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ーーーーー
その夜・・・。
(お昼はすごく賑わっていたけど・・・夜はしんみりしてる。)
部屋の窓から城下町の方を見ていた私は、陽が暮れてからの街の音に耳を澄ませていた。
がやがやとしていた町は静まり返り、切なげな明かりが見えるだけだった。
(みんな・・・星を眺めてるのかな。)
空を見ると星がいくつも見えるけど、どれがハマルおばぁちゃんの星なのかがわからなかった。
でもどれかがおばぁちゃんだと信じて、おばぁちゃんとの思い出を思い返す。
(ふふ・・・ケガして怒られたり、迷子になって怒られたり・・・いろいろあったなぁ・・・。)
小さい頃は怒られたことばかり記憶にあったけど、歳を重ねるごとにおばぁちゃんは私に生き方を教えてくれた。
飲める水や飲めない水、食べれるキノコに食べれないキノコ。
甘い蜜をたくさん蓄えてる花や、調理が簡単な獣なんかも教えてくれたのだ。
(私が森で暮らしていけるように・・・教えてくれたんだよね。)
きっと街で暮らすより森で暮らす方が大変だ。
だから大変なほうを教えてくれたんだと、思いながら空を見上げた。
その時、部屋の扉がノックされる音が聞こえてきたのだ。
コンコンっ・・・
「はい。」
ガチャっと扉が開いて入ってきたのはタウさんだ。
約束通り・・・来てくれたのだ。
「ステラ、服持ってきたからこれ着て?」
「服・・・?」
そう言ってタウさんは手に持っていた服を広げ、私にかぶせてきた。
白い生地でできていたその服はかぶるタイプのポンチョコートみたいだ。
「?」
「あー・・すっげぇかわいい。ステラの瞳の色と髪の毛の色から考えたら絶対白が似合うと思ったんだ。」
首元や裾にファーがあしらわれていて、真ん中に大きなボタンが3つある。
そのボタンは深い青色をしていて・・・タウさんの瞳と同じ色だった。
「この服・・・どうしたんですか?」
裾の長さや肩の位置がどうみても私サイズに作られたポンチョコート。
驚きながら聞くととんでもない答えが返ってきた。
「あぁ、仕立ててた。」
「へっ・・・!?」
「お前、持ってなかっただろ?夜は急激に気温が下がるんだよ。初めてこの国に来た時、凍えてたじゃないか。」
「あ・・・そういえば・・・」
逃げる瞬間を待つために路地裏に身を潜めていたとき、どんどん下がっていく気温にやられて熱を出したことを思い出した。
そのとき、タウさんが助けてくれたことも・・・。
「だから作ってたんだよ。夜に出掛けるときは必ず持って行けよ?」
そう言われ、私はこのコート代を支払おうと近くにあった棚に手を伸ばした。
「あ・・あのっ・・!おいくらですか?お支払いできると思うので・・・」
食堂のお手伝いをしていた時のお給金はほぼ全て残してあった。
衣食住を保証されたお城に住んでるから使うこともなかったのだ。
「いい、いらないから。」
「でも・・・・!」
途方もない金額だったらまた働いて支払おうと思ってると、タウさんは少し照れるように後ろ手に頭をかきながら話し始めた。
「いや、最初は城の管理費から出すって話だったんだけど・・・それ、キャンセルしたんだよ。」
「・・・キャンセル?」
「あぁ。どうしても俺が買いたくて・・・作り直してもらった。」
「!?」
なんでもタウさんは私への想いに気がついたあと、自分色にしたくて作り直してもらいに行ったらしい。
私が想いに応えなくても、自分の瞳と同じ色の服を着てるだけで満足することにしたのだそうだ。
