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【番外編】リナリアの湖。
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翌日、朝早くから出発した俺とアイビー。
体力のないアイビーに合わせてゆっくり山を登っていっていた。
「きっつ・・・!」
「お前、ニゲラと一緒に暮らし始めて体力落ちたんじゃないか?」
「そんなことないもんっ・・!」
「変な体力はついてるかもしれないけどな。」
「---っ!」
アイビーが歩きやすいように地面を踏み均し、体にあたりそうな枝を折りながら進んでいく。
ぬかるんでそうな場所は避け、遠回りでも急じゃないところを選んで登っていった。
途中、休憩できるところで軽く食事をし、水を飲んで一歩ずつリナリアの湖に向かって進んでいく。
「こんなところまでリナリアさんと来てたの・・・?」
「あぁ、リナリアとだったらここまで・・・一時間もかからないぞ?」
「えっ・・・。」
「お前とだったら軽く4時間はかかってるがな。」
「~~~~っ!」
リナリアは山によく来ていた。
だから木の枝から枝に飛び移って移動することもよくあった。
アイビーのように地面を歩くなんてこと、あまりなかったのだ。
(こうやって遠回りすることも無かったしな。)
視線を上げればリナリアが飛び回りそうな枝がたくさん目に入った。
もう20年も前のことになるのに、まだ鮮明にリナリアの姿が思い出される。
「とぅさーん、あの山?ちょっと崩れてるように見える山があるー。」
アイビーに言われ、俺はそっちに視線を向けた。
「・・・あぁ、そうだ。あの山だ。」
欠けたてっぺんは20年経っても変わらず、すぐにその場所がわかった。
このままのペースだとあと6時間はかかりそうだ。
「アイビー、ちょっと掴まれ。」
「へっ・・!?」
「山で一晩過ごしたくないだろ?抱えていくぞ。」
「うわぁっ・・・!?」
ひょいとアイビーを抱え、俺は山の中を走りだした。
慣れた山はどこに何があるのか目をつむっていてもわかるくらいだ。
「早い早いっ・・・!早いって・・・!!」
「喚くな。携帯食持ってないんだし、お前、野宿嫌だろ?」
「それは嫌だけど・・・・ひあぁぁぁっ!?」
「しっかり摑まってろー。」
片手でアイビーの体を支え、俺は枝に手をかけた。
飛ぶように駆けて山を登り、ものの1時間ほどでリナリアの湖に辿り着いた。
「はぁっ・・はぁっ・・・死ぬかと思った・・・」
「俺がお前を落とすわけないだろ?」
「わかっていても怖いのっ・・・!」
ぶぅぶぅと文句を言うアイビーだったが、湖が視界に入った瞬間、感嘆のため息が漏れていた。
「うわぁ・・・・きれい・・・!」
「あぁ、あの頃のままだ。」
空の色を映してる湖は青々としていた。
どこまでも透き通って見える湖の中も変わりがない。
「微生物がいないのかな?」
アイビーがその湖を覗きながらぼそっと呟いた。
「びせ・・・?」
「微生物。目に見えないくらいの小さな生き物なんだけど、それがいないと湖の中に沈んでる木とかが分解されないって聞いたことがあるの。」
「へぇー・・・。」
「透明ですごくきれいねー・・・。」
じっと見つめるステラを他所に、俺は近くにあった大きめの石に腰を下ろした。
リナリアとここに来た時の思い出に少しの間ふける。
(青い湖にリナリアの茶色い髪の毛がすっげぇきれいだったんだよな・・・。)
背中の真ん中くらいまであったリナリアの茶色い髪の毛。
アイビーのように紐で結んだりしないから、いつも風にたなびかせていた。
その揺れる髪の毛を手で押さえて笑うリナリアがいつもきれいで・・・よく見惚れていたのだ。
(俺に娘ができたって言ったら・・・あいつ、驚くだろうな。)
あの世で会ったら話すことはたくさんある。
その話の一つとして、ここに耳飾りを沈めたことを話そうと、俺は鞄から包みを取り出した。
そして赤い耳飾りを二つ手に乗せて、湖の傍まで足を進める。
その時、アイビーが俺を見て突っ立ってることに気がついた。
