溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。

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異動。

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ーーーーー








ーーーー






ーーー








異動してきた消防署は・・・田舎にあるところだった。



見渡す限り田んぼや畑。



出動は滅多になく・・・時間を持て余すときは近くの畑を手伝う・・・なんてこともあるくらいのんびりしたところだった。








住人「新しいリーダーさんかい?こんな田舎にようこそ。」

雄大「これからお世話になります。」





署内のことを覚えた俺は、署員にくっついて朝から畑の手伝いをしていた。

慣れない草刈りに苦戦しながら住人たちと交流していく。




住人「いつこっちに?」

雄大「3日前です。署内のことを先に覚えなきゃ行けなくて・・今日初めて畑に来ました。」

住人「そうですかー。ここは住人の数も少ないんであまり出番はないかもですけど・・・よろしくお願いします。」

雄大「こちらこそ。」




署員たちと汗を流しながら畑を手伝い、昼過ぎに署に戻ってきた。

シャワールームで汗を流して書類仕事に取り掛かる。



署員「リーダーってイケメンですよねー!彼女とかいるんですか?」




平和なこの町は話題があまりないらしくて色恋話が一番よくされる。

まだこっちに来て3日のはずなのに、署員たち全員の恋愛事情を網羅してしまってる自分が悲しくなる。




雄大「・・・・いるよ、彼女。」

署員「やっぱりー。どんな彼女さんなんですか?」

雄大「ちっちゃくて・・・可愛い子。」




俺の記憶の中にある雪華。




ショートボブの髪の毛がくるくる巻いてて・・・ほそっこい身体をしてる。

料理が上手で・・・笑顔がかわいい。




署員「へぇー・・・今度紹介してくださいよっ。」

雄大「そのうち・・・な。」



書類仕事をしながら一人の署員と話をしてると、もう一人の署員も会話に加わってきた。



署員「・・・かわいい子って言ったら、そこの喫茶店の子も可愛くない?」

署員「あぁ、あの子?めっちゃ可愛いよなー・・・・でも、いくらデートに誘っても『うん』って言ってくれねーんだよなー・・・。」


雄大「喫茶店?あるの?こんな田舎に。」




俺の家は消防署の裏手にある。

宿舎みたいなもののところに住んでるから・・・あまりこの町のことは知らなかった。




署員「ありますよ!田舎をバカにしちゃいけませんよ!?」

雄大「いや、バカにする気はないけど・・・どこにあんの?」

署員「この署の管轄ギリのとこですよ。まぁ、昔からあったわけじゃなくて半年くらい前にできたんですけどね。」

雄大「へぇー・・・。」




こんな田舎に出店して儲けがあるのか・・・

そんなことを考えてると、署員の一人が俺に向かって言った。




署員「あっ!今、『こんな田舎に客が来るのか?』って思いましたね!?」

雄大「うっ・・・・。」




署員に心の内を読まれた俺は、内心驚いていた。



署員「まぁ・・・じーさん、ばーさんが毎日お茶しに行くんで潰れなさそうですよ。ランチも美味いし。」

雄大「へぇ、ランチ!」

署員「なんなら今、行ってみます?まだランチの時間内なハズ。」




署員の言葉に、俺は自分の腕時計を見た。

今の時間は13時過ぎだ。




雄大「行ってみようか。俺、出すよ。ここに来た記念に。」

署員「まじですか!?やったぁ!」




数人の署員を署に残して、俺たちは喫茶店に向かった。







ーーーーー






雄大「さっき残してきた署員たちは今度奢るとして・・・どこにあるんだ?喫茶店。」




車を出してくれた署員の助手席で、俺は辺りを見回した。

見渡す限り・・・田畑だ。



署員「この道をまーっすぐ10分くらいですかね。」

雄大「まぁ・・・この辺ってこの道しかないしな。」




車が走れる道は少ない。

民家と民家の間はすっごい距離がある。

絵本の中か・・・ひと昔前のような景色が目の前に広がっている。




署員「ランチ、まだ残ってるかなー。」




嬉しそうに言い署員。



雄大「そんなに美味いの?」

署員「そりゃもうっ!あの子と結婚出来たら毎日のご飯が超楽しみになる・・・。」




よだれを垂らしそうな勢いで想いを馳せてる署員。

あまりのいいように・・・自然とハードルが上がりそうだ。




雄大「へぇー・・・。」

署員「リーダーの彼女さんって料理はするんですか?」

雄大「するする。超美味いよ。」

署員「いいなー・・・。」




そんな話をしてると、喫茶店が見えてきた。

確かにうちの署の管轄ギリギリのとこにある喫茶店。

無駄に駐車場が広いところが田舎っぽい。





署員「つきましたよー。」



駐車場に車を止め、俺たちは入り口に向かった。




署員「あ、ランチ、あと三つって書いてある!」




入り口のところに手書きで書かれたご案内。

ランチの残が書かれていた。




雄大「ならちょうどよかったな。」



俺たちは喫茶店のドアを開けて中に入った。


カランカラン・・・





ミヤ「いらっしゃいませー!3人ですか?」

雄大「はい、ランチ三つ、まだいけますか?」

ミヤ「大丈夫でーす。空いてる席にどうぞー。」




俺たちは空いてる席を探した。

ちょうど四人掛けの席を見つけ、そこに腰かけようとしたとき・・・

署員二人が仲良く隣同士に座った。



雄大「?」

署員「俺たちこっちがいいですー。キッチンが見えるんで。」

雄大「ふーん?」



そう言って俺は向かいに座った。

キッチンは俺の背中側だ。



雄大「さっきの子?可愛いって言ってた子。」




喫茶店に入った時にいた女の子。

頭のてっぺんで髪の毛の大きなお団子を作っていた。




署員「違いますよ!」

署員「あの子も可愛いんですけど、中でご飯を作ってる子がめちゃくちゃ可愛いんですって!」

雄大「ふーん?」



署員たちの言葉が気になり、俺は振り返った。

キッチンを見るけども姿が見えなかった。




署員「あー・・・今日はランチが三つだから出てきてくれるかなー・・・。」

雄大「何?三つだと出て来るの?」

署員「一人で三つは持てないから出て来るんですよ。一人だけ待たせるのはかわいそうだからって。」

雄大「へぇー。」




署員がウキウキしながら待ってると、ほどなくしてさっきの子がランチを持って来た。



ミヤ「お待たせしましたー!今日はチキン南蛮でーす!」

署員「うまそっ・・・!」

ミヤ「すぐにもう一つ持ってきますねー。」




署員たちの前に置かれたランチセット。

俺はそのメニューに・・・目を奪われた。



雄大「これ・・・・・」

署員「すごいでしょ!?けっこうなボリューム!」

雄大「いや・・・そうじゃなくて・・・・・」

署員「?」




このランチの中身は・・・




チキン南蛮

豆腐サラダ

つやっつやのごはん

味噌汁



俺が雪華の家で初めて食べた晩御飯のメニューだ。

盛り付けや配置も・・・似てる。



雄大「なぁ、キッチンにいる子の名前って・・・知ってるか?」

署員「?・・・知ってますよ?」

雄大「教えてくれるか?」

署員「え?・・・名前は・・・・あっ。」




署員たちの顔つきが変わった。

きっとキッチンにいてる子が出てきたんだろう。

そして署員たちの口から出た名前は・・・・







署員「せっちゃん!!」








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