「最初は騎士団と同じ黒だったんだけどさ、ステラは絶対白が似合うと思って・・・。だから留め具を俺の瞳の色にしてもらったんだ。」
「それでこの深い青色なんですね・・・。」
きれいな深い青は、白地によく映えていた。
もともとお願いしていたコートをキャンセルしてまで作ってくれたコートはきっとお値段も張りそうだ。
「やっぱりお支払いしたいんですけど・・・ダメですか?」
タダでもらえるようなものじゃなく、私はお財布代わりにしてる布袋を手に取った。
「その金はステラが欲しいものに使いな?」
「いや、でも・・・・」
「ステラが気に入ってくれただけでいい。・・・どうだ?」
そう言われ、私は改めてポンチョコートを見た。
体を捻るとふわっと揺れるデザインが好みで、思わず笑みがこぼれてしまう。
「・・・へへっ。」
「!!・・・そのかわいい笑顔、ハマル様に見せに行こうか。」
タウさんはそう言うと私の手にあった布袋を取って棚に戻した。
そして私の体をひょいと抱きかかえ、ふわっと浮かび上がったのだ。
「え・・・!?飛んでいくんですか!?」
「もちろん。階段とかない場所だからな。」
開けていた窓から外に出たタウさんはふわふわと上がっていき、お城のてっぺん近くまで飛んであがった。
そして塔のように突き出た場所に近づいていったのだ。
「ほら、あそこ。」
「?」
タウさんに言われた方を見ると、お城の屋根の一部が少しおかしな形になってるところが目に入った。
ベランダのようにくぼんでいて、そこに小さなランプとベッドソファのようなものがあったのだ。
「空、見放題だろ?」
「!!」
素敵な空間に下ろされ、私はソファベッドにゆっくり乗った。
そして寝転び、空を見上げる。
「わぁ・・・!きれい・・・・」
真上に広がる満天の星は、数えきれないくらいの星があった。
大きな星に小さな星、遠くにあるように見える星やすぐ近くにあるように見える星と様々だ。
「ほらステラ、ヤドリギの葉。」
タウさんも隣に寝転び、ポケットからヤドリギの葉を取り出した。
二枚あるうちの一枚を手渡してくれ、指でつまんでみる。
「この葉を空に向けて、思い出したい人を念じるんだ。」
「念じる?」
「あぁ。念じたときに一際輝いて見える星がある。それが思い出したい人の星だ。」
そう言われ、私はヤドリギの葉を空にかざした。
「・・・もし光らなかったら・・・?」
「光らなかったらどこかで生まれ変わってる。」
「なるほど・・・。」
私は目を閉じてハマルおばぁちゃんのことを思い出した。
大好きなハマルおばぁちゃんに伝えたいことがたくさんあることで頭をいっぱいにしていく。
「・・・。」
閉じていた目をそっと開けると、ヤドリギの葉のすぐ近くある星がキラッと光ったのが見えた。
「ハマル・・おばぁちゃん・・・?」
そう聞くと星はキラキラっと光ってくれてる。
「!!・・・おばぁちゃん!ハマルおばぁちゃんがいた!!」
「よかったな。ほら、伝えたいこと伝えろよ?」
「はいっ・・・!」
私はキラキラと光る星に向かって今までのことを心の中で話した。
森を出たことや、ピストニアの国で仕事をしてること。
ディアヘルの人たちに攫われかけて、タウさんに助けてもらったことも話し、人生で初めて好きな人ができたことも話した。
(おばぁちゃん私ね、前の世界で殺されてこっちにきて・・一人がいいって思ってた。森に帰りたいとも思うけど、タウさんと一緒にいたいとも思う。・・・欲張りかなぁ?)