「どうした?アイビー。」
「とぅさん・・・リナリアさんって・・・どんな特徴してた?」
「え?リナリア?」
唐突な問いを疑問に思ってるうちにアイビーはリナリアの特徴を話し始めた。
「そう。茶色い髪の毛って言ってたよね・・・?」
「あぁ。茶色い髪の毛に茶色い瞳。髪の毛は背中の真ん中くらいまであったかな。背が高くて俺くらいある。」
スラっとした体形で足が長く、一歩が俺とほとんど同じだった。
柔らかい体だったから、木の枝から枝に飛び移るのが上手かったのが記憶にあった。
「もしかしてその人・・・笑うと子供みたいな表情になったりする・・・?」
その言葉に俺は驚いた。
リナリアが心の底から笑ったときだけ、ふにゃっと幼い子供みたいな表情になることはアイビーには言ってないからだ。
「どうしてそれ・・・」
そう言いかけたとき、ふとアイビーの視線がおかしいことに気がついた。
俺を見てると思っていたのだが、視線が微妙にずれてるのだ。
「まさか・・・・」
俺はゆっくり振り返った。
するとそこに・・・・茶色の髪の毛の女が立っていたのだ。
茶色の瞳に、スラっと長い足。
白い服を身に纏って、手には赤い花。
風にたなびく髪を手で押さえ、俺を見て・・・ふにゃっと笑っていた。
「リ・・ナリ・・・ア・・・?」
「・・・シャガ。20年ぶりね。ちょっと老けたんじゃない?」
「---っ!!リナリア!!」
俺は走った。
死んだと思っていたリナリアが目の前に立ってる。
その姿を体で感じたくて、走っていってリナリアを抱きしめた。
「いっ・・生きてたのか・・・!?」
「ふふっ、もちろんよ。あの程度の地滑りで私がくたばるとでも?」
「でもっ・・・!あの乗り合い馬車は全部巻き込まれたって・・・助かった最後尾の馬車も、助け出されたのは全員男だったって・・・」
確かにニゲラはそう言っていた。
リナリアはきれいなんだから男に間違われることなんてないはずだ。
「あの時、私は髪を切っていたの。」
「は・・?髪を切ってた・・?」
「そう。馬車に乗るために。」
あの日、リナリアが乗ろうとした馬車は、男が優先だったらしく、乗り損ねると歩いて山越えになるのを懸念し、リナリアは髪の毛を切ったらしい。
持っていた帽子を目深にかぶり、『男』として乗り合い馬車に乗り込んだ。
「慌てて切ったから最後の馬車に乗ったのよ。だから助かったんだけどね。」
「え・・じゃ・・じゃあ俺の耳飾りが外に出てたのは・・・・」
「そう!!それよ!!どうして柄が入ったものを作ってくれなかったの!?確認した時に驚いたじゃない!」
「え?」
リナリアは街を出発してすぐ、手持ちの鏡で耳飾りを見たらしい。
学者をしてるリナリアはいろんな場所にいくことから、映りのいい鏡を持っていた。
それで確認して柄が入ってないことに気がついたのだとか。
「ちゃんと見るために外したときに地滑りに巻き込まれたのよ。その時に外に出ちゃったのね。」
「そ・・それはわかった。・・・じゃあ助かったのならどうしてすぐに戻ってこなかった?ニゲラもお前のこと心配してたんだぞ?」
「それは・・・ケガが酷くて戻れなかったのよ。意識を失ってた私は近くの村に運ばれたの。」
あの日、助け出されたリナリアは一旦近くの村に運ばれたあと、治療ができないということで大きい街に運ばれた。
そこでも治療の方法がみつからず、苦戦してる時に他の国から来たという男が自分の国にリナリアを連れて行ったらしいのだ。
「そこは山が何個向こうとかいう距離じゃなかった。ここまで戻ろうと思ったけどお金はたくさんいるし、時間も必要だったの。」
意識がなかったリナリアが目を覚ましたのは地滑りに巻き込まれた1年後のことだったらしい。
それから体を回復させるまでに時間がかかり、治療費を払うために働き、生まれた街に戻ってくるのにお金を貯めて・・・ようやく戻ってこれたのだとか。
「まさかシャガがここにいるなんて思いもしなかったけど・・・・ところでそちらのお嬢さんは?」
リナリアはアイビーに視線を送った。
「アイビーだ。俺の・・・娘だ。」
そう言うとリナリアは驚いた顔をしていた。
「シャガ、あなた子供ができたの!?」
