけど・・・。)
そんなことを考えながら私はまた一口サンドイッチを頬張る。
むしゃむしゃと食べ進めていくと、カーマインさんが不思議な顔をしながら私を見てることに気がついた。
「?・・・どうかしました?あ、おかわりですか?」
もう一つサンドイッチを取り出そうとカバンに手を入れると、カーマインさんは私を覗き込むようにして見てきた。
「お前・・逃げないのか?」
その翌日、私はトープくんたちに断りを入れて今日の勉強は休みにしてもらった。
もう一度あの木のところに行きたくて、作ったサンドイッチを持って朝から歩いて行く。
「たぶんこっちで合ってるはず・・・。」
枯れた木があったのは広大すぎる場所だった。
そのことから考えて、がむしゃらに真っ直ぐ歩いて突っ切ればあの場所に辿り着くと計算したのだ。
「お腹が空いたらサンドイッチを食べるか、昼ぐらいに食べるか悩むところだなぁ。」
昨日初めて見た木だったけど、あの木が『桜』かもしれないと思った私はもう一度ゆっくり見たいと思っていた。
花が咲くならお花見もいいと思うけど、あの木に懐かしい感じがしたのが気になって仕方ない。
「まぁ桜だったら懐かしく思うよねぇ、この世界に日本のものなんてないし。」
お皿やコップ、食べ物なんかは馴染みがあるものもあるけど、桜ほどの規模のものはない。
自分の名前に『桜』って漢字が使われてることもあって、じっくり見たかったのだ。
「あの木の下だったら昨日のこともゆっくり考えれそうだし。」
そう思いながら私は茂る森の中を進んでいった。
太い根が地面を盛り上げていて、山登りのようなテンションで歩きながら休憩を何度か挟んであの場所に向かったのだった。
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「つ・・ついた・・・。」
恐らく昼をとっくに回ったころに広大な草原にでた私。
まだ遠くに見えてる木は少し小さく見えてることから、まだもう少し歩かないと行けなさそうだ。
「食べながら歩こうかなぁ・・・って、それは行儀悪いか。」
目標物を視界に捉えれたことで気が楽になったわたしは、もう目的地で食べることにして歩いて行った。
森の中と違って周りを見回せる草原は目が楽しくて、鼻歌を歌いながら歩けてしまう。
「♪~・・・」
吹き抜ける風を感じながら歩いて行くと、幅の広いあの木の下に誰かがいるのが見えた。
立派すぎる木の幹にもたれかかって、腕を組んで座ってる。
「あれは・・・カーマインさん?」
見覚えのある短髪の髪型。
近づいていくと彼で間違いなかった。
「・・・寝てる。」
「・・・zzz。」
足を真っ直ぐに伸ばして幹にもたれかかり、すぅすぅと眠ってるカーマインさん。
まさか私以外にお客がいると思わず、どうしようか悩んでしまう。
「起こす・・のも悪いよね。仕事で疲れてるんだろうし・・。」
草原であるこの場所は風が気持ちよく吹いてる。
きっとそれが心地よくて眠ってしまってるのだろう。
起こすのが忍びなくて私は少し離れて腰を落とした。
広大な草原を眺めながらサンドイッチを取り出す。
「へへっ、いただきまーす。」
大きな口を開けてサンドイッチを食べようとした時、カーマインさんの体がもそっと動いた。
「あれ・・・?マオ・・?」
「あ・・起きました?おはようございます。」
ぱくっとサンドイッチにかぶりつくと、カーマインさんは崩れた姿勢を直すように体を動かしてる。
「え・・お前、ここまでどうやって来たんだ?」
「歩いてですよ?ちょっとゆっくり見てみたくなったんで来ました。」
そう言いながらサンドイッチを食べ進めてると、カーマインさんの視線がサンドイッチに移っていったのがわかった。
お昼を回ってまでここで眠っていたのなら・・・まだ昼ご飯は食べてないだろう。
「一つ食べます?」
そう聞くと彼は驚いた顔をしていた。
「え・・・!?」
「お昼まだでしたらどうぞ?まぁ、簡単なサンドイッチですけど。」
そう言って私はカバンからサンドイッチを一つ取り出した。
「・・・いいのか?」
「?・・・はい。ちょっと味は満足できてないんでその辺は勘弁してくださいね。」
カーマインさんに手渡したのは『たまごサンド』だ。
この世界、卵はあるけどマヨネーズはない。
卵と油、それに酢があればマヨネーズは作れるから作ったんだけど、大手メーカーの味に慣れてしまってるのかどうしても味に納得できない自分がいた。
(改良の余地あり。)
そんなことを考えてるうちにカーマインさんは私が作ったサンドイッチをばくっ・・!と、食べていた。
大きな口だからかパンの半分ほど無くなってる。
「!!・・・うまっ!?」
「疑問形?・・・ふふ。」
よくわからない感想に笑いながらサンドイッチを頬張る。
少し味が物足りないマヨネーズがなんとも言えない味だけど、外で食べるご飯は格別だ。
目から入ってくる景色や耳に聞こえる自然の音が調味料になってくれる。
「こんなの食べたことない・・・これ、マオが作ったのか?」
「え?・・・あ、そうですね。料理は好きなんで・・・。」
前の世界でも自炊はしていた。
時間さえあるのなら凝ったものも作りたかったけどなかなか時間が取れなかったのだ。
(料理検定とか取ったけど・・・結局使うことなかったし。)
何かの役に立つかと思って取った資格だったけど結局小学校の教員で就職が決まり、あまり『家庭科系』の資格は活用できなかった。
中学や高校の教員で採用が決まっていたらまた違ったのかもしれないと思うけど、違う世界に来てしまってる今、そんなこと考えたって何の意味もない。