そう聞きながら私はチラッとタウさんを見た。
すると彼はすごく優しい笑顔で・・・私を見ていたのだ。
「---っ!」
「?・・・もう終わったのか?」
「やっ・・終わったというか・・・・あ!タウさんは!?タウさんは誰か思い出さないんですか!?」
ドキドキしてることがバレないように慌てて聞くと、タウさんはヤドリギの葉を空に向けた。
「俺はもう終わってる。」
「もう!?」
「あぁ。一人だけだからな。言いたいこともシンプルだし。」
そう言うとタウさんはポケットにヤドリギの葉を入れた。
「ステラも終わったのか?」
「あー・・・そうですね。一通りは・・・言えました。」
「そうか。」
タウさんは私が持っていたヤドリギの葉を取り、同じポケットに入れた。
そして私をじっと見つめたあと、私の体をぎゅっと抱きしめたのだ。
「ふぁっ・・・!?」
「ステラ、好きだよ。俺の一生をステラに捧げる。」
「!?・・・それはちょっと・・・・」
「嫌か?俺はずっとステラと一緒にいたい。ステラも同じだったら嬉しいんだけど・・。」
その言葉に私はヌンキさんの会話を思い出した。
この国の人たちはみんな、素直に気持ちを表現する人が多いことを。
「・・・わ・・私も好きだけど・・・・」
「『けど』?」
「あの・・ちょっと聞いてもらえますか・・・?」
「うん?」
私は前の世界で恋愛経験がないことをタウさんに伝えた。
結婚してことをは伝えていたけど、『好き』だとか『かわいい』とかは聞きなれてない言葉なのを伝えると、タウさんは嬉しそうに笑ったのだ。
「じゃあ俺が初めての男だな?」
「そうなる・・のかな・・?」
「俺がステラに教えてやる。溢れる愛がどれだけ安心できて幸せなことかを。」
そう言うとタウさんは私の唇に自分の唇を重ねてきた。
「んっ・・・」
優しいキスに私のことを『愛してる』という気持ちが込められていて、力が抜けていく。
「ふぁ・・・ん・・・」
「好きだステラ、好き・・・俺だけを見て、俺だけを愛して・・・。」
いつの間にか舌をねじ込まれ、くちゅくちゅと上あごをなぞられていく。
「やぁっ・・・あっ・・・」
「かわいい・・・。ほら、息して?上手に息してごらん?」
「む・・りっ・・!んぁっ・・・!」
片手で私を抱きしめながら首筋をなぞり、もう片方の手で私の頬を触ってる。
ぎゅっと抱きしめられて身動きが取れず、私はされるがままの状態で必死に応えていた。
「んぅっ・・・!」
「ずっとこうしてたいけど・・風邪引かすわけにいかないしな。」
そう言ってタウさんは深いキスから浅いキスに切り替えていった。
ちゅっちゅと何度もついばまれながら終わりを迎えていくキスは、愛された感と少し物足りない感の両方が私に残っていく。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「寒くないか?ステラ。」
「だ・・だいじょうぶ・・・」
タウさんのキスで熱くなった私の体は、寒いどころか汗をかきそうなくらいだった。
荒れる息が整うまでタウさんは抱きしめてくれていて、逞しい体に安心感を覚える。
「あ、明日調査で森に行ってくる。」
「調査で・・・森?」
「まだディアヘルの奴らは来ないと思うけど、来た時にどう応戦するかの検討だな。」
「・・・。」
タウさんの話を聞いて、昨日のことが鮮明に蘇ってきた。
魔力を溜めて使う道具はかなりの凶器だ。
その道具がどれだけあるかわからないけど、またタウさんがケガとかしたら・・・私は生きた心地がしなさそうだった。
「タウさん・・・ケガとかしません・・・?」
怖くなった私はタウさんの胸に自分の顔を摺り寄せた。
生きてる証の心臓の音を聞きたくて無意識だったのだ。
「!!・・・しないしない。そんなかわいいこと言うともう一回口づけするぞ?」
「!!」
くぃっと顎をすくわれ、近づいてくるタウさんの顔。
私はタウさんの両頬に手を添え、自分から唇を合わせにいった。
「!?」
「んぅ・・・んっ・・・」