「あ、いや・・・そうじゃないんだが・・・」
「え?」
どう説明しようかと思ったとき、アイビーが口を開いた。
「とぅさん、私が話してもいい?」
「・・・お前がいいのなら。」
そう言うとアイビーはひょこひょこ動きながら俺の隣まで来た。
そして子供のような笑顔でリナリアを見てる。
「初めまして。シャガの娘のアイビーです。」
「リナリアよ、初めまして。」
「リナリアさんのことはとぅさんから聞いてるんですけど・・・私、とぅさんの本当の子供じゃないんです。」
「・・・え!?」
アイビーはこことは違う世界から来たことをリナリアに話していった。
赤ん坊だったアイビーを俺が拾って、ここまで育ててきことも・・・。
「異世界・・・?」
「はい。信じてはもらえないかもしれませんが・・・とりあえずとぅさんの子供ではないことだけ信じてもらえたら嬉しいです。とぅさん・・・シャガは誰にも求婚してないですから。」
その言葉にリナリアは驚きながら俺を見た。
ここまでアイビーに言われて何もできないような男ではない。
俺は手に持っていた赤い耳飾りをリナリアに差し出した。
「これ・・・持っててくれたの・・・?」
「今、お前に相手がいるかどうか知らないが・・・よかったらもらってくれ。あの時俺が求婚してれば事故に巻き込まれなかったのかもしれない。・・・ごめんな。」
そう言うとリナリアは柄の入った耳飾りを取り、自分の耳につけた。
「私、誰の求婚も受けてないわ。一人の人からの求婚をずっと待ってたんだから・・・。」
「それって・・・」
「ふふ、あなたよ、シャガ。想いが届かないならせめてあなたの耳飾りをつけていたくてあんなお願いをしたの。」
「!!」
「私たち、二人で空回りしてたみたいね。もっと素直に言うべきだったわ。」
リナリアが笑いながらそう言ったとき、リナリアの足元がふらついた。
「あっ・・・・」
「おっと・・・!大丈夫か?」
「平気よ。ここまで歩いてきたから足が疲れてるだけ。向こうは山なんかなかったから体力も落ちてるわ。」
その時、少し離れたところからニゲラの声が聞こえてきた。
「リナリア!?」
翌日、朝早くから出発した俺とアイビー。
体力のないアイビーに合わせてゆっくり山を登っていっていた。
「きっつ・・・!」
「お前、ニゲラと一緒に暮らし始めて体力落ちたんじゃないか?」
「そんなことないもんっ・・!」
「変な体力はついてるかもしれないけどな。」
「---っ!」
アイビーが歩きやすいように地面を踏み均し、体にあたりそうな枝を折りながら進んでいく。
ぬかるんでそうな場所は避け、遠回りでも急じゃないところを選んで登っていった。
途中、休憩できるところで軽く食事をし、水を飲んで一歩ずつリナリアの湖に向かって進んでいく。
「こんなところまでリナリアさんと来てたの・・・?」
「あぁ、リナリアとだったらここまで・・・一時間もかからないぞ?」
「えっ・・・。」
「お前とだったら軽く4時間はかかってるがな。」
「~~~~っ!」
リナリアは山によく来ていた。
だから木の枝から枝に飛び移って移動することもよくあった。
アイビーのように地面を歩くなんてこと、あまりなかったのだ。
(こうやって遠回りすることも無かったしな。)
視線を上げればリナリアが飛び回りそうな枝がたくさん目に入った。
もう20年も前のことになるのに、まだ鮮明にリナリアの姿が思い出される。
「とぅさーん、あの山?ちょっと崩れてるように見える山があるー。」
アイビーに言われ、俺はそっちに視線を向けた。
「・・・あぁ、そうだ。あの山だ。」
欠けたてっぺんは20年経っても変わらず、すぐにその場所がわかった。
このままのペースだとあと6時間はかかりそうだ。
「アイビー、ちょっと掴まれ。」
「へっ・・!?」
「山で一晩過ごしたくないだろ?抱えていくぞ。」
「うわぁっ・・・!?」
ひょいとアイビーを抱え、俺は山の中を走りだした。
慣れた山はどこに何があるのか目をつむっていてもわかるくらいだ。
「早い早いっ・・・!早いって・・・!!」
「喚くな。携帯食持ってないんだし、お前、野宿嫌だろ?」