「マオは・・・前の世界で何してたんだ?こことは違う世界だったんだろ?」
「まぁ・・そうですね。あ、でも大きくは違いませんよ?人がいて、家があって、お店があって・・・学校とか。」
「がっこう?」
「勉強しに行くところですね。みんな6歳になったら通う義務が発生するんです。15歳になるまでいろんなことを学んで・・・大きく成長していくんです。」
子供たちは義務教育期間の中でも小学校の間が一番大きく成長する。
知能や体はもちろんのこと、心も。
「マオはそこでも勉強を教えてたのか?子供たちに教える姿は随分慣れてるように見えたが・・・」
「あー・・ご名答です。コパーくんたちよりもっと小さい子から上は18歳まで教える資格を持ってました。」
「しかく?」
「お給金をもらって教えるには国の試験を受けて『教えれます』って証明がないといけないんですよ。・・・あ、カーマインさんの耳飾りみたいな感じですかね。」
力が使える者がつけてるという五角形の耳飾り。
ピアスのようだけど、これも資格証明書みたいなものだ。
「なるほど・・・。」
「文字の読み書きができないくらいの年の子にはお話を聞かせてあげたりとか、もう大人の仲間入りするくらいの年の子は、興味のあることを深く深く教えて・・・って、そんな感じでしたね。」
私は前の世界の生活をカーマインさんに話していった。
思えばこんな話をするのはここに来て初めてのことで、思い出しながらの話は私にとってとても楽しものだった。
楽しかった学生時代や苦労した初めての教育実習、家族でのバーベキューのことなんかがまだ鮮明に思い出せれる。
(これもいつか朧げな記憶になっていくんだろうなぁ・・・。)
そんなことを感じながら話していくけど、カーマインさんは私の話を真剣に聞いてくれていた。
相槌は欠かさないし、なんならずっとこっちを見ながら頷いてくれていたのだ。
聞き上手なのかと思いながら一通り話した私は、次はカーマインさんのことを聞こうと思って問うことにした。
「・・・カーマインさんは?」
「うん?」
「カーマインさんは騎士団として働くようになる前はどんな生活してたんですか?」
そう聞くとカーマインさんの顔から笑顔が消えていった。
聞いてはいけないことだったのかと思ってると、小さめな声でカーマインさんが話し始めたのだ。
「俺は・・俺に力があることがわかるまでは普通の生活してた。それこそコパーとかメイズとかみたいなな。」
「『力があることがわかるまで』?・・・10歳頃くらいまでってことですか?」
「あぁ。」
カーマインさんは作物を作る農家の家庭に生まれたらしく、毎日新鮮な野菜を口にしていたらしい。
朝は家の手伝いをして、昼からは同年代の子供たちと遊び、夕暮れ時に家に帰ってくる。
そんな生活をしていたらしいのだが、10歳の時に受けた『騎士判定』のテストで彼の周りは激変したそうだ。
「まぁ、『力』を持って生まれたことは喜ばしいとされてるんだけど、俺の力は独特というか・・ちょっと異質なものでさ。俺の周りに誰も近寄らなくなって・・・」
「え?誰も?ご両親もですか?」
「・・・そう、両親も。」
その激変した生活に耐えれなくなったカーマインさんは家を出ることを決め、ずっと城下町にある騎士団の寮のようなところで生活をすることに決めたのだとか。
そこで出会ったのがトープさんとセラドンさんらしく、二人はカーマインさんの力を理解し、受け入れてくれてるらしくて気を許せる唯一の存在らしい。
「あいつらがいるから・・他から無下に扱われても平気だし、仕事もできる。感謝しかない存在なんだよ。」
そう笑顔で話してくれるカーマインさんだけど、私はその『力』がどんなものなのか気になって仕方なかった。
(周りの人が離れていくような『力』って・・なんだろ。毒とか?)
そんなことを考えてると、私の考えが分かったのかカーマインさんは困ったように笑いながら教えてくれた。
「俺の『力』は『言霊』なんだ。対象物に触れて問うと、嘘偽りない答えを聞き出せるし、命令もできる。」
「・・・言霊!?」
「そう。まぁ、『力を使う』って思わない限り何も起こらないけどな。」
「へぇー・・・!」
聞き出したいことを聞けるなら情報系で役に立ちそうだ。
敵がいるなら尋問すればすぐに情報を聞き出せるし降伏させることもできる。
仲間内でも何かあれば全員から『本当のこと』を聞き出すことはできるだろう。
ただ、その『本当のこと』が主観的なものであればあるほどごちゃごちゃになるかもしれないけど・・・。
「あれ?じゃあもしかしてカーマインさんの近くにいた人が遠巻きになったのって・・・」
「俺に何か聞かれたり言われたりするのを恐れて・・・ってとこだな。」
「あー・・なるほど。」
秘密にしてることを無理矢理聞き出されたらいい気はしない。
言いたくないことやしたくないことを無理矢理させられるのも嫌なことだ。
(でもカーマインさんってそんな無理矢理みたいなことはしないと思うけど・・・。)
そんなことを考えながら私はまた一口サンドイッチを頬張る。
むしゃむしゃと食べ進めていくと、カーマインさんが不思議な顔をしながら私を見てることに気がついた。
「?・・・どうかしました?あ、おかわりですか?」
もう一つサンドイッチを取り出そうとカバンに手を入れると、カーマインさんは私を覗き込むようにして見てきた。
「お前・・逃げないのか?」
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