舌でタウさんの唇を少し舐めるようにして唇を合わせる。
するとタウさんは私の上に覆いかぶさってきた。
「ふぁっ!?んんっ・・・!?」
「お望み通り、気絶するまで口づけしてやるよ。」
「!?ちがっ・・!んぅぅっ・・・!」
寝てる状態で覆いかぶさられ、私は必死に息をしながらタウさんの服を握った。
でもそれが逆効果のようで、タウさんのキスは深さと激しさを増していき、とうとう私は気を失ってしまったのだ。
「・・・zzz。」
「あまりかわいいことしないでくれ・・・抑えるのも大変なんだから・・・」
俺は自分のマントをステラにかけ、寒くないようにして部屋まで飛んだ。
ステラのベッドに寝かせ、ポケットからヤドリギの葉を取り出す。
そして窓に行き、外にヤドリギの葉を向けた。
(・・・ハマル様、俺・・・ステラと契りたいと思ってます。一生大事にするので・・・上から見ててください。)
そう言うと星が一つキラッと光った。
ハマル様からの返事と受け取り、葉をポケットに入れる。
そしてステラの頬に口づけを一つ落として、部屋を後にしたのだった。
その夜・・・。
(お昼はすごく賑わっていたけど・・・夜はしんみりしてる。)
部屋の窓から城下町の方を見ていた私は、陽が暮れてからの街の音に耳を澄ませていた。
がやがやとしていた町は静まり返り、切なげな明かりが見えるだけだった。
(みんな・・・星を眺めてるのかな。)
空を見ると星がいくつも見えるけど、どれがハマルおばぁちゃんの星なのかがわからなかった。
でもどれかがおばぁちゃんだと信じて、おばぁちゃんとの思い出を思い返す。
(ふふ・・・ケガして怒られたり、迷子になって怒られたり・・・いろいろあったなぁ・・・。)
小さい頃は怒られたことばかり記憶にあったけど、歳を重ねるごとにおばぁちゃんは私に生き方を教えてくれた。
飲める水や飲めない水、食べれるキノコに食べれないキノコ。
甘い蜜をたくさん蓄えてる花や、調理が簡単な獣なんかも教えてくれたのだ。
(私が森で暮らしていけるように・・・教えてくれたんだよね。)
きっと街で暮らすより森で暮らす方が大変だ。
だから大変なほうを教えてくれたんだと、思いながら空を見上げた。
その時、部屋の扉がノックされる音が聞こえてきたのだ。
コンコンっ・・・
「はい。」
ガチャっと扉が開いて入ってきたのはタウさんだ。
約束通り・・・来てくれたのだ。
「ステラ、服持ってきたからこれ着て?」
「服・・・?」
そう言ってタウさんは手に持っていた服を広げ、私にかぶせてきた。
白い生地でできていたその服はかぶるタイプのポンチョコートみたいだ。
「?」
「あー・・すっげぇかわいい。ステラの瞳の色と髪の毛の色から考えたら絶対白が似合うと思ったんだ。」
首元や裾にファーがあしらわれていて、真ん中に大きなボタンが3つある。
そのボタンは深い青色をしていて・・・タウさんの瞳と同じ色だった。
「この服・・・どうしたんですか?」
裾の長さや肩の位置がどうみても私サイズに作られたポンチョコート。
驚きながら聞くととんでもない答えが返ってきた。
「あぁ、仕立ててた。」
「へっ・・・!?」
「お前、持ってなかっただろ?夜は急激に気温が下がるんだよ。初めてこの国に来た時、凍えてたじゃないか。」
「あ・・・そういえば・・・」
逃げる瞬間を待つために路地裏に身を潜めていたとき、どんどん下がっていく気温にやられて熱を出したことを思い出した。
そのとき、タウさんが助けてくれたことも・・・。
「だから作ってたんだよ。夜に出掛けるときは必ず持って行けよ?」
そう言われ、私はこのコート代を支払おうと近くにあった棚に手を伸ばした。
「あ・・あのっ・・!おいくらですか?お支払いできると思うので・・・」
食堂のお手伝いをしていた時のお給金はほぼ全て残してあった。
衣食住を保証されたお城に住んでるから使うこともなかったのだ。
「いい、いらないから。」
「でも・・・・!」