「それは嫌だけど・・・・ひあぁぁぁっ!?」
「しっかり摑まってろー。」
片手でアイビーの体を支え、俺は枝に手をかけた。
飛ぶように駆けて山を登り、ものの1時間ほどでリナリアの湖に辿り着いた。
「はぁっ・・はぁっ・・・死ぬかと思った・・・」
「俺がお前を落とすわけないだろ?」
「わかっていても怖いのっ・・・!」
ぶぅぶぅと文句を言うアイビーだったが、湖が視界に入った瞬間、感嘆のため息が漏れていた。
「うわぁ・・・・きれい・・・!」
「あぁ、あの頃のままだ。」
空の色を映してる湖は青々としていた。
どこまでも透き通って見える湖の中も変わりがない。
「微生物がいないのかな?」
アイビーがその湖を覗きながらぼそっと呟いた。
「びせ・・・?」
「微生物。目に見えないくらいの小さな生き物なんだけど、それがいないと湖の中に沈んでる木とかが分解されないって聞いたことがあるの。」
「へぇー・・・。」
「透明ですごくきれいねー・・・。」
じっと見つめるステラを他所に、俺は近くにあった大きめの石に腰を下ろした。
リナリアとここに来た時の思い出に少しの間ふける。
(青い湖にリナリアの茶色い髪の毛がすっげぇきれいだったんだよな・・・。)
背中の真ん中くらいまであったリナリアの茶色い髪の毛。
アイビーのように紐で結んだりしないから、いつも風にたなびかせていた。
その揺れる髪の毛を手で押さえて笑うリナリアがいつもきれいで・・・よく見惚れていたのだ。
(俺に娘ができたって言ったら・・・あいつ、驚くだろうな。)
あの世で会ったら話すことはたくさんある。
その話の一つとして、ここに耳飾りを沈めたことを話そうと、俺は鞄から包みを取り出した。
そして赤い耳飾りを二つ手に乗せて、湖の傍まで足を進める。
その時、アイビーが俺を見て突っ立ってることに気がついた。
「どうした?アイビー。」
「とぅさん・・・リナリアさんって・・・どんな特徴してた?」
「え?リナリア?」
唐突な問いを疑問に思ってるうちにアイビーはリナリアの特徴を話し始めた。
「そう。茶色い髪の毛って言ってたよね・・・?」
「あぁ。茶色い髪の毛に茶色い瞳。髪の毛は背中の真ん中くらいまであったかな。背が高くて俺くらいある。」
スラっとした体形で足が長く、一歩が俺とほとんど同じだった。
柔らかい体だったから、木の枝から枝に飛び移るのが上手かったのが記憶にあった。
「もしかしてその人・・・笑うと子供みたいな表情になったりする・・・?」
その言葉に俺は驚いた。
リナリアが心の底から笑ったときだけ、ふにゃっと幼い子供みたいな表情になることはアイビーには言ってないからだ。
「どうしてそれ・・・」
そう言いかけたとき、ふとアイビーの視線がおかしいことに気がついた。
俺を見てると思っていたのだが、視線が微妙にずれてるのだ。
「まさか・・・・」
俺はゆっくり振り返った。
するとそこに・・・・茶色の髪の毛の女が立っていたのだ。
茶色の瞳に、スラっと長い足。
白い服を身に纏って、手には赤い花。
風にたなびく髪を手で押さえ、俺を見て・・・ふにゃっと笑っていた。
「リ・・ナリ・・・ア・・・?」
「・・・シャガ。20年ぶりね。ちょっと老けたんじゃない?」
「---っ!!リナリア!!」
俺は走った。
死んだと思っていたリナリアが目の前に立ってる。
その姿を体で感じたくて、走っていってリナリアを抱きしめた。
「いっ・・生きてたのか・・・!?」
「ふふっ、もちろんよ。あの程度の地滑りで私がくたばるとでも?」
「でもっ・・・!あの乗り合い馬車は全部巻き込まれたって・・・助かった最後尾の馬車も、助け出されたのは全員男だったって・・・」
確かにニゲラはそう言っていた。
リナリアはきれいなんだから男に間違われることなんてないはずだ。
「あの時、私は髪を切っていたの。」
「は・・?髪を切ってた・・?」
「そう。馬車に乗るために。」
あの日、リナリアが乗ろうとした馬車は、男が優先だったらしく、乗り損ねると歩いて山越えになるのを懸念し、リナリアは髪の毛を切ったらしい。
持っていた帽子を目深にかぶり、『男』として乗り合い馬車に乗り込んだ。
