上 下
8 / 49

しおりを挟む
ーーーーー



「おばぁちゃん・・・!」


家に着いた私は駆け入るように玄関の扉を開けて家に入った。

ベッドにいるハマルおばぁちゃんの側にいき、さっきの話をしようと側で屈む。


「あのね、おばぁちゃん・・・」


『私を探してる人がいた』と言おうとした時、おばぁちゃんの呼吸がおかしいことに気がついた。


「はぁ・・はぁ・・・・」

「おばぁちゃん・・!?どうしたの!?」


眉間にしわを寄せ、苦しそうに息をするハマルおばぁちゃん。

どうしたいいのかわからず、私はおばぁちゃんの手を握った。


「大丈夫・・大丈夫だから・・・」


何もできなく、何も知らない自分が情けなくて私はぽろぽろと涙を流した。


「おばぁちゃん・・!この世界はお医者さんはいるの・・!?」

「え・・・?」

「病院は・・!?薬は・・!?森から出て治療を受けようよ・・!」

「ステラ・・?何言ってるんだい・・?」

「おばぁちゃんが元気になるなら私、治療費くらい稼ぐから・・!入院費だって、手術するなら手術費用も稼ぐからっ・・!」


そう言いながらわぁわぁ泣くと、ハマルおばぁちゃんは私の頭をよしよしと撫で始めた。


「・・・それが『お前さんのいた世界』の『ヒール』なのかい?」

「!!・・・おばぁちゃん、知ってたの・・?」


前の世界のことはおばぁちゃんに話したことはなかった。

赤ちゃんの姿で生まれ変わったのだから、この世界に染まるつもりで話さなかったのだ。


「3000年前に現れた『金色の瞳を持つ者』は、違う世界から来たと言っていたんだよ。」

「そう・・なの・・?」

「どの世界から来たのかはわからないし、知ることもできないが・・・こっちの世界はかなり『昔』だと言っていた。だから、ステラももっと時代が進んだ世界から来たんじゃないかい?」

「・・・うん。」


私は前の世界のことをハマルおばぁちゃんに話し始めた。


「この世界は国が二つって言ってたけど、私がいた世界は200近い国があったの。小さい国から大きな国まで・・・。」

「そんなにあったのかい?」

「うん。」


国の数を始めとして広大な海があることやいろんな食べ物があること、おしゃれな服屋さんや、雑貨屋さん、それに電気で動く便利な道具があることを話した。

中にはインターネットを通じて、姿が見えない人と連絡を取ることもできることも。


「ステラはその世界に・・・帰りたいんじゃないかい?」

「え?」

「便利な世界のほうが・・・いいんじゃないかい?」


そう聞かれ、私は前の世界ではもう自分自身が死んでしまってることを話した。

『夫』と呼べる人生の伴侶に殺されたことを・・・。


「そんな酷いことをされたのかい・・・それは辛かったね・・・。」

「ううん、大丈夫。きっとハマルおばぁちゃんに出会うために・・・ここに来たと思うから・・。」


施設育ちだった私は『家族』というものを知らない。

誠也さんと結婚して『家族』になれた気がしていたけど、縛られた生活の中で家政婦をしていただけだったのだ。


「ははっ、私もこんなかわいい子と一緒に過ごせれて幸せだったよ・・・。」

「『だった』って・・・そんな過去形なこと言わないでよ・・・」


そう言うとハマルおばぁちゃんは大きく咳込んだ。


「ごほっ・・!ごほっごほっ!!」

「!!・・・お水汲んでくるから待ってて!」


そう言って私はテーブルにあったコップを手に取ろうと手を伸ばした。

その時・・・


「ステラ・・そこの入れ物を・・・」


ハマルおばぁちゃんは震える手でベッドの足元にある棚を指さした。

そこには小さい小瓶がある。


「ガラスの入れ物?珍しい・・。」

「取っておくれ・・・。」

「あ、うん・・・。」


言われた通り、私は入れ物を取った。

小さい小瓶は私の手のひらにすっぽり収まるほどの大きさだ。


「これなぁに?」


透明の液体がほんの少し入ってる小瓶をおばぁちゃんに手渡すと、おばぁちゃんはその小瓶を私に握り返させてきた。


「これはお前の瞳の色を変えるものだ。なかなか材料が手に入らなくて・・・少ししか作れなかったけど誰かに、見つかりそうになったら使いなさい。」

「え?瞳の色を・・変える・・?」

「あぁ・・目に少し入れてごらん・・?」


私は小瓶を少し見つめてから蓋を開けた。

目薬をさすように一滴・・・右目に落とした。


「・・・どう?変わった?」


変わったのかどうかわからずにハマルおばぁちゃんに近づいて見せてみた。

違いがわかるように両目を見せると、おばぁちゃんは右目と左目を見比べ、にこっと笑ってくれた。


「うんうん、きれいな青色になってるよ。」

「ほんと?」

「あぁ、左目も入れてごらん?」

「うん。」


言われた通り左目に入れ、ぱちぱちと瞬きを繰り返してからおばぁちゃんに見せる。

すると満足げに頷いてくれたのだ。


「うんうん・・・ごほっ・・!ごほっごほっ・・!!」

「!!・・・お水・・・!」


私はテーブルに置いてあった木のコップとピッチャーを取り、外に出た。

家から少し離れたところにあるとても小さな川に屈み、ピッチャーを入れて水をすくう。


「街に行ったら・・・おばぁちゃんは治るのかな・・。」


弱っていくおばぁちゃんを見るのは辛いことこの上ない。

また元気になってくれるなら、森から出るのも全然アリな話だと思っていた。


「もう一度聞いてみよう。」


そう思って私は汲んだ水を持って立ち上がった。

家に戻ろうと思って踵を返したとき、少し離れたとこから4人の男の人が現れた。


「こんにちは、ちょっとお話いいかな?」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜

あーもんど
恋愛
「愛だの恋だのくだらない」 そう吐き捨てる婚約者に、命を奪われた公爵令嬢ベアトリス。 何もかもに絶望し、死を受け入れるものの……目を覚ますと、過去に戻っていて!? しかも、謎の青年が現れ、逆行の理由は公爵にあると宣う。 よくよく話を聞いてみると、ベアトリスの父────『光の公爵様』は娘の死を受けて、狂ってしまったらしい。 その結果、世界は滅亡の危機へと追いやられ……青年は仲間と共に、慌てて逆行してきたとのこと。 ────ベアトリスを死なせないために。 「いいか?よく聞け!光の公爵様を闇堕ちさせない、たった一つの方法……それは────愛娘であるお前が生きて、幸せになることだ!」 ずっと父親に恨まれていると思っていたベアトリスは、青年の言葉をなかなか信じられなかった。 でも、長年自分を虐げてきた家庭教師が父の手によって居なくなり……少しずつ日常は変化していく。 「私……お父様にちゃんと愛されていたんだ」 不器用で……でも、とてつもなく大きな愛情を向けられていると気づき、ベアトリスはようやく生きる決意を固めた。 ────今度こそ、本当の幸せを手に入れてみせる。 もう偽りの愛情には、縋らない。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ *溺愛パパをメインとして書くのは初めてなので、暖かく見守っていただけますと幸いですm(_ _)m*

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...