途方もない金額だったらまた働いて支払おうと思ってると、タウさんは少し照れるように後ろ手に頭をかきながら話し始めた。
「いや、最初は城の管理費から出すって話だったんだけど・・・それ、キャンセルしたんだよ。」
「・・・キャンセル?」
「あぁ。どうしても俺が買いたくて・・・作り直してもらった。」
「!?」
なんでもタウさんは私への想いに気がついたあと、自分色にしたくて作り直してもらいに行ったらしい。
私が想いに応えなくても、自分の瞳と同じ色の服を着てるだけで満足することにしたのだそうだ。
「最初は騎士団と同じ黒だったんだけどさ、ステラは絶対白が似合うと思って・・・。だから留め具を俺の瞳の色にしてもらったんだ。」
「それでこの深い青色なんですね・・・。」
きれいな深い青は、白地によく映えていた。
もともとお願いしていたコートをキャンセルしてまで作ってくれたコートはきっとお値段も張りそうだ。
「やっぱりお支払いしたいんですけど・・・ダメですか?」
タダでもらえるようなものじゃなく、私はお財布代わりにしてる布袋を手に取った。
「その金はステラが欲しいものに使いな?」
「いや、でも・・・・」
「ステラが気に入ってくれただけでいい。・・・どうだ?」
そう言われ、私は改めてポンチョコートを見た。
体を捻るとふわっと揺れるデザインが好みで、思わず笑みがこぼれてしまう。
「・・・へへっ。」
「!!・・・そのかわいい笑顔、ハマル様に見せに行こうか。」
タウさんはそう言うと私の手にあった布袋を取って棚に戻した。
そして私の体をひょいと抱きかかえ、ふわっと浮かび上がったのだ。
「え・・・!?飛んでいくんですか!?」
「もちろん。階段とかない場所だからな。」
開けていた窓から外に出たタウさんはふわふわと上がっていき、お城のてっぺん近くまで飛んであがった。
そして塔のように突き出た場所に近づいていったのだ。
「ほら、あそこ。」
「?」
タウさんに言われた方を見ると、お城の屋根の一部が少しおかしな形になってるところが目に入った。
ベランダのようにくぼんでいて、そこに小さなランプとベッドソファのようなものがあったのだ。
「空、見放題だろ?」
「!!」
素敵な空間に下ろされ、私はソファベッドにゆっくり乗った。
そして寝転び、空を見上げる。
「わぁ・・・!きれい・・・・」
真上に広がる満天の星は、数えきれないくらいの星があった。
大きな星に小さな星、遠くにあるように見える星やすぐ近くにあるように見える星と様々だ。
「ほらステラ、ヤドリギの葉。」
タウさんも隣に寝転び、ポケットからヤドリギの葉を取り出した。
二枚あるうちの一枚を手渡してくれ、指でつまんでみる。
「この葉を空に向けて、思い出したい人を念じるんだ。」
「念じる?」
「あぁ。念じたときに一際輝いて見える星がある。それが思い出したい人の星だ。」
そう言われ、私はヤドリギの葉を空にかざした。
「・・・もし光らなかったら・・・?」
「光らなかったらどこかで生まれ変わってる。」
「なるほど・・・。」
私は目を閉じてハマルおばぁちゃんのことを思い出した。
大好きなハマルおばぁちゃんに伝えたいことがたくさんあることで頭をいっぱいにしていく。
「・・・。」
閉じていた目をそっと開けると、ヤドリギの葉のすぐ近くある星がキラッと光ったのが見えた。
「ハマル・・おばぁちゃん・・・?」
そう聞くと星はキラキラっと光ってくれてる。
「!!・・・おばぁちゃん!ハマルおばぁちゃんがいた!!」
「よかったな。ほら、伝えたいこと伝えろよ?」
「はいっ・・・!」
私はキラキラと光る星に向かって今までのことを心の中で話した。
森を出たことや、ピストニアの国で仕事をしてること。
ディアヘルの人たちに攫われかけて、タウさんに助けてもらったことも話し、人生で初めて好きな人ができたことも話した。
(おばぁちゃん私ね、前の世界で殺されてこっちにきて・・一人がいいって思ってた。森に帰りたいとも思うけど、タウさんと一緒にいたいとも思う。・・・欲張りかなぁ?)