「慌てて切ったから最後の馬車に乗ったのよ。だから助かったんだけどね。」
「え・・じゃ・・じゃあ俺の耳飾りが外に出てたのは・・・・」
「そう!!それよ!!どうして柄が入ったものを作ってくれなかったの!?確認した時に驚いたじゃない!」
「え?」
リナリアは街を出発してすぐ、手持ちの鏡で耳飾りを見たらしい。
学者をしてるリナリアはいろんな場所にいくことから、映りのいい鏡を持っていた。
それで確認して柄が入ってないことに気がついたのだとか。
「ちゃんと見るために外したときに地滑りに巻き込まれたのよ。その時に外に出ちゃったのね。」
「そ・・それはわかった。・・・じゃあ助かったのならどうしてすぐに戻ってこなかった?ニゲラもお前のこと心配してたんだぞ?」
「それは・・・ケガが酷くて戻れなかったのよ。意識を失ってた私は近くの村に運ばれたの。」
あの日、助け出されたリナリアは一旦近くの村に運ばれたあと、治療ができないということで大きい街に運ばれた。
そこでも治療の方法がみつからず、苦戦してる時に他の国から来たという男が自分の国にリナリアを連れて行ったらしいのだ。
「そこは山が何個向こうとかいう距離じゃなかった。ここまで戻ろうと思ったけどお金はたくさんいるし、時間も必要だったの。」
意識がなかったリナリアが目を覚ましたのは地滑りに巻き込まれた1年後のことだったらしい。
それから体を回復させるまでに時間がかかり、治療費を払うために働き、生まれた街に戻ってくるのにお金を貯めて・・・ようやく戻ってこれたのだとか。
「まさかシャガがここにいるなんて思いもしなかったけど・・・・ところでそちらのお嬢さんは?」
リナリアはアイビーに視線を送った。
「アイビーだ。俺の・・・娘だ。」
そう言うとリナリアは驚いた顔をしていた。
「シャガ、あなた子供ができたの!?」
「あ、いや・・・そうじゃないんだが・・・」
「え?」
どう説明しようかと思ったとき、アイビーが口を開いた。
「とぅさん、私が話してもいい?」
「・・・お前がいいのなら。」
そう言うとアイビーはひょこひょこ動きながら俺の隣まで来た。
そして子供のような笑顔でリナリアを見てる。
「初めまして。シャガの娘のアイビーです。」
「リナリアよ、初めまして。」
「リナリアさんのことはとぅさんから聞いてるんですけど・・・私、とぅさんの本当の子供じゃないんです。」
「・・・え!?」
アイビーはこことは違う世界から来たことをリナリアに話していった。
赤ん坊だったアイビーを俺が拾って、ここまで育ててきことも・・・。
「異世界・・・?」
「はい。信じてはもらえないかもしれませんが・・・とりあえずとぅさんの子供ではないことだけ信じてもらえたら嬉しいです。とぅさん・・・シャガは誰にも求婚してないですから。」
その言葉にリナリアは驚きながら俺を見た。
ここまでアイビーに言われて何もできないような男ではない。
俺は手に持っていた赤い耳飾りをリナリアに差し出した。
「これ・・・持っててくれたの・・・?」
「今、お前に相手がいるかどうか知らないが・・・よかったらもらってくれ。あの時俺が求婚してれば事故に巻き込まれなかったのかもしれない。・・・ごめんな。」
そう言うとリナリアは柄の入った耳飾りを取り、自分の耳につけた。
「私、誰の求婚も受けてないわ。一人の人からの求婚をずっと待ってたんだから・・・。」
「それって・・・」
「ふふ、あなたよ、シャガ。想いが届かないならせめてあなたの耳飾りをつけていたくてあんなお願いをしたの。」
「!!」
「私たち、二人で空回りしてたみたいね。もっと素直に言うべきだったわ。」
リナリアが笑いながらそう言ったとき、リナリアの足元がふらついた。
「あっ・・・・」
「おっと・・・!大丈夫か?」
「平気よ。ここまで歩いてきたから足が疲れてるだけ。向こうは山なんかなかったから体力も落ちてるわ。」
その時、少し離れたところからニゲラの声が聞こえてきた。
「リナリア!?」
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