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変化。

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半日かからずアンヤーの町に着いたカーマインたちは、馬を休ませながら次の町に向かう計画を立てていた。

繋ぎ場に馬を繋ぎ、そのすぐ近くで地面に座り込んで地図を広げてる。


「ここを抜けると早いんじゃないか?」

「いや、ここは岩場だらけで馬が大変だろ。結局時間かかるんじゃないか?」

「なら大回りでもこの森行くほうがよさそうだな。」

「半日・・・じゃレリーには着かないな。1日かかるか。夜出発するか朝出発するか・・・」


水を飲んでる馬の様子を見ながらいつ出発するかを考えてる時、1台の乗り合い馬車が町に入って来たのが見えた。

その馬車からは若そうな女が数人と、小さい子供が何人か降りてきてる。


「思ってたより早く戻れてよかった!」

「急に作物が実りだしたって聞いたけど・・・・」

「私のところに着いた手紙には川の水が増えたから町全体に水が行きわたるようになったって・・・」


そんな話の内容から、彼女たちは出稼ぎに出ていたようだった。

思いがけず町の状態が良くなり、戻って来ることが許されたみたいだ。


「・・・なぁ、乗り合い馬車もここの町、通るよな?」


ふと気になってトープに聞くと、トープは首を縦に振っていた。


「あぁ、通るぞ?城下町からだったらここまで1日くらいかかるんじゃないか?」

「ふーん・・・」


俺は地面から立ち上がり、近くの宿に足を踏み入れた。


「らっしゃい!一人かい?」


出迎えてくれたのはやせ細った男店主だ。


「いや、ちょっと聞きたいことがあるんだが・・・。」

「なんだい?」

「最近、町で変わったこととか・・・ないか?」


さっきの女たちの話が気になった俺は、町に住んでる奴に聞いてみようと思ったのだ。


「あぁ!あるよ!」

「どんな?」


そう聞くと店主は少し視線を上げて考え始めた。


「・・1ヶ月くらい前からかな、川の水が増え始めたんだよ。」

「川の水・・?」

「あぁ。」


雨が降っていないのに突然増え始めたという川の水。

毎日少しずつ増えていって、今はきれいな水がずっと流れてるのだとか。


「おかげで畑に水を撒けるし、好きなだけ飲める。・・・あ!川の水が美味くなったって町のやつらも言ってるんだぜ?」

「え、川の水って美味くなるのか?」

「あんちゃんも飲んで見ろよ!すぐ裏に川があるからよ!」


そう言われ、俺はその宿を出て川に向かって歩いて行った。

川沿いに作られた畑の土は潤っていて、作物の緑が青々と輝いてるのが見える。


「城下町でも畑とかの土は潤ってないのに・・・・」


店を出してる人たちは少しでもよく見えるように活気よく振舞ってるけど、実際は仕入れ値は上がって売値はそのまま。

仕入れるのに野菜や肉たちが干ばつで手に入り辛く、値段は上がるばかりで苦しい思いをしてる店も少なくないのだ。


「この辺りから川に降りれそうだな。」


俺は川のすぐ近くまで行けそうな場所を見つけ、降りていった。

太陽の光に反射してきらきら光る水が優雅に流れて行ってるのが見える。


「・・ほんとに川の水が増えてる・・・・」


城下町の川はほとんど干上がっていて水なんて流れてない。

そのため侍女たちは遠くの水溜場まで桶を持って行き、汲んでくるのだ。

その水溜場も水位が下がっていて、町の土木関係の仕事をしてる者が新しい水溜場を作るために掘ってるくらいだった。


「でも、来る途中の川は流れがそんなになかった・・・。もしかしてこの町だけ水嵩が増えてるのか?」


よくわからない現象に首を捻りながら、俺は右手で水を軽くすくった。

その水を口に含んで飲み込むと、雑味のない爽やかな味が喉を伝って行ったのだ。


「!!・・・美味い。」


俺は腰に携えていた竹筒を取り出し、水を入れ替えた。

それを持ってトープたちの所に戻り、今見てきたことを話していく。

するとセラドンが興奮気味に立ち上がったのだ。


「ちょ・・!ちょっと行ってくる!!」


そう言って駆けていったのを俺とトープは頬を緩ませながら見ていた。


「まぁ、そりゃ嬉しいよな、あいつの『力』から考えたら。」

「そうだな。」


笑いながら次の町までのルートの確認をしてると、セラドンが戻って来た。

体中に緑色の葉っぱをつけて・・・。


「お・・・お待たせ・・・。」

「お前・・・どんだけはしゃいだんだよ。」

「ははっ・・・!久しぶりの『元気な植物』との対話は楽しかったかい?」


セラドンは『植物を操る力』を持ってる。

生きてる植物なら操ることもでき、相性がいい植物とは対話もできるらしい。


「すっごく元気な子たちばっかりでさ・・・あ、なんか急に元気になったらしくてすごく喜んでた。」

「急に?」

「うん。水がたくさんもらえたこともあるらしいんだけど、それ以上にみんなが元気になってるんだって。」


セラドンの話では、元気になったのは畑の植物だけじゃなく、町を囲う植物たちも元気になってるらしいのだ。

町の人がそんなところまで水を撒くなんてことも考えられず、不思議が募っていく。


「まぁ、地面の下を伝って潤ったのかもしれないよね、あの川の水の量なら考えられない話じゃないし。」

「そうか・・・。」


セラドンが体に着いた葉を落としたあと、俺たちは繋いでいた馬の綱を外した。

そして鐙(あぶみ)に足をかけ、鞍に跨る。


「明日中にレリーに着くように行くぞ。」

「あぁ。」

「了解。」




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