そう聞きながら私はチラッとタウさんを見た。
すると彼はすごく優しい笑顔で・・・私を見ていたのだ。
「---っ!」
「?・・・もう終わったのか?」
「やっ・・終わったというか・・・・あ!タウさんは!?タウさんは誰か思い出さないんですか!?」
ドキドキしてることがバレないように慌てて聞くと、タウさんはヤドリギの葉を空に向けた。
「俺はもう終わってる。」
「もう!?」
「あぁ。一人だけだからな。言いたいこともシンプルだし。」
そう言うとタウさんはポケットにヤドリギの葉を入れた。
「ステラも終わったのか?」
「あー・・・そうですね。一通りは・・・言えました。」
「そうか。」
タウさんは私が持っていたヤドリギの葉を取り、同じポケットに入れた。
そして私をじっと見つめたあと、私の体をぎゅっと抱きしめたのだ。
「ふぁっ・・・!?」
「ステラ、好きだよ。俺の一生をステラに捧げる。」
「!?・・・それはちょっと・・・・」
「嫌か?俺はずっとステラと一緒にいたい。ステラも同じだったら嬉しいんだけど・・。」
その言葉に私はヌンキさんの会話を思い出した。
この国の人たちはみんな、素直に気持ちを表現する人が多いことを。
「・・・わ・・私も好きだけど・・・・」
「『けど』?」
「あの・・ちょっと聞いてもらえますか・・・?」
「うん?」
私は前の世界で恋愛経験がないことをタウさんに伝えた。
結婚してことをは伝えていたけど、『好き』だとか『かわいい』とかは聞きなれてない言葉なのを伝えると、タウさんは嬉しそうに笑ったのだ。
「じゃあ俺が初めての男だな?」
「そうなる・・のかな・・?」
「俺がステラに教えてやる。溢れる愛がどれだけ安心できて幸せなことかを。」
そう言うとタウさんは私の唇に自分の唇を重ねてきた。
「んっ・・・」
優しいキスに私のことを『愛してる』という気持ちが込められていて、力が抜けていく。
「ふぁ・・・ん・・・」
「好きだステラ、好き・・・俺だけを見て、俺だけを愛して・・・。」
いつの間にか舌をねじ込まれ、くちゅくちゅと上あごをなぞられていく。
「やぁっ・・・あっ・・・」
「かわいい・・・。ほら、息して?上手に息してごらん?」
「む・・りっ・・!んぁっ・・・!」
片手で私を抱きしめながら首筋をなぞり、もう片方の手で私の頬を触ってる。
ぎゅっと抱きしめられて身動きが取れず、私はされるがままの状態で必死に応えていた。
「んぅっ・・・!」
「ずっとこうしてたいけど・・風邪引かすわけにいかないしな。」
そう言ってタウさんは深いキスから浅いキスに切り替えていった。
ちゅっちゅと何度もついばまれながら終わりを迎えていくキスは、愛された感と少し物足りない感の両方が私に残っていく。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「寒くないか?ステラ。」
「だ・・だいじょうぶ・・・」
タウさんのキスで熱くなった私の体は、寒いどころか汗をかきそうなくらいだった。
荒れる息が整うまでタウさんは抱きしめてくれていて、逞しい体に安心感を覚える。
「あ、明日調査で森に行ってくる。」
「調査で・・・森?」
「まだディアヘルの奴らは来ないと思うけど、来た時にどう応戦するかの検討だな。」
「・・・。」
タウさんの話を聞いて、昨日のことが鮮明に蘇ってきた。
魔力を溜めて使う道具はかなりの凶器だ。
その道具がどれだけあるかわからないけど、またタウさんがケガとかしたら・・・私は生きた心地がしなさそうだった。
「タウさん・・・ケガとかしません・・・?」
怖くなった私はタウさんの胸に自分の顔を摺り寄せた。
生きてる証の心臓の音を聞きたくて無意識だったのだ。
「!!・・・しないしない。そんなかわいいこと言うともう一回口づけするぞ?」
「!!」
くぃっと顎をすくわれ、近づいてくるタウさんの顔。
私はタウさんの両頬に手を添え、自分から唇を合わせにいった。
「!?」
「んぅ・・・んっ・・・」
舌でタウさんの唇を少し舐めるようにして唇を合わせる。
するとタウさんは私の上に覆いかぶさってきた。
「ふぁっ!?んんっ・・・!?」
「お望み通り、気絶するまで口づけしてやるよ。」
「!?ちがっ・・!んぅぅっ・・・!」
寝てる状態で覆いかぶさられ、私は必死に息をしながらタウさんの服を握った。
でもそれが逆効果のようで、タウさんのキスは深さと激しさを増していき、とうとう私は気を失ってしまったのだ。
「・・・zzz。」
「あまりかわいいことしないでくれ・・・抑えるのも大変なんだから・・・」
俺は自分のマントをステラにかけ、寒くないようにして部屋まで飛んだ。
ステラのベッドに寝かせ、ポケットからヤドリギの葉を取り出す。
そして窓に行き、外にヤドリギの葉を向けた。
(・・・ハマル様、俺・・・ステラと契りたいと思ってます。一生大事にするので・・・上から見ててください。)
そう言うと星が一つキラッと光った。
ハマル様からの返事と受け取り、葉をポケットに入れる。
そしてステラの頬に口づけを一つ落として、部屋を後にしたのだった。
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*2022.1.28ー2022.7.12【完結】ありがとうございました